バカ大学生創一シリーズ②~異世界転生してみたい~
特に支持されてないけど、自分的には嫌いじゃない、バカ大学生創一第2弾です。
ようやく書く気になったので書きました。
ゆるっと更新を決め込んだまま、2弾を書く気にならないでエタるかとちょっと思ってたんで、書けて良かったです。
ある週末の夜のことだ。
ここは 創一が親の脛をかじって使わせてもらっているアパートの一室。彼は中学からの親友である財前真実と二人で呑んでいた。
『まこと』という名前だけ聞くと女の子とも思える響きだが、当然真実は男である。
なにが当然かというと、創一が『体は大人、頭脳は子供!』という、ちょっと単語を入れ換えただけで残念にもなるキャッチフレーズがピッタリの男子であることに他ならない。ちなみにここでの『子供』部分は小3、4位のアホ男子を想像していただきたい。間違っても『子供≒ピュア』の様な、素敵なイメージに変換しないでほしい。
『当然ながら』そんな創一に彼女なんかいるわけなかった。
「マコ、知ってるか?今異世界転生って超流行ってるんだぜ?!」
何本か目の缶チューハイを煽りながら、どや顔で創一は言う。
彼は多少酔っているが、アルコールに弱いわけではない。雰囲気に弱いのだ。コーラを出して、『コークハイだよ』と言えば確実に酔う。だが問題はない。なぜなら彼は素面であっても常に酔っぱらいみたいなモンなのだから。
「…………へえ」
創一は知らないが、ネットでよく投稿小説を読んでいる真実は思った。
(今更かよ。むしろピークはとっくに過ぎている)
……しかし真実は突っ込まない。
今更なことを、痛々しい程眩しいどや顔で自分に教えてくる友人が面白かったからだ。
大体いつもこんな感じで、真実は面白半分に何も知らないフリをし暫く創一を泳がす。『真実』という名前の癖に積極的に真実は告げないのだ。
「転生チート……たまらんな!なんなら俺も異世界に転生したい!」
異世界に転生したら、早いうちに取り戻した前世の記憶とスキルからチート人生まっしぐら。俺強無双。そしてどっきどき♥異世界美少女……彼女らにもてはやされるハーレム人生。
王道のテンプレすぎて逆に、書き手の技量やキャラ設定で評価に開きが出そうな内容を熱く語る創一。真実はタバコをふかしながら黙ってそれを聞いていたが、フィルター近くまできっちり吸い終えると火を消し、煙をふっと吹いてからようやく口を開いた。
「……ちょっと待て創一。それで何故チートなんだ?」
「へ?」
真実の発言に、創一は意味がわからないという顔をし、しばし考えてから真実に提案した。
ちょっと異世界転生したと仮想してみよう、と。
「…………はい、じゃ真実!俺は死んで生まれ変わった!なんかこう、金持ちの息子だ!」
「ざっくりした設定だな……まあいいわ、んで?」
「4才のとき、なんかこう、急に思い出す……『あ、俺日本の大学生だった。そうか!俺はあのとき死んで生まれ変わったのか!』4才の俺はいわばコ●ン!神童だ!」
「なんかこう、が多いな。で?」
「16位の時には何でも出来るようになっている!何故なら4つの時から21の神童だからな!12年もありゃ……「創一、それは無理だ」」
真実はこのタイミングで創一に『真実』を突きつけた。
『そんなんでチートにはならない』と。
真実は提案する。「もう一度正しく仮想してみよう」
「4才の時に転生者だと気付いたお前は思う筈だ『ラッキー、これで人生楽勝だぜ!』と。確かに神童と崇め奉られるかのように育てられる……しかしそんな日々は長く続かなかった。なぜならお前の前世は『バカ大学生』だからな。しかも文学部。異世界転生したところで糞の役にも立たん」
「いやいやマコさん、幼少の時からっつーのがミソなんじゃないっすか……神童になった俺は脇目もふらず勉強を「すると思うか?」いや、しません」
尚も真実の『創一が異世界転生したら』は続く。
「そう、しない。そしてぐっずぐずに甘やかされたお前は最早今以下の屑。幼少の頃は友人と外で遊ぶも、育つと共に付き合いは疎遠になる。そして当然ながら異世界にはゲームなどなく、趣味が食事と睡眠だけになったお前は両親がまだお前を天才だと信じている間に、惰眠と暴飲暴食を貪り尽くした結果……メタボで死ぬ」
「俺メタボで死ぬの?!異世界転生して?!!」
死因、メタボ。
それは創一に衝撃を与えた。
少し考えてから創一は
「……金持ちの息子として転生したのが悪い!」
とのたまい、全ての責任を転生先の家庭環境に押し付けてやり直しを求めた。
「冒険者!冒険者になる!片田舎の冒険者に憧れる少年(6才)で記憶を取り戻した結果努力チートになる!!」
「努力チート……」
真実は残念そうに首をふり、何も言わずに可哀想な子を見る目で、優しく創一を見つめる。
「なにその慈愛に満ちた目!?」
「冒険者の場合、低級モンスターで死ぬ。おそらく横からたまたま飛び出してきたスライムにうっかりぶつかって死ぬ」
「なんなの?その具体的な内容!」
真実はタバコをに火を付けてゆっくり煙を吐き出した。
「…………気の毒なスライムだ。殺りたくもないのに殺ってしまった。お前を殺ってしまった事で、今まで平和に生きてきたスライムは討伐の対象として冒険者に追われる事になる……生きるか死ぬか……ギリギリの生活の中で成長を遂げる彼。辛い中でも心安らぐ出会い……」
「えっちょっと待って!スライムの話になってるんだけど?!しかもちょっとかっこよくないソレ?!俺の死因、『うっかりスライムぶつかり死』なのに!!」
「ある意味良かったな、創一。なかなかレアな死に様だ。異世界のギルドで語り継がれるかもしれないな」
異世界転生を果たし前世を思い出すと、録でもない死に方が待っている。しかも今までの話の中、美少女が欠片も出てきていない……
項垂れる創一の肩を真実は優しく叩いた。
「創一……転生チートの道は厳しいんだ」
そしてトドメの一言。
「大体お前、転生したって旨味のあるスキル持ち合わせてないだろ?」
「うう……確かに……明るくて元気!なんて別に前世を思い出す必要ねえわ…………あっ」
創一は何かを思い出したように明るい顔をした。
「転生先が優遇されてるパターンでワンモア!超イケメンとか!!」
「…………」
コイツは恋愛小説で『乙女ゲームに転生を果たすも録でもない死に方をするモブイケメン』程度だろうな……と真実は思ったが、もうなんか面倒臭くなってきた(飽きた)ので、酒とツマミを買いにコンビニに行くという名目で一旦席を立った。
コンビニで漫画雑誌を立ち読みして、時間を潰してから戻ると案の定創一は寝てしまっていた。
ちょろくて可愛い、馬鹿だけど憎めないやつ。それが創一。
夢の中位は無双をさせてやろうと思い、耳元で真実はこう囁いた。
『ここは俺に任せて先に行け!お前だけが希望なんだ!!』
閲覧ありがとうございます!
次回第3弾は~だったら乞われる形での、異世界転移がしてみたい~をなんとなく予定しています。
いつ書くかは未定ですが、内容は多分ご想像通りです。