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2nd Life:異世界で英雄になった剣士  作者: 太古
第3章:神話と伝説
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28話:重要戦略拠点テニオラ奪還作戦

「いいか野郎共!ワシたちの目標はここから出る船に乗り、数km先にある無人島に向かうことだ!今やこの街にも悪の神率いる屑共が蔓延っている。この街を解放することでワシらの重要な場所になり、街の人にも希望が訪れるはずだ!」


老兵ジャカルの本作戦内容を聞く兵士達。彼等もこれから起こる戦闘を前にして意気揚々とし、その目には闘志が浮かんでいるのが見える。


「それじゃ、わしらの指揮官殿から一言」


ジャカルはそう言うと柊二に視線を送る。その合図を受け取り、兵士達の前に姿を晒した。兵士達のみならずジャカルまでも真剣な表情で柊二を見つめていた。


「あー、なんだ。こういうのはあんまり柄じゃないんだが――」


「皆、俺について来てくれてありがとう。これから戦闘が始まるが...無理に戦う必要は無い。今この場で逃げたい奴がいれば出ていっても構わない。それは君達の意思であり、俺は君たちの人生を奪おうなんて考えていない」


柊二も兵士達にあてられ、真剣に話をしていた。リサやアリシア達がいる現在にいる時には見せなかった顔で。


「全ての戦闘において死傷者が零人ぜろにんだなんて存在しない。本作戦でも死傷者が必ず出る。今回だけじゃない。この後も先の分からない戦争が多々ある事は言うまでもなく分かるだろう。――この時点で心が揺らいだ者は、間違っていないと思う。今なら無かったことにする、立ち去ってくれてもいい」


柊二はこれからも続く戦争に無理矢理兵士達を巻き込むつもりはなかった。だが、柊二の話しを聞いてその場を立ち去ろうとする者は誰一人していなかった。


「...本当にいいのか?終りの見えない戦いに君達は身を投じることになるんだぞ?」


「何を仰るんですか、我々は貴方が指揮官だからこそついて行くのです」

「オルテア様を信じてどこまでもついていきますよ」


ガヤガヤと柊二オルテアの話題で盛り上がる兵士達の中でジャカルが笑っていた。


「兄ちゃん、何を言おうがコイツらが兄ちゃんについて行くつもりだぞ。コイツらは兄ちゃんを大きく評価して自分たちの意思で決めた事だ。無論、ワシもな」


その言葉が柊二にはとても嬉しくもあり、心配でもあった。


「...ありがとう」

「礼ならいい、それよりもそろそろ開始の時刻だ」

「なら早く終わらせるか」

「よし、野郎共!盃を持て!」


ジャカルの令で兵士達は目の前にある盃を持つ。と言っても酒瓶や缶を切って飲み口を広くしたガラクタのような物だ。


「我々は生きて先に進むぞ!メルセリア皇国に!」


「「「メルセリア皇国に!!」」」


柊二の乾杯の音頭を境に、皆で量少ない酒を飲む。いよいよ作戦開始の刻だ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

薄らと陽の光が丘から覗く現時刻に敵密偵はテニオラの街を闊歩する。先にジャカル率いる歩兵隊が出撃してから約数十分。いよいよ柊二率いる弓兵隊が動く時がやってきた。


「弓兵隊、作戦開始だ。作戦通りでは壁上までの道に敵歩兵はいないはずだ。俺に続いてくれ」


窓から外の様子を確認し、隊を率いてドアから外に出る。前の街道には敵影を確認出来ない。


そろそろと足音が鳴らないようにゆっくりと壁際を歩く。今、外出しているとすれば柊二とジャカルの軍と敵勢力位で、町人達の姿は見えない。


まだ時間帯が早いからなのか、それとも家内から我々の様子を伺っているのか。静かな街を彼等は歩いていた。


ゆっくりと街を歩き広場まで到達した。広場には姿を隠せる遮蔽物は見当たらず、地図をみても迂回ルートは無さそうだった。


「敵勢力はいない、先に進むぞ」


柊二が確認をとって角から一歩踏みだす。


が、

「オルテア様、お待ちを」


ぐっと背後の兵士に肩を引かれた。


「どうした?」

「屋根に敵弓兵です。恐らくは巡回兵だと」


味方が指を指す方向の屋根には、1人の敵が広場の様子を見ていた。


「敵か...迂回ルートは無いし、やれるか?」

「お任せ下さい」


柊二が彼に頼むとすぐさま弓弦に矢をつがえて狙いを定める。敵が方向転換し、1歩進んだ所で矢を放つ。


放たれた矢は敵に向かって飛んでいき、背中のやや左の心臓部を撃ち抜いた。倒された敵はバランスを崩して屋根から転げ落ちる。落ちた先は花壇に生えている草むらへ、落下した敵の姿は見えなくなった。彼はこれを狙っていたのだ。


