25話:騎士の誓い
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「この度の問題の解決、誠に感謝するぞ」
「お褒めに頂き光栄であります、国王陛下」
隣町の国を揺るがす程の問題を見事解決した柊二は、皇国に戻るや否やそのまま城へと招かれた。
謁見の間と捉えられる場所で国の重鎮や大臣が周りを囲む中に柊二は国王の前で膝をついていた。しかし、これが初めてなので些か不格好な形だが、気にする事はないだろう。
「さて、今回の件で貴殿には名誉勲章を授けよう」
「いえ、この度は私が問題を招いたと言っても良いでしょう。そんな私がこの賞を受け取るのは、恐れ多い事です」
「だが、結果的に貴殿は国を守り、娘も護ってくれた。これ以上に無い働きだと思うが?」
「・・・お言葉、感謝致します。喜んでお受けしましょう」
「では再び。貴殿 アマギリ トージ殿に我が国から名誉勲章を授けよう」
こうして、隣町での騒動は幕を下ろしたのだった。
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「ただいま〜遅くなって悪かったな。リサ、いないのか?」
久々の帰宅をするも、いつもニコニコ明るいリサの返事が返って来ない。ホールに怖い程の静寂が走り、いつもと変わらないが返事が無いのに疑心を抱いた。
荷物を抱えたまま、2階へと続く階段を上り、リサの部屋の前で足を止める。荷物の中から袋を一つ掴むと、扉を3度ノックした。
「リサ、いるのか?入るぞ、――真っ暗だな」
リサの部屋は電気がついておらず、扉横にあったボタンを押す。すると天井についていた球体が部屋を明るく照らし出した。
「なんだこれ、手紙?」
机の上に封を閉じて、重ねられた手紙が何枚、何十枚と置いてある。裏を見るに宛先が書いてあるようだが、未だ柊二は読めなかった。
「ん?今声がしたような...」
振り返るが誰もいない。気のせいかと思い、部屋を出ていこうとするが再び声が聞こえた。
「やっぱり、気のせいじゃないよな」
声のする方へ向かうとベッドの上ではなく、横に丸まった毛布が転がっていた。柊二は恐る恐る毛布を掴みあげると、そこには頭を抱えて丸くなっていたリサがいた。
「リサ、大丈夫か!しっかりしろ!」
「トー...ジ様?」
「そうだ俺だよ、柊二だ。こんな所で何しt「トージ様ぁ!!」
こんな所で蹲っているのに呆気にとられ、肩を落とした柊二目掛けてリサが勢い良く飛びついた。泣きついている訳でもなく、只々柊二の存在を確かめるかのように強く抱き締めたのだった。
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「全くもぉ、トージ様ったら手紙の一つも寄越さないで!帰りが遅くなるならなるで連絡の一つも入れてくださいよ!」
「ごめんなさい...」
現在、城内にて晩餐会。名誉勲章を受け取る時点で話は進んでおり、陛下からの招待も受け取っていた。勿論、リサも参加出来るとの事で、二人で来ていた。
晩餐会中に説教が入るのはやめて欲しいものだが。
「私がどれだけ心配したのかわかりますか?!」
「わからないです...」
「無論、トージ様に何か問題が起きてもこれまで通り解決するとは思っていますが、あの問題だけは解決出来なさそうですし」
「あの問題?なんだ、あの問題って?」
「いえ、なんでもないです」
思わず口が滑り、墓穴をほってしまうところ一歩手前でリサは抑えることが出来た。
『言えない。柊二様とアリシア様の距離が縮まるかもとか、それに嫉妬していたとか、あんな事やこんな事までしてしまうのではないかと、被害妄想で頭を抱えて丸くなっていたなんて...」
「リサ、声に出てるぞ?」
「ひゃあ!?...どの辺からですか?」
「言えない。からかな」
「最初っからじゃないですか!忘れてください〜!」
「えぇ〜、どうするかな〜」
顔を真っ赤にして慌てるリサを肴に、柊二はニヤニヤしながらジュースを飲んでいた。そこへ鎧を着けたアリシアが近づいてきた。
「あら、私の名前が聞こえたのだけれど何か御用かしら?」
「アリシアさん、今日はドレスじゃないんですね」
「今日は任務だもの。貴方は参加者、私は近衛として仕事よ。所で私の名前が出た事を教えてもらえるかしら」
「実は今日帰ったらリサが毛布に丸まっていたんですよ。その理由がアリシアさんと俺の距離が縮まるとか、被害妄想で頭を抱えてたとかで。そんな事ないのに、笑っちゃいますよね」
「ちょっとトージ様!言わないで下さいよ〜」
「あら、実際そんな事あったじゃない。こうやって...」
「ちょ、ちょっとアリシアさん何を!?」
