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せつない片想い

作者: Maria

君はきっとこの先も知ることはない。

それでいいんだ。

だって私はこう思うからだ。




「好きになってくれる人しか好きにならないの?」



君がくれた言葉。

まさにその通りだ。

好きになってほしいから好きになるわけじゃない。

好きになってくれないから嫌いになれるほど簡単じゃない。




君への想いに気が付いたのは、君のあの子への想いに気が付いた時だった。




「俺まだ元カノが好きなの。」




夕貴(ゆうき)が今でも想っているのは、3ヶ月前まで付き合っていた愛ちゃんだ。



そんな夕貴の言葉によって、気付かされてしまったのだ。

「私、夕貴のことが好きなのかも…」夕貴とは中三で同じクラスになってからずっと仲の良い友達だった。

仲良しになってもうすぐ2年。

今さら好きな気持ちに気が付くなんて私はきっとバカだ。




「うちのクラス白だってよ〜」




2年生も夕貴と同じクラスになれた。

私の片想いも4ヶ月目に突入だ。




「え?白って…?」




「だーかーらー体育祭の色だよ!!俺らのクラスは白組だってさ!」




「あ〜体育祭ね。そっか〜白組か!!」




「亜衣、最近ぼーっとしすぎじゃね?何かあったのー?亜衣ちゃんー?」




君に名前を呼ばれる度に実は胸がズキズキしたりする。

夕貴の元カノと同じ名前だからかな…。




君への想いを伝えるつもりはない。

私はただこうして君のとなりに居られるだけで幸せなんだ。



「ね〜亜衣。」




「ん?何〜?」




「亜衣が愛だったらなぁ…」




君が口にする何気ない言葉は時々、するどいナイフのように私の胸に突き刺さったりする。

何度も何度も同じ場所をえぐるように…




「何それ〜!ごめんね愛ちゃんじゃなくて!!」




「あはは〜冗談だよー亜衣は亜衣でいいよ!!俺亜衣のことも好きだもん。亜衣はー?」



「え…。私も…」




「あはは〜やべぇー、じゃあ俺ら両想いじゃんね♪」




君が好き。

だけどきっとずっと君は知らない。

それで良い。

それが良い。




金曜日の放課後は、体育祭実行委員の集まりがあって、うちのクラスの実行委員は私と夕貴だ。




集まりが終わって、教室で資料をまとめる時の二人っきりの時間が私にとって何よりも大切な時間なんだ。




「あ〜デートしたいなぁ!!」




最近夕貴はそんなことしか言わない。




「じゃあ愛ちゃんに告白すればいいじゃん!!」



「しないよ。あいついま太一先輩とイイ感じみたいだし…」



「…じゃあ、他に好きな人見つけるとか…」



「無理。今の俺には愛しか見えてないもん!」



「でも!それじゃあ夕貴はいつまでたっても…」




それじゃあ夕貴はいつまでたっても幸せになれない。

こんなに愛ちゃんを想ってるのに…。

こんなに夕貴に想われているのに…。




「夕貴は…それで幸せなの?もう半年以上だよ!!好きになってくれないのにそれでも好きなんて…」



夕日が当たった夕貴の髪の毛は、少し透けていてとても綺麗だった。

優しく微笑む夕貴の笑顔が何だかとてもせつなくて…




「亜衣はさ…好きになってくれる人しか好きにならないの?」




私は君のもっともなセリフに、何も返すことが出来なかった。




夕貴はその後こう言った。

「俺はいますごい幸せだよ。」




そう言いながら微笑む夕貴の笑顔が、やっぱりどうしようもなくせつなかったけど、そんな夕貴を見ながら私はこんなことを思った。




「ねぇ、夕貴。私もね、いますごく幸せかも。」




とりあえずもうしばらくは、せつない片想いを楽しんでみようかな。




なんて思った高二の夏。




だって…




人生はまだ始まったばっかりだ。

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