「良い腕だ」

「これくらい朝飯前です」

「そうか、先へ急ぐぞ」


見張りの消えた広場を通り、目標である外壁に向かって足を進めた。道中は歩兵隊が作戦通りにこなしてくれたのか歩兵隊は見当たらず、広場の見張り以外の戦闘は起こらなかった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

目標の外壁は目の前にして、弓兵隊は裏路地にて様子を伺っていた。放置されたテーブルに外壁の地図を広げて、偵察員が目視しては地図に丸印で敵の位置を確認する。


「オルテア様、壁上の敵勢力ですが主に弓兵、所々に歩兵が確認されました。また、敵歩兵の中には笛を持っているようで、恐らく発見されれば敵増援が来るかと」


「ありがとう、引き続き確認を頼む」

「はっ、了解しました」


『さてどうするか、歩兵がいるとは予想外だった。味方の中に近接戦のできる奴はいないし...』


腕を組んで地図を眺める。敵弓兵はその場に固定されているようだが、歩兵は巡回する様に動いているようだった。


少し考えてみた結果、柊二は自分が動く事にした。味方の一人を呼ぶと自ら歩兵を排除する事を伝える。


「我々の中で近接戦が出来るのは俺だけだろ?巡回する歩兵は俺が何とかするから、皆で弓兵を狙っていてくれ。俺が歩兵を片付けたら、すぐさま撃つんだ」


「了解しました、各員に伝達いたします」

「頼んだぞ」


味方にそう伝えると柊二も行動に移し、壁へ登る階段に近づく。見つからないよう中腰で階段を慎重に上がって行く。


敵が足をつけている目線まで持ってくると、相変わらず弓兵達は丘の方を眺めているが歩兵達は談笑しているようだった。


壁上に置かれた物資や矢の入った木箱を影にして、柊二は歩兵達に近づいていく。もう数m先まで近づいた所で彼等はこんな事を話していた。


「なぁ、知ってるか?ここから数km先の村での作戦」

「知ってるよ。例の新型兵器のことだろ?」

「それじゃなくて、魔導隊が全滅した話だよ」


「は?魔導隊が全滅なんてするわけないだろ。奴等、装備も兵器も俺らより劣ってんだぜ?魔法相手に剣や弓でかかってくる奴らに俺達が負ける訳ないだろ」


「それが本当なんだってよ。何でも生き残った奴が言うには1人で魔導隊を潰した化物がいたとか」


「嘘だろ?!どんな奴だって?」

「それが見たこともない格好だったらしいぞ。何でも変な形の剣を腰にぶら下げてたらしいがそれを使わなかったみたいだ」


「そんな馬鹿な話――うぐっ」

「おいどうし...た」


目の前で談笑していた仲間が急に足元に崩れ落ち、慌てて体を揺すった。だが、彼が目にしたのは首に短剣が突き刺さったまま二度と気を取り戻なさない仲間の姿だった。


事切れた仲間を目に焦っていると目の前に誰かがいる。男は慌てて顔を振り上げた。


「お、お前は――」


次の言葉を発する事なく、彼の人生はそこで途絶えた。最後に見たのは目の前で死んでいるさっきまで話していた仲間の顔だった。


男が生気が無くなると無数の矢が彼の後ろの弓兵達に突き刺さる。彼らも同じく足元に崩れ落ちた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「全員準備はいいか」