アリシアは柊二の後ろにまわるとガッシリと腰に手を回した。
「前は鎧なんて着てなかったのだけれど。あの時、貴方は「アリシアさんの柔らかい胸が当たって最高!あー、我慢出来ない」と言っていたわね」
「そんな事微塵も言っていませんて!」
先程までの攻勢な柊二はアリシアによって慌てふためく。傍から見てイチャついている様にしか見えない光景を、柊二の気付かぬうちにアリシアはリサに見せつける。
「ア、アリシア様にトージ様は渡しません!」
「あら、既に私のものよ?」
「リサもアリシアさんも落ち着いてくれ...」
柊二がいる所に有名人やそれ相応の人が集まる。これもある種、彼の一つの特徴なのだろう。
「両手に花とは、アマギリ殿も隅におけませんな」
「陛下もですか?!」
突然として現れたディーンは女性2人の味方をするかのように話に割って入ってきた。
「失礼ながら御二方、少々彼をお借りしてもよろしいかな?少々、話があるものでな」
「陛下の話となれば...」
「助かる、ではこっちへ」
話し方、声のトーンからして深刻な話や頼みでは無さそうだが、と内心思いながら柊二はその場を離れた。
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「それで陛下、私に話とは一体...?」
「単刀直入に言う、やはり近衛騎士にならんか」
ベランダで男2人街の光を眺めながら飲み物を手に話をしている。この間の件といい、ディーンは柊二の誠実さと剣の腕に強い信頼を得ていた。
前々から話に出ていた柊二の騎士団入団を強く推していたが、やはり彼はこの国に必要なのだと気づき、踏み込んだのだ。
「前にも言ったが入るも入らないも貴殿の自由だ。無論、選択を無理強いさせるつもりは無い。今この場で貴殿の答えを聞きたい」
『陛下はそれほどまでに俺の力を買ってくれるのか...確かに職としては申し分無ない。だけど――』
柊二も最初は悪くない話だと思っていた。
「...こんな私の力をそれほどまでに買っていただけて光栄です」
「では――「ですが、その提案には身を引かせて頂きます」
今はそれ以上に大切なものが出来たのだ。だから、もしまた入団の話があるのだったら断るつもりでいた。
「そうか、私は返事が聞きたかっただけだ。理由は聞かないでおこう」
「ありがとうございます、陛下」
「だが、その気になったらいつでも入ってくれて構わないぞ。さて、話は終わりだ。今にでも頬が破裂してしまいそうな彼女の元に戻るといい」
「彼女...とは?」
ディーンが笑って指さす方向には、こちらを見ながら頬を膨らませるリサがガラス越しに立っていた。アリシアというと、柊二がディーンに連れていかれてから自分の警備位置に戻ったが、明らかにこちらをチラチラと見ていた。
「リサのやつ何やってるんだか...、それでは陛下、お言葉に甘えて戻らせていただきます」
ディーンに一礼をすると急ぎ足でベランダとホールの出入口へと駆けていくのだった。
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「はぁ〜...」
皆が食事を楽しむ中、1人心苦しそうに溜息を吐いていたフレイヤ。彼女は今、一つの決断をしようと考えていた。
『私は何故こんなにも心が痛いのでしょう...アマギリ様に私の騎士になって欲しいと伝えるだけなのに』
フレイヤの胸の痛みは、柊二に対する自分の不甲斐なさから来るものだった。幾度となく柊二に支えられたフレイヤは、彼の優しさに触れ、淡よくば直属の騎士になって欲しいと伝えるつもりだった。
『断られる事が怖い...もう1度、彼の優しさに触れたい。でも――』
彼女の中で煮え切らない思いと感情が複雑に絡まり合う。
『シルフ様もこんなお気持ちだったのかしら...』
フレイヤは大戦で活躍した2人の人物が大好きだった。幼き頃から聞かされたこの物語は、童話にもなった位だ。今の彼女は童話の主人公の1人、シルフと自分を重ね合わせていた。
『オルテア様はいなくなられたけれど、アマギリ様は今この場にいます。それなら、伝えなければ...』
「良し。アマギリ様、少々お時間を頂けますか?」
伝えようこの気持ち、この想い。私は貴方と一緒に居たいと。貴方に支えられた分、次は私が返したいと。
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「殿下、お話とは何でしょうか?」
「そ、それよりもお茶はいかがですか、いい茶葉があるんです」
「いえ、お構いなく」
「そ、そうですか...立ってするのも何ですし椅子に座りませんか?」
「それではお言葉に甘えて」
