4話:高校生活2(昼休み編)
今朝の一件、レミアの自己紹介が終わってから普段通りに授業も終わり、今は昼休みの真っ只中。
勿論、今朝から教室はレミアさんの話で持ちきりで本人にも質問の嵐が吹かれていた。
「ねぇねぇ、レミアさんてどこから来たの〜?」
「レミアさん、髪の毛素敵だね」
「レミアさん、僕はもう君にはメロメロさ。どうか付き合っt」
「あ!お前抜け駆けすんなよ!」
そんな騒がしい風景を柊二は吉田と共に眺めている。彼女は誰の質問にも丁寧に応じているようで、彼女の品の良さが伺える。
無論、会って間もないのに告白する奴には丁重に断っているようだ。
「なあ、吉田」
「なんだ?お前もレミアさん狙ってんのか?」
「どうしたら俺が彼女を狙っているように見える」
『吉田は本当に恋愛脳だな』
そう思いながら彼は自販機で買った紙パックの林檎ジュースを飲み始める。
「え?だってお前、見惚れてたじゃん?」
弁当箱を置き、箸を片手に手首を振りながら吉田は唐突に言い放った。その瞬間、思ってもみなかった発言に動揺した柊二の器官には食堂を通るはずの液体が流れ、大いに噎せる事になる。
「ゴホッゴホッ!お、お前なんてこと言うんだ!見惚れてた訳ないだろ!」
「いんや、俺の恋愛センサーがビンビン反応してる」
自他ともに認める女好き吉田。彼の言う恋愛センサーとやらが反応している時、大抵ろくな事にならないのを柊二は知っている
「で、実際の所どうしてレミアさんを眺めていたんだよ。やっぱりアレだけ可愛いと自然と目がいくものだからお前もそんな感じだろ」
「いや、そういう訳じゃないんだけど...」
確かに彼女を始めてみた時に綺麗だと思った。
しかし、彼はそれ以外でそれ以上に彼女に不信感を覚えていた。
人間離れな謎の雰囲気。あの感じが今もある。
何故彼はあの時そんな事を思ってしまったのか。見た目も人間で外国人だろう容姿だが、人として自分達と何ら変わらない。
しかし、彼女から俺達とはかけ離れた別の違いがある。
と、そんな事を考えていると急に背後から柊二の背中を押して来た奴がいた。
「やあやあお二人さん、噂の超絶美少女を取材しに来たよ!」
「よう、中川」
「やぁ、吉田君。相変わらず女好きは健在かね?」
隣のクラスの中川比奈は、吉田と同じ中学の同級生だという。
小学生以来に会った吉田と関わりのある柊二。その後は、ある経緯で別の中学に進み、再び高校で再開したのだが、去年のいつの日か吉田と柊二が話していた時に急に入り込んできた女の子。柊二と別れた吉田と中学で関わりを持ったらしく、最近は良く俺と吉田の間に入って3人でいる。
「中川さん、相変わらず仕事熱心だね」
「うん!彼女の転入はジャーナリズムに火がついたよ!」
彼女は新聞部に所属、その行動力と編集力を評価され彼女だけの記事を書く事が許可された程の実力者だ。
そういう中川は首から下げているカメラを持って噂の転入生の元へ向かった。
「彼女の活動力を見習いたいな」
「あぁ、中学の時からあんな感じだったぞ」
中川はレミアに色々質問をしている。レミアさんもそれに微笑みを浮かべて答えていた。
そんな中、ふと柊二が客観的に辺りを見回すと彼女の取り巻きが増えていた事に気が付いた。
彼より上級生や下級生も廊下から見に来ているようで、噂っていうのは恐ろしい。
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昼休みも終わりに近づいた頃、職業柄とまでは言わないが武道を嗜むものゆえ、状況の読み込みと分析が速い柊二がレミアの笑みに歪みが見えた。
それもそのはず、あれだけ大人数に囲まれて質問攻めのうえに廊下からの視線で彼女も気疲れもするだろう。
「皆、時間はまだまだ沢山あるからレミアさんへの質問は今日はここまでにしよう。彼女も疲れてしまう」
気が付いたら柊二はレミアさんを囲む人混みの中に立っていて皆に呼び掛けていた。積極的に前に出る性格ではない彼がこうして自ら話に行くことは滅多な事。クラスメイトも多少は驚きを見せていたが、レミアに対する質問攻めを思い返し、自重を考えた。
「そうだよなぁー」
「レミアさんごめんね」
「全然大丈夫だよー」
レミアの周りを囲んでいた生徒達がそれぞれ自分の席に着き始める。邪険にならずに解決した柊二は自分の席に着く。
「天斬やるじゃん」
悪友が耳元で囁くように呟いた。
「俺、そんなつもりじゃなかったぞ」
後少しで授業が再開するから良しとした。
柊二は道具を用意する為に準備室へ向かう。
「・・・」
彼女は黙って自分に気を使った1人の男子の背中を見つめる。