味方達は敵の鎧を着てなりすます。遺体は敵の目につかない場所に隠しておく。壁上には敵に扮した味方がズラリと並び、先程の敵兵と同じ隊列で丘を眺めている。


「よし、作戦を決行する。合図を送ってくれ」


柊二がそう告げると、味方の一人が松明を振って壁外に放り投げた。暫くするとジャカル率いる歩兵隊が丘から姿を現して隊列を組む。


今度は歩兵達が槍や剣を振り上げる。こちらも準備は出来ているという合図だ。


「歩兵の準備が整ったようです、笛を鳴らします」


ピィ〜!!高らかな笛の音が街中に響き渡る。少しの静寂の後、街のあちこちから敵兵が姿を現し、門を抜け、陣を張る。


敵勢力の構成は歩兵隊のみのようで数はおよそ100人程。奇襲作戦で数は減らしているが、元々テニオラは密偵が占領していただけなのでそれ程数は多くない。


それでも柊二達の軍よりか数は多かった。


敵勢力が全員外に出たのを確認すると味方が門を閉じた。街が攻め落とされないように門を閉じる、敵も何ら違和感を感じていない様子だった。


敵が陣を張り終わると中から一人の男が前に出た。どうやら彼が敵司令官の様だ。


「弓兵隊、矢を放て!!」


敵の司令官がそう叫ぶ。柊二達弓兵隊は何の迷いもなくジャカル達に矢を放つ。だが、これも作戦のうち。第一射撃でジャカル達の手前を狙って矢を放つ事で敵がジャカル達に攻めるように仕向ける。勿論、万が一を考えて盾を構えてもらっている。


矢がジャカル達に届くと彼等はわざと混乱したように振る舞う。


「良し、敵は混乱している。今が好機だ、全軍突撃せよ!!」


案の定、敵軍はジャカル達に向かって突撃をする。だが、これが柊二達の作戦通りだと知らずに。


「敵が歩兵隊に向かった、矢を敵軍に向かって放て!!」


柊二が下した命令通りに味方が矢を放つと無数の矢が敵軍に降り注ぐ。突然の矢によって敵軍は足取りをおぼつかせ、パニックに陥った。


そこへすかさず歩兵隊が突撃してきた事により、敵軍は門に向かって撤退してくる。


きっと誤射だろうと考えて向かってくる敵から一時撤退を図る。だが、門まで到達しても開かれることは無く、一部の敵が門を壊そうと叩き始めた。


しかし門は頑丈で破城槌はじょうついでなければ壊れないだろう。そこへ歩兵隊が迫ってくるものだから敵は戦う士気も落ち、彼らは降伏した。


こうしてテニオラ奪還作戦は成功に収めた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「自軍被害の確認取れたか?」

「はっ!報告致します、弓兵隊死傷者0、歩兵隊死傷者2名で確認をとれました」

「...ありがとう、戻っていい」

「失礼しました」


現在、敵が拠点として使っていた建物から物資を兵舎に運び込む作業で兵士達が働いていた。中には敵が町人達から搾取したと思われる物も見つかり、返却する為の行動もしていた。


無理な圧力から解放された町人達は皆笑顔が戻ったようで誰もが明るく、それを見た兵士達も明るくなっていた。


柊二は1人その光景を眺めていた。場に合わない難しそうな顔で。其処へジャカルがボトルを片手に寄ってきた。


「どうしたんだ兄ちゃん、浮かねぇ顔して」

「...この作戦で二人が死んだ。始まる前に死者が出ない戦いなんて存在しないって自分で言ったのにな...」


柊二は死者が出た事が気にかかっていた。難しい顔をしていたのはそのせいであった。


「だが、あの時誰も立ち去らなかった。つまり、死んでいった奴らも覚悟してたんだ。前にも言ったが全ての業を背負うのは殺した敵だけじゃない、死んでいった味方の分もだ。奴らの事を考えるなら奴らの分まで生きてこの戦争を終わらせろ」


「...そうだった、すまない」

「イイってことよ。所で、降伏した敵の事なんだが捕虜にするのか」

「そのつもりだが問題が?」

「ワシは兄ちゃんに従うが味方の中には敵兵を恨んでいる奴らも多いからな、話し合った方がいいかと思ってな」


さきの戦いで降伏した捕虜を柊二はこの街の兵舎地下にある牢に入れておくつもりだったが、味方の中には捕虜にするのを好まない奴らもいた。その事をジャカルは知らせに来たのだ。