フレイヤと柊二は互いに向き合う様に椅子に座った。椅子に座ると急に鼓動が激しくなる。
「それで、お話とは何でしょうか?」
フレイヤは1度深呼吸をすると意を決して想いを伝えた。
「アマギリ様、どうか私の騎士になって頂けませんか?」
「・・・・・・」
柊二はフレイヤの言葉を聞くと何かを考えるかのように黙ってしまった。
私は伝えたい事を伝えた。例え、これがどのような結果になっても、私は受け入れるつもりだった。
暫く黙っていた柊二は口を開き、
「...すみません」
と否定の言葉を静かに伝えた。
「――っ。いえ、私の方こそご無礼を...」
「殿下、失礼します」
柊二はそう伝えると椅子から立ち上がり、部屋を出ていってしまった。
「...分かっていても、――グスッ。悲しい...ものですね」
フレイヤは決して大声では泣かなかった。一国の皇女が泣いてしまえば大事になりかねない。広い部屋に静かに啜り声が響くのだった。
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彼がいなくなってからどれくらい経つだろう。今は涙は乾き、ただ呆然と窓から夜空を眺めていた。
「騎士と姫は結ばれないものなのですね...」
フレイヤの心には小さな穴が空いたように虚心だった。そんな彼女がいる部屋に3度のノックが響き渡る。
「どうぞ、開いております」
あからさまな暗い返事を答える。メイドか係員かと思っていた彼女だが、部屋に入ってきた人物に驚いた。
「アマギリ...様?」
「失礼します、殿下」
柊二の入室は思ってもみなかった。
「どうかなされました?」
「ええ、ちょっと忘れ物です」
「忘れ物...ですか。アマギリ様は何も置いてしまわれてないと思いますが――」
柊二は忘れ物をしたと言うが、彼が最初にこの部屋へ来てから何も忘れてはいなかった。フレイヤは不思議そうに尋ねる。
「いえ、忘れてしまった事が一つだけ。」
柊二は一度帰ったのか、最初に持っていなかった袋から日本刀と鎧を取り出すと、その場で鎧を着始めた。
「ア、アマギリ様、一体何を?」
「これで良し。殿下、これが私の忘れ物です。」
柊二はその場で片膝をつき、頭を垂れる。そして日本刀をフレイヤに差し出す様に持ち上げた。
「聖メルセリア皇国 皇女 フレイヤ・フォト・メルセリア様。私を貴女様の騎士としてお仕えさせて下さい」
「――え?」
もう何が何だかわからなかった。先程、私の頼みを断った彼が今こうして忠誠の誓を立てようとしているのだから。
「もう1度お尋ねします。私を貴女様の「ちょ、ちょっとお待ち下さい!」
「何でしょうか?」
「あ、貴方様は先程、私の誓を断った筈では無いですか!」
そう、柊二は1度フレイヤの誓を断った。だが、柊二は再び戻ってきた。鎧と刀を持ってきて。今度は自らそれを願った。
「殿下、何も私はすみませんとは言いましたが、断りますとは言っていませんが?」
「――っ!・・・なんて意地悪な方なんでしょう」
フレイヤは泣いていた。それは、声を出す程の悲しみではなく、寧ろ嬉しくて涙を流したのだ。
「それに、晩餐会の恰好で神聖な誓を立てるのはどうかと」
「ふふ、それもそうですね」
「では、殿下。今1度」
フレイヤは柊二が差し出した日本刀を受け取り鞘から抜いた。柊二が決して抜くことが出来ない刀をいとも簡単に。
「汝、アマギリ トージに問います。汝、現刻をもって、フレイヤ・フォト・メルセリアに忠誠を誓いますか」
「たとえ我が身が滅びようとも、この体とその剣は我が主 フレイヤ様のものであります。この命朽ちるまで、フレイヤ様の為に尽くす事を誓います」
「ならば、これより汝を我が騎士として認めましょう」
堅苦しい誓いの言葉を一通り終えると、次にフレイヤ自身の言葉が出てきた。
「ただ一つ約束して下さい。絶対に独りにしないって、約束して下さい」
柊二が鞘に収めた日本刀を受け取り立ち上がると、フレイヤは柊二を抱きしめた。
「約束します、殿下を独りになんて致しません。私がいつも傍にいて、貴女様の御守りします」
思いに応えるように柊二もフレイヤをしっかりと抱きしめる。
そして、彼女の好きな物語の台詞を、
「俺が君を守ってやる。それが騎士として、男としてのやるべき事だから」
そう笑顔でフレイヤに伝えた。
『アマギリ様はオルテア様じゃない。アマギリ様はアマギリ様で私が最も信用している、私の大好きな騎士なんだ』
晩餐会を楽しむホールと正反対のこっちの部屋では、美しい夜空が見える窓際で、静かな時間が流れていたのだった。
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