5話:高校生活3(放課後編)
校舎に響き渡る高らかな音が、生徒に筆記道具を戻させ、寝ている者を現実に引き戻す。
本日の授業終了の合図である鐘が鳴る。
「はぁ~い、じゃあ皆気をつけて下校して下さいねぇ〜」
「毎放課後、桃ちゃんが心配してくれて俺...感激ッ!!!!」
「あ、吉田君は今朝の事があるから職員室に来てねぇ〜」
「チクショウッ!!!!」
「吉田、あれはお前が悪い」
近くで暴れる吉田を余所に、柊二も荷物をまとめて下校しようと教室の扉に手を掛けた途端、
バンッ!!!
「天斬ー!居るかー!」
大柄な男が扉を勢い良く開けてきた。
「江田先輩、どうも」
いきなり現れた大男に取り敢えず柊二は挨拶をする。
「おお!こんにちわ」
江田も挨拶を返す。流石は剣道部部長のだけあって礼儀正しい。
江田先輩は柊二の一つ上で剣道部の部長である。
何処からか柊二の剣道3段の情報を知り、以来部活の勧誘をしてくる。
彼に入る気は無いですが。
「天斬!どうだ?剣道部に入る気h」
「ありません」
彼とて部活として剣道をやるなら、少しでも早く家の流派を修得したいと考えている。そのため何度目になるお断りの言葉を返させて頂く。
「そうか、なら...」
「はい、練習試合ですよね。それなら少し時間がありますので大丈夫ですよ」
「おお!いつもすまない、感謝する」
部活に入らないが時々練習試合には参加している。柊二にとっても武術を学ぶ身として練習相手は欲しいし、この学校の剣道部には期待もしている。
「では、先に道場に向かっているぞ」
「はい、準備が出来次第そちらへ参ります」
颯爽と去る先輩を見送り柊二は準備を終え、道場へ向かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ふぅ、いい運動にもなったしそろそろ帰ろう」
剣道部員達より先にあがり帰宅する。
「天斬君!ちょっと待って」
不意に呼ばれた柊二は警戒しつつ後ろを振り向く。
祖父から常に警戒する技術を教え込まれていた彼はいかなる時も対処可能な状態に出来る。
後ろを振り向くと、そこには転入生レミアが立っていた。
「どうかした?何か用でも?」
俺は警戒を解き呼び止められた理由を聞く。
「ここでは話せない、付いてきて」
そう言われた柊二はレミアについて行く。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「それで話しって何?」
「えっとね、言いづらいんだけどさ」
急に彼女がモジモジと動く。
モジモジとする彼女、放課後の夕方、人気が無い場所、そして【言いづらい】の一言。これだけの要素を含めて言う事はただ一つ。
『友達になってください、だろうな』
会ったばかりの人に対していきなり告白する奴が何処にいる。
普通は有り得ない事である為、せいぜい友達になって下さいが安直だろう。
『どうだ俺の名推理!』
柊二は彼女の発言の先を読めたので、少し誇らしげにした。
「私、女神なの!」
彼女の一言が出るにつれて、夕暮れ空にそよ風が吹いた。
ああ、これがもう少しまともな答えたら幻想的にも思えただろう。
「・・・」
余りにも斜め上過ぎる答えに柊二は呆然とした。
そしてすぐさま後ろを振り向き顔を抑えて俯いた。
「どうしたの?」
レミアは不思議そうな顔をして柊二を見つめる。
「こ、こっちを見ないでくれ!」
さっきまで名推理とか自信げにしていた自分が恥ずかしく、彼女の【痛い】発言により柊二は複雑な心境にあった。