話し合った結果、やはり捕虜にすることに決まった。最初は不服そうな態度だった反対派も柊二が賛成派だった事で有無を言わさず賛成に回った。


柊二はジャカルと数名の味方を連れて捕虜を牢に連れ入れた。連れてきた時には既に敵が捕虜として入れていたメルセリアの兵士たちが閉じ込められていた為、解放することで味方として戦ってくれるとの事だ。


敵捕虜を牢に入れ、立ち去ろうとした時、元捕虜の味方が驚愕の言葉を吐いた。


「司令、氷華団の方々は?」

「氷華団ってなんだ?」

「メルセリア皇国精鋭の騎士団だ、確か全員女で出来てるとかって噂だ」

「はい、我々が派遣される前にこの街を護っていたと聞いたいたのですが、誰も姿を確認していないと」

「ふむ...」


彼ら正規軍が派遣されたのは数週間前らしく、それより前にここテニオラを保護していたという精鋭軍氷華団。しかし、誰1人として姿を見た者はいないという。


「...ふ、ふふふっ!」


先程入れた敵の1人が不敵に笑い始める。その顔は嘲笑うかのように捉えられる。柊二はそいつのいる牢に近づくと問い始めた。


「...何か知ってんのか?」

「知ってても教えるかよ、阿呆」


男は挑発的な態度で柊二に向けて答える。だが、柊二も遊びに付き合ってるほど暇じゃない。


「教えないなら価値はない、ここで死ぬか話して生きる方が得策だと思うが?」

「...ちっ、分かったよ。そこの奥の石壁を殴ってみな」


言われるがまま柊二は一番奥の石壁を触ってみる。すると扉が開くかのように壁が押し開いた。


「こりゃたまげたな、秘密の地下牢か」

「君はここに残ってくれ、俺とジャカルで見てくる」

「了解しました、お気をつけて」


柊二は横に掛けてあった松明を手に隠し階段を降りていった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「おいおい、いつまで続くんだこの階段」

「ジャカル気を付けろよ、何があるか分からないからな」


どれ位降りただろうか。ただひたすらに同じ光景の続く階段を降り続けて、もう気が遠くなりそうだった。


「ん?スンッ。何か臭うな」

「ワシはまだ加齢臭の出る歳じゃないぞ」

「いや、下からだ。もうそろそろ着くのかもな」


柊二が鼻を鳴らし、匂いを嗅ぐと酷い匂いが鼻腔をくすぐる。例えるなら生ゴミが腐ったような匂いだった。


「着いたぞ、ここが終点みたいだな」

「しっかし本当に臭いな、鼻が曲がりそうだ」

「ジャカル、何かないか探してみてくれ」

「はいはい。ん、こいつは――油か。向こうまで続いてんのか」


ジャカルは壁の出来た溝に油が入っていることに気がついた。更にそれは向こうの方まで続いているようで、油に松明の火を移した。


火はみるみるうちに油の上を滑るように着火していく。あいだあいだに器に盛られた木々があり、そこに火が灯って部屋を明るく照らす。


「――っ!」

「おいおい、たまげたなこりゃあ...」


二人が目にした光景は絶句させられるものだった。真っ直ぐに伸びた通路の左右に3畳ほどの個室があり、扉は鉄格子で出来ていた。だが、2人が驚いたのは部屋じゃなく中にいる・・だった。


「兄ちゃん、こいつは...」

「ああ、分かってる。彼女達が氷華団・・・で間違いない」


地下の奥深くに作られたこの牢に彼女達は閉じ込められていた。あられもない姿で足枷で身動きが取れない状態だ。


2人は奥に進みながら彼女達の様子を見て回る。正直、見るに耐えないほど酷い状態で彼女達が捕虜にされて、何をされてきたのかは明らかだった。


「まさか死んじゃいないだろうな...」

「――おい、あれ!」


柊二が見つけたのは一番奥の部屋に監禁されている女性。彼女は壁に寄りかかっていたが胸が動いているのが見える。呼吸、つまり息をしている証拠だ。


「ジャカル、すぐに上のヤツらに担架と毛布を持たせて連れてきてくれ!」

「分かった、すぐ戻ってくるからな!」


ジャカルに仲間を呼んでもらいに行かせたあと、柊二は近くの石で扉の錠を破壊して中に入る。


「おい!しっかりしろ!」


地下深くの牢で柊二の声が谺響こだまする。彼女達がその声に反応することは無く、ただ虚ろな瞳で気力が尽きていた。

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