26話:伝説の王女と聖女ノエル
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「・・・・。」
皿に乗った目玉焼きをチビチビと箸でつまんで食べる柊二。この世界では箸なんてものは無いので試しに作って、朝食時に使ってみていた。
出来が悪い訳では無いが些か細過ぎたか...なんて最初は思っていたが、この状況のせいでそんなことも忘れてしまった。
「トージ様、お塩とって頂けますか」
「あ、ああ」
「ありがとうございます」
どことなくリサの態度が素っ気ない。柊二が渡した塩を自分の目玉焼きにこれでもかってくらいに振りかけていた。
「...リサ、怒ってる?」
「怒ってませんよ」
『あ、これ怒ってるな』
リサの言葉のトーン、ニュアンス、そして態度。それ等を合わせる事で導き出せる結論は怒りそのものだろう。
昔、吉田に【鈍感野郎】と訳分からずに渾名を付けられた柊二だったが、流石に理由は何となく分かっていた。
「スープも出来ましたよ。アマギリ様、お味の方はどうでしょうか」
「ええ、とても美味しいですよ。ありがとうございます、殿下」
厨房からエプロン姿で出てきたのは皇女殿下のフレイヤ。彼女はトレイに3人分のスープを運んで来た。
「やっぱり、目玉焼きならミット村の卵ね」
一人そう呟くのはリサの横に座り、フォークで卵の白身を食べているアリシアだった。
いつもならこの大きな屋敷には、柊二とリサの2人しかいなかったのだが、フレイヤとアリシアを含めて4人の食卓と化していた。
まぁ、どうしてこうなったのかと言うと――
◇◆◇◆◇
珍しく早起きをした柊二は、眠気眼のまま厨房へ向かっていた。理由としては、喉が渇いたらとシンプルな理由だ。
欠伸をしながら厨房に近づくと、中からカチャカチャと金属が触れ合う音が聞こえてくる。柊二は、リサが朝御飯の仕度をしてくれているのだろうと思っていた。
『リサってこんな早くから準備してくれてるのか。今日は非番だし、感謝も込めて遊びに連れて行ってやるか』
「リサ、おはよう」
「あ、おはようございますアマギリ様」
「ん、アマギリ様?リサ、いつから俺の事をアマギリ様って――」
帰ってきた言葉が普段と違う事に違和感を感じ、柊二は眠い目を擦って再度、目の前の光景を瞳に映した。
「――殿下?」
「はい」
「――どうして私の家に殿下がいるのでしょうか。そうか、俺はまだ夢を見ているのか」
それなら納得、と柊二は腕を組んでうんうんと一人で頷く。
「ふふ、アマギリ様のお寝坊さん。私がここにいるのは夢ではなく現実ですよ」
フレイヤはクスクスと笑いながら包丁で野菜を切っている。その手付きは大したもので、手際良く調理を進めていた。
「トージ様、そこに立っていられると朝御飯の準備が出来ませんよ」
「っ!お、おはようリサ。今日も早いな」
「おはようございます。トージ様の朝御飯を作るのは私の役目ですからね、早く起きないと」
まだ朝早いというのに、リサの笑顔が眩しい。だけど、今ここでリサが厨房に入ったら――。
『確実に俺が説教される!』
何としてでも阻止しないと!と思っていた矢先。
「アマギリ様、お鍋は何処ですか――」
厨房からひょこっと頭を出したフレイヤがリサの視界に入る。
「あら?」
「へ?」
『あ、説教確定だ...』
◇◆◇◆◇◆
「どうして姫様とアリシア様がいらっしゃるのか。トージ様、説明してくれますよね?」
「それが俺にも分からなくて...、殿下とアリシアさんはどうしてこちらに?」
四人揃って椅子に座り、柊二とリサとアリシアは食後にお茶を飲んでいた。
「貴方が非番なら殿下の護衛の任は私に回るのよ」
アリシアはそう一言言うとフレイヤの淹れたお茶を飲む。心做しか、口元が緩んでいる(?)。
「私はアマギリ様と約束しましたから」
「約束...ですか?」
『なんだ、俺は殿下と何か約束をしたか?』
柊二が目を瞑って記憶を鮮明に蘇らせる。
そんな柊二をよそにフレイヤは赤らめた頬を押さえて、
「ずっと一緒にいてくれると♡」
フレイヤの一言に場は凍りついた。僅かだがアリシアの眉が動き、リサに至っては湯呑みにヒビが入った。
「で、殿下、その話は...」
「ですから、私はこうして【おはよう】から【おやすみ】までアマギリ様のお傍に身を置かせているのです。」
「え?おやすみまで?」
パリンッと音がする方向を向くと、破片と化した湯呑みが無惨に散らばっていた。
「そうでした、お父様からアマギリ様へと手紙を預かっていたのです。こちらを」
フレイヤから手渡された手紙をその場で開封し、読んでみる。
『これから娘をよろしく頼む。追伸 貴殿なら手を出して良いが、それ即ち婿養子になる事を意味するぞ』
「夕暮れ時には、私の荷物がこちらに届きますのでお部屋をお願いしますね」
「あのー、殿下...」
