練習試合
「あついよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。なんでまだ4月なのにこんなに暑いんだよー!」
4月中旬。まだ桜が咲く時期だが、近畿地方は異例の暑さに見舞われている。
「こら、集中集中。バッティングつぎ夏稀の番だよ」
「わかってるってぇ」
そう言って夏稀は打席に入っていった。
「練習試合はもう明日だし、キャプテンの私がみんなをまとめないと」
それにしてもみんなすごいなぁ。真冬なんかずっとバント練習してるけど一回もミスしたこと見たことないし、真なんて柵越えするくらいのパワーもある。なのに私はまだバットに当てるのが精いっぱいで......
「おーい、詩乃ー、キャプテーン」
顔を上げるとバッティング練習が終わった真がいた
「あ、そろそろ私の番だよね」
「おう、そうだけどう。まさか詩乃自分がまだ野球うまくないからって落ち込んでないよな?」
まさかの図星だった。
「お、落ち込んでなんかないし」
「やっぱ落ち込んでんじゃねぇか。最初はみんなできないんだから。ほら、紗奈だってまだきちんとうててないんだから」
「そ、そうだよね。じゃあ私いってくるよ」
「おう。あ、オレも手伝うよ」
とは言ったものの......全然前に飛ばないよぉぉぉぉぉ
15球ほど打ったところで真が言った
「詩乃、ちょっと左で打ってみ」
「左?なんで?」
「いいからいいから」
どうして左なんだろう?真が言ってるってことは何か理由があるのかなぁ。と思いつつ第一球目。
カキーン
「センター......オーバー......どうして?」
「やっぱりか。詩乃はバットを右手で振る癖があったんだよ」
「右手で振る癖......」
「詩乃は右で打つとき真芯にあたってないからそんなに飛ばなかったけど打球は結構鋭かったからね。左の中距離砲ってとこかな」
「そうだったんだ、教えてくれてありがとう」
そして翌日の打撃練習。
右手右手......カキーーーン
「おぉ、柵越えじゃんどうしたの詩乃?」
「夏稀程じゃないけどね。昨日ちょっと真に指導してもらってたの」
「真すげぇじゃん!」
詩乃の打撃が良くなり始めてみんながざわつき始める。
「はわわ、詩乃ちゃんすごいです。私ももっとバント練習しないと」
「いや、真冬ちゃんはもっと打つ練習しようよ」
「無理だよ紗奈ちゃん。私も試したけどかすりもしないんだもん」
そうしたところに会議が終わって部活を見に来た清水先生がやってきた。
「詩乃が打ち始めて燃え始めたところ悪いが、明日の練習試合のオーダーを発表する」
1番 夏稀 7
2番 紗奈 6
3番 詩乃 2
4番 真 8
5番 実 3
6番 珠代 5
7番 真冬 9
8番 梨沙 4
9番 歩夢 1
「「おぉ」」
「どうだ?」
「私らは野球ができればどこでもいいよな実」
「おう」
「ピッチャーは打つのは本職じゃないし9番は妥当かな」
「なんで私が投手じゃないのよ!」
「まぁまぁ今回は歩夢がいるんだし」
「もしかしたら継投で投げられるかもしれないですし」
梨沙が暴れるのを紗奈と真冬が必死に止めている
「詩乃はどうなの?」
「あっ、えーと」
野球のスタメン発表ってこんな感じなんだ。でもいきなり3番起用なんて大丈夫かなぁ。
「詩乃、大丈夫?」
「うん」
「よし、決まりだな。じゃあ今日はここまで。帰ってゆっくり休むべし!」
-------------------------------------------------------------------------------------
練習試合当日 4月20日日曜日
「おはよー」
「おはよう」
どうやら夏稀が一番乗りだったようだ。
「あれ?真冬は」
「一緒だったのか?」
「うん、確かにさっきまでいたんだけど......」
「あれじゃない?」
夏稀な指さすほうを見るとなんだか熱心に真冬が一人の野球部員を見ていた。
「まーふゆ」
「ひゃい」
いきなり声をかけられたことに驚いたのか、真冬がかわいい声を出した。
「なにぃ、あいつ気になってるの?」
「結構かっこいいんじゃない?顔も整ってるし」
「そ、そんなことよりもい皆きてますよいきましょう」
いやぁ、やっぱりアップも結構きついなぁ。これから初めての試合が始まるのかぁ。やっぱり緊張するなぁ。いくらサッカー部でレギュラーでも競技が違うとこんなに緊張するのか。そう思っているとお互いのスタメンが発表された。
男子硬式野球部 女子硬式野球部
1番 北川 6 1番 新井夏 7
2番 中井 7 2番 三田 6
3番 田中 3 3番 木下 2
4番 大谷 1 4番 新田 8
5番 吉村 9 5番 森原 3
6番 ケイ 8 PL 嶋 6番 相沢 5
7番 西園寺 2 1B 名幸 7番 新井真 9
8番 阿部 5 2B 眞鍋 8番 松本 4
9番 松田 4 3B 佐々木 9番 篠原 1
一 二 三 四 五 六 七 八 九 H E
男子
女子
すごい、さすが私立強豪校。スコアボードがあるなんて。すると清水先生に歩夢と一緒に呼び出された。
「相手の今日のスタメンが出たわけだが、気になるところがあるよな」
「はい。大谷君は4番でピッチャーとかいかにも打ちそうですし、6番のケイ君とかは野球留学っぽいので注意です」
「さすが歩夢だな。将来的には詩乃もこれくらいのことはしてもらうからな。そこでだ、この二人は敬遠してほしい」
「「敬遠!?」」
「声が大きい。だってそうだろ?ランナーが溜まった場面であの二人に回ったらどうする」
「それは......」
「そうゆうことだ」
敬遠かぁ。まぁ野球では普通の事なのかなと思っていると、試合開始10分まえになった。
「よし!今日はお前らの初めての試合だ、気合い入れていくぞ。詩乃」
「はい」
「円陣やるからキャプテンとして一言言ってくれ」
「わかりました」
みんな引き締まった顔でベンチの前で円陣を作る。
「今日ははじめての試合で相手も男子だし勝つのは難しいかもしれないけど、いつも通りやっていこう。がんばるぞ!」
「「おー!!」」
私たちは位置につき、審判の合図とともに試合が始まった。私たちの野球はここから始まるんだ。
久しぶりの投稿