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2nd Life:異世界で英雄になった剣士  作者: 太古
プロローグ:剣士
8/42

8話:決心

「おはよう、天斬君」

「レミアさん、おはよう」


あの日以来、柊二はレミアと友達の様な関係を築き吉田、中川を含めた4人で過ごす事が多くなった。


今週、柊二は週番の仕事があるので朝早くから登校して配布物を運んだり日誌を書いておいた。


そこへ珍しく速めの登校した来たレミアと挨拶を交して談笑し、短くも柊二には長く感じた時間は吉田の登校で終了した。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

授業も変わった事は無く、時間が進み今は放課後。

教室には日誌を書き終えて下校の準備をする柊二と一緒に帰ろうと待っている吉田、中川さんがいる。


「なあ、帰りにココロ行かないか?」

急に寄り道を提案する吉田。

「いいねぇー、行こう行こう!」

提案に乗る中川さん。


まあ、たまには悪くないな。


「そうだな、行くか」

時にはリフレッシュも必要だよな。


ガラガラッと不意に教室のドアが開いた。


「あれ?レミアさんどうしたの?」

教室に来たのはレミアで、吉田は不思議そうに思い聞いてみた。


「忘れ物をしてしまって、迷惑だった?」

申し訳なさそうにするレミアに吉田は否定していた。


「そうだ!レミアさんもココロに行こうよ!」

「ココロ...?心?」

「ココロ知らないの!?」

「う、うん。この街に着たのは転入する三日前だったから」


ココロとは昔から学校の近くにある喫茶店で、渋い内装に落ち着いた雰囲気、それに無口で紳士な店長さんが評判になっている。


「じゃあ、街を案内するついでとして行こうよ!」

グイグイと迫って来る中川にレミアは、

「お邪魔じゃなければ...」

「お邪魔ないよ!」

気持ちが折れたようだ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「・・・ありがとうございました」

相変わらず余り話さない店長さんだなぁ、そこがカッコイイんだけど。


「あんなに美味しいもの食べた事無かったわ」

「だよねだよね!?あそこのパンケーキは絶品なんだよ!」

食後の感想を言い合う女子2人


彼女達を他所に男子2人は彼女達を眺めていた。


「どうして女子は甘い物でそこまで盛り上がれるのだろう」

「さぁ、好きな物は共有したいからじゃないのか?」


良く分からんな、そう思う柊二だった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

夜のそよ風がサァーと吹き、近くの草薮で虫が鳴いている。

晩御飯を食べた柊二は道場の神棚に向かって正座をして瞑想していた。


そう言えばあの日もこんな夜だったな。


ふと、柊二は瞑想中に思い出してしまった。


あの時から俺は強くなろうと決心した。無我夢中に木刀を振り、祖父に天斬流剣術の極意を学び、剣が使えない時のためにその他の術も習い、死ぬ物狂いで特訓した。


護られるだけの存在じゃない。弱かった頃の俺はとうの昔に置いてきた。今度は俺がこの街を、この日常を守る。


「兄さん、ここにいたんですか。もうお風呂湧いてますよ。」


今は...

「兄さん?」


「ありがとう、すぐ入るよ」


今は、この笑顔を守りたいだけだ。もう2度と妹の...大切な家族の涙は見たくない。


柊二が心に決め立ち上がった瞬間!


ドカーン!!と大きな音がなり、それと同時に爆風が襲ってきた。


「きゃぁぁぁぁ!」

「遥香!」


咄嗟の出来事だったが柊二は遥香を引き寄せて庇った。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

暫くして、風が収まり街からパトカーや救急車のサイレンが聴こえてきた。道場は風で障子が飛び、竹刀木刀の類いは散乱している。


「兄さん...」

「大丈夫、俺はここにいるよ」


柊二は遥香を落ち着かせようと頭を撫でる。


街が騒がしい、一体何が起きたんだ!?


柊二は遥香を支えながら縁側に立つ。そこで見た光景に柊二は絶句した。


ビルが傾きもう片方に寄りかかっているが倒れるのは時間の問題だろう。あちこちから火災が発生し、人々が逃げ惑っている。

しかし、良く見ると人々の様子が普通じゃない。


まるで...

「まるで何かから逃げているような」


ダダダダッと勢い良くこちらへ向かってくる足音。

柊二は遥香を道場の隅に隠し、神棚の日本刀に手をかける。しかし、彼は刀が抜けない事に気付きその場に落ちていた木刀を持つ。


バン!と大きな音を立ててふすまが開かれる。と、同時に柊二は木刀を振り下ろすが、相手に躱されて手首を掴まれ技をかけられる。


転ばされた柊二は立ち上がったが相手に取られた木刀を顔に突きつけられた。しかし良く見ると見知った顔に柊二は安堵する。


「爺ちゃんか...」

「フッ柊二よ、筋は悪くないがそれでは儂に勝てんぞ。それに相手も確認しないで斬りかかるのは感心せんな」

善十朗は奪った木刀を柊二に返した。


「そうだ、柊二。儂はお前に伝えに来たんじゃった」

「何をだよ」


先程の斬りかかりについての発言に比べて、善十朗の眼に力が入っている事に気付いた柊二は、真面目に聞いた。


だが、祖父善十朗が言った言葉に耳を疑った。


「街で人々を襲う何かが出た」


その言葉に柊二は身をこわばらせた。


あの日、柊二が剣を抜く事が出来なくなったあの夜。

その時の悪夢が今、再び起こっているのだから。

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