「あら、お断りするのですか?そうなってしまいますと、心苦しいですが不敬罪としてアマギリ様は捕まってしまいますね」
ちょっと意地悪っぽく柊二にウインクを送ると彼は身震いをした。
「まさか、アリシアさんも...」
「私は兵舎に私室があるもの。でもそうね、貴方がいいと言うならここに住むけれど。それに、私を除け者にする騎士様なんて私は知らないわ」
「結局、お二人とも住むんですね。いいです、部屋は沢山空いていますので...」
ニコニコと嬉しそうなフレイヤ、無表情さは変わらないが明るいアリシア。リサから赤黒い怒りのオーラと鋭い眼光が柊二へ飛ばされ、そんな2人を肩を落としリサの視線で冷や汗をかく柊二。
彼の家はこれまで以上に明るく騒がしいものへ変わることだろう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「なぁ、機嫌直してくれよ」
「ふんっ!やっぱりトージ様は綺麗な女性に弱いじゃないですか。あんなに鼻の下を伸ばして」
「そんな事ないだろ」
柊二は普段の感謝を込めて(ご機嫌を取るため)、リサと2人で街を歩いていた。リサはまだ怒っているのか顔を合わせてくれない。だが、真横にぴったりと並んで歩いている事に気が付いた柊二は、微かに笑を零した。
「む、何笑ってるんですか」
「いや、こっちの事だよ」
街道沿いを二人で歩く。店が沢山並ぶこの道は皇国のメインストリートと言っていいだろう。柊二が周りの店を見回していると装飾品店が目についた。
「そうだ。リサ、ここで少し待っててくれ」
「え!何処に行くんですか!」
「すぐ戻るから」
柊二はリサを置いてその店に駆け込んで行った。
十数分後
「むぅ、遅い...」
ずっと立っているのも疲れるのでリサは近くのベンチに座って、柊二を待つ事にした。
「悪い、待たせたか?」
「遅いです、どこで油売っていたんですか」
「まあまあ、それは置いといて。リサ、目を瞑ってくれないか」
「――分かりました」
リサが目を瞑るのを確認すると、柊二は後ろに回り、徐ろに袋から取り出したものをリサに付ける。
「よし。目、開けていいぞ」
「何したんですか――これ!」
リサが体を動かすと胸の辺りに違和感があった。見るとそこには魔石が組み込まれた十字のネックレスが輝いている。
「いつも世話になってるからな。俺なりの感謝の気持ち、受け取ってくれないか」
「勿論、喜んで頂きます。えへへ〜」
初めてのプレゼントを手にし、まるで可愛い人形を貰った時の少女の様に喜んだ。柊二もリサの笑顔に乗せられて、自然と笑みが出てきた。
「そんなもので良ければいつでも買ってやるけど」
「いえ、これがいいんです。初めてトージ様から頂いたこれが」
キラキラの輝く魔石をずっと眺めている。それ程までに気に入ってくれたのかと、柊二は嬉しかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「トージ様、少しの間此処で待っていてください」
「ん、分かった」
「来たかったら付いてきてもいいんですよ」
「いや、俺が行ったらビックリするだろうし」
柊二は長椅子に座ってそう答える。返事を聞くとリサはそのまま奥の扉を開けて外へ出ていった。
「しっかし、どこに行くのかと思えば孤児院とは」
現在、柊二がいる場所は街の端の方に位置する教会だった。この教会の裏には小さな孤児院があり、リサは良くここに来ては子供達と遊んでいるらしい。
『村にいた時もそうだったが、リサって子供受け良いしな』
などと考えながら祭壇にある石像を眺めていた。すると、何かに気がついたのか立ち上がった柊二は、石像の前へ歩み寄った。
「これ、レミア像か」
美しく彫られた石像は形こそ違うものだが、村で見た像と顔は同じものだった。
「それは、一番初めの原型を留めた石像なんですよ」
「――?」
横から近づいてくる足音の方を向くと、こちらに向かって歩いてくる1人の女性がいた。
「私はここの修道女のノエルと申します」
「初めまして、天斬柊二と申します」
「アマギリトージ様...どこかでお会いしたことが?」
「?いえ、初めてだと思いますが」
「ごめんなさい、何故だか初めて会ったような気がしなくて...」
自分の勘違いだったのか少し頬を赤らめて俯いてしまう。
「いえ、私も...その...」
「ノエルでいいですよ」
「ノエルさんをどこかで見たような気がして」
先程からノエルの顔をじっと見詰めては、どこかで見た事あるような違和感がある。
「あの...そんなに見詰められると...」
「あ、すみません。しかし――、思い出した!広場の像、ノエルさんにそっくりだったと思います」
教会に向かう途中、リサと広場を通った時に広場中央に銅像が建っていた。リサに銅像の事を聞いた訳でもなかったので、誰がモデルなのかまで知らなかった。
「けど、誰なのかまでは知らなくて...」
「あれは初代陛下 シルフ様の像ですよ」
