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イミテーション・チルドレン  作者: 水無月ナツキ
第一章 Forgotten memory
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 妹が生まれると聞いた時、ぼくは嬉しかった。

 友だちのハルトに妹がいて、ぼくは彼を羨ましいと思っていた。

 ぼくも妹がほしかった。だからうれしくてたまらなかった。


 家族みんなで妹の名前を考えることになった。

 ぼくも一生懸命に考えた。

 でも簡単には思い付けそうになかった。


 お母さんはどんな子になってほしいのかなと、考えながら決めるんだよと言った。だから「じゃあ二人はどんな子になってほしいの?」と、そう聞いた。

 お父さんは自由にのびのびと育ってほしいなと言った。

 お母さんは誰かを元気をあげられる子に育ってほしいなと言った。


 ぼくは考えた。ぼくはどんな妹がほしいかなと考えた。

 でも思いつけなかった。

 妹が生まれる。ぼくにはそれだけでよくて、妹がどんな子になっても好きになれると思ってしまったから。


 だからお父さんとお母さんが言った言葉で考えることにした。

 毎日、毎日考えた。

 でもやっぱり難しくて、なんだか悲しくなってしまった。


 ぼくは生まれてくる妹に名前をつけてあげられない。

 そう思うとどうしてか悲しくなってしまった。

 だから、悲しくなってしまったから、ぼくは空を見上げた。


 悲しい気持ちになった時、ぼくは空を眺める。

 だって空は元気をくれるから。

 元気をくれる空は大好きだった。


 空を眺めていると、ふと思った。

 空には自由があるなって。

 鳥も雲も太陽も。別々のものが好きなように浮かんでいられるから。


 だから、空には自由がある。そう思った。

 そのとき、ぼくはわかったんだ。

 自由で元気をくれるもの。それは空だ。なら……。


 ぼくは急いでお父さんとお母さんのもとへといった。

 そしてぼくは思いついた名前を言った。


「ソラ。ソラっていう名前はどう?」


 お母さんが「どうして?」と聞いた。

 ぼくは一生懸命に説明をした。

 空には自由があって、元気をくれる。


 するとお父さんとお母さんは顔を見合って、それから笑った。


「いい名前だね。うん、そうしようか」


 そう言ってくれた。

 ぼくは嬉しかった。

 そこで家族みんなで笑った。


 そして、妹の生まれる時がやってくる。

 ぼくはずっと待っていた。

 楽しみに、待っていた。


 でも帰ってきたお父さんは暗い顔をしていた。

 だから「どうしたの?」と聞いた。

 お父さんは首を振るばかりだった。


 しばらして、ぼくはお母さんの病室へ行った。

 ぼくが「ソラはどこ?」と聞くと、お母さんはいきなり泣き始めた。

 ぼくがおろおろしていると、お父さんが言った。


「ソラはね、偽物の(イミテーション・)子ども(チルドレン)だったんだ」


 イミテーション・チルドレン。

 ぼくは知っている。

 みんなから悪者の手先だと言われている子たち。


 ぼくはテレビで見たことがある。

 たしかに変わっているところがあると思ったけれど、でもぼくたちとそんなに変わらないとも思った。

 だからお父さんとお母さんが悲しんでいる理由がぼくにはわからなかった。


 けっきょく、ぼくは妹、ソラには会えなかった。

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