「そうだったんですか。どことなく似ているというよりは、双子みたいに瓜二つですね」
「そのせいで色々な人から【シルフ陛下の生まれ変わり】だと言われ、国中大騒ぎになった事もありましたね」
苦い思い出なのかノエルの苦笑に柊二は彼女の今までの苦労を知った。
「...俺にはノエルさんの苦労を引き受ける事は出来ませんが――、ノエルさんはノエルさんです。例え、顔立ちがシルフ様と似ていても貴女の人生である事に代わりはありませんよ」
柊二の精一杯のフォローにノエルは僅かに安心した。
『この人は他の人とは違う何かを持っている...それに私の事を真剣に捉えてくれる人なんて初めて...不思議な人』
安心感で落ち着く心の何処かに、それとは別の何かがある事に気がつくのはもう少し先の話。
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「こんにちは、ノエルさん」
「はい、こんにちは。今日はお仕事ですか」
仕事が終わり、午後をブラブラと散歩をして時間潰しをしていた柊二は孤児院に遊びに来ていた。
「ええ、先程まで殿下の傍に居たのですが急な呼び出しとかで。午後の任務は無くなってしまって...」
「そうだったんですね、そちらは?」
ノエルが柊二の抱える紙袋に興味を示す。両手で抱えられた紙袋からは甘くていい香りが漂ってくる。
「これですか、さっき商業区を歩いていたらパン屋の方がサービスでくれたんです。新作の甘いパンらしくて、大量に作ったから持って行けと。ですから、子供達にと思って」
「まぁ!ありがとうございます、どうぞ入って下さい」
「ありがとうございます。勿論、ノエルさんの分もありますので」
「わ、私は大丈夫ですから子供達に――」
ノエルは自分の事はいいと言ったものの、お腹は正直のようで可愛らしい音が鳴り、柊二は笑ってしまった。
「はは、可愛らしい音ですね」
「うぅ、言わないでくださいよ」
柊二は笑い、ノエルは恥ずかしがりながら、2人は並んで孤児院へ向かって行った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「俺、おっきくなったらオルテア様になる!」
「僕もー」
「おー、2人とも頑張れ。あと、俺はオルテアじゃないからね」
食後に柊二は子供達と遊んでいた。姿は鎧のままだが、武器は危ないので子供達の手に届かない場所に置いておいた。
「アマギリ君は今や子供達の中で知らない子はいないほど、人気ですよ。「オルテア様が来た!」って」
「俺だって望んでこんな格好してる訳じゃないんですよ...」
女の子と遊んでいるノエルが項垂れる柊二に笑って話しかける。
「貴方が最初に私に行ってくれたじゃないですか。私は私だって。なら、アマギリ君はアマギリ君です」
「確かにそう言いましたけど――」
柊二がノエルの横に立って二人して話をしていると、ノエルと遊んでいた女の子がじっと2人を見詰めていた。
「...?どうかしたの?」
「先生とオルテア様は結婚するの?」
「「え?」」
少女の思わぬ発言に2人は呆気にとられた。尚も少女は話を続ける。
「先生とオルテア様、いっつも仲良し。二人きりの時もいっぱいあるから、結婚するの?」
少女の中では男女が二人きりでいると結婚する、そう考えているのだろう。
「け、結婚しないよ」
「どうして?先生はオルテア様嫌い?」
「き、嫌いじゃない...けど///」
「オルテア様は?先生の事、好き?」
そわそわとしているノエルと目が合ってしまった柊二は、かなり酷な質問に頭を悩ませていた。
柊二自身、ノエルに好感を持っていたがそれはあくまでも知人としてのもので、好きと答えなければ哀しませてしまう事になると、焦っていた。
「お、俺は――」
次の言葉を話すその刹那、教会の方から凄い音と光が孤児院に届いた。
「みんな大丈夫?!」
ただの音と光だけだったので幸いにも子供達はパニック症状を起こしていなかった。
「さっきのは何だったのでしょうか」
「俺が見てきます、ノエルさんは子供達とここにいて下さい」
タンスの上に置いていた刀を腰に差すと急いで教会に向かった。
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「なんだこれ?」
教会の祭壇前、宙に浮いた円が佇んでいた。良く見ると文字が書かれているようだが柊二は読めない。
「これがさっきの元凶なのか、変わった円だが――」
横から眺めようと円に近づいた途端、再び円から光が放たれる。光が収まったその場に柊二の姿は見当たらなかった。
ただ、柊二のいた場所には無数の光の珠がレミア像の足元へ消えていっただけだった。
今後とも今作をよろしくお願いします。
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