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2nd Life:異世界で英雄になった剣士  作者: 太古
第1章:2度目の人生
15/42

15話:剣士の龍脈

目覚める場所は決まってこの部屋。この世界で何度も寝起きを繰り返した借り部屋で、今回【も】意識がなくなって目が覚める。


「また気絶したのか...、ーー情けないなぁ、俺」


体を起こすや否や遠目で窓越しに外を見て溜息を吐く。元の世界で少しは(身体を)鍛えてきたつもりだったが、気絶しない為の訓練なんかしなかった。


(爺ちゃんも「精神を鍛えないければ強くなれん!」とか言ってた気がするなぁ)


己の精神力の弱さに落胆していたが、祖父の言葉を思い出して、家族や友人達の事を考える。


(爺ちゃんに遥香、吉田や中川さん、皆元気にしてるかな...)


ギラギラと光る太陽に手を翳して目を細めた。あの世界へ帰る方法は見つからない、なら見つかるまでこの世界で生きて行こう。何年、何十年掛かろうともみんなの元に帰ってみせる...。


その事を深く思い心にしまう。今は精一杯この世界で生き抜く事を目標として、頑張ろう。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

未だ痛みの残る体を起こしてリビングへ向かう。そこには老婆1人が椅子に座って本を読んでいた。


「お婆さん、おはようございます」

「ああ、お目覚めですか。おはようございます」


柊二に気が付いた老婆は、読んでいた本を閉じ、杖を着いて柊二の元に近づく。柊二に近寄るとそっと手を伸ばして、服の上から柊二の体に触れる。


一瞬、ビクッと警戒した柊二だったが、


「ふむ、もう傷は塞がったようですね」


老婆の言葉にホッとする。だがそれ以外に、触れただけで傷の具合が分かる老婆に興味を持つ。


「お婆さんは触れただけで傷が分かるんですか?」

「私はリサの祖母、あの娘が龍巫女なら私も龍脈があるのですよ」


そう言って老婆は袖を捲って右腕を見せる。そこには黄緑に光る3本線があった。


「龍脈とは、選ばれた人が龍と繋がる、言わば回路の様なものです。繋がった人は龍と一つとなり、龍の持つ力を授かるのです。彼等の能力は個々に違うものです。私のは治癒型なので傷の確認、治癒等が使えます」


また一つ、この世界の知識を学ぶ事が出来た。まだまだ分からない事も多いが少しずつ学んでいけば良い。そう思うことが出来た柊二だった。


「では、私は外へ行きます。ファル様はどうなされます?」

「私は村のために何かできる事をしてきます」

「余り無理はなさらずにお願いしますよ?」


老婆と一緒に話しながら家を出る。老婆は村が良く見える高台へと向かった。柊二は寝てばかりだと体が鈍ってしまうので、出来れば無理の無い肉体労働がしたい所だ。


「おっ、ファル様。昨日は大変だったんですぜ?いきなりぶっ倒れるもんだから大騒ぎで」


柊二より少し下の青年は昨日の一部始終を話す。

「そうか、それは悪かったな。所でソレは?」


青年の手には見たことも無い石とくわが握られている。


「そうか、ファル様は異世界から来るんでしたね。これは魔石ですよ。魔術には勿論、労働力にも成るんです。で、これが鍬なんですが此処にこうやって...」


青年が鍬の持ち手に空いた穴に魔石をはめ込むと鍬が少し光を放つ。


「はい、これ持ってみてくださいよ」


柊二は青年から無理矢理鍬を手渡された。すると妙に軽くて持ちやすい感じがする。1度祖父の作る畑仕事をした(させられた)事があったがあの時持った鍬はもう少し重かった。


「魔石をはめ込む事で良い点がプラスされるんですよ。では、俺は親父の手伝いがあるのでこれで」


鍬を返してもらった青年は畑に向かおうとする。が、柊二が止めた。


「なあ、俺も手伝っていいか?体が鈍りそうでさ」

「えっ、マジっすか!?よっしゃ、負担が減るぜ」

「...声に出てるぞ」


労働源が見つかったのはいいが、青年の横で柊二は呆れた顔をした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「悪いな、手伝ってもらっちまって。うちのせがれが迷惑かけてすまなかった。」


畑を耕したり農作物の収穫と運搬など、それなりの力仕事を済ませた後、青年の親父さんから礼を言われてた。


「いえ、俺にとってもいい運動になりました」

「手伝ってくれた礼だ、少しだが謝礼として受け取ってくれ」


男はそう言うと柊二に小さな銀貨袋と青年の持っていた魔石を2個渡した。


「こんなに受け取れないですよ」

「いや受け取ってくれ。俺の気持ちだよ」


断る柊二にグイグイと進める男。余りにも強い押しに柊二は心が折られ、


「...すみません、頂きます」

「そうそう、人の礼は素直に受け取っておかねぇとな」


男は笑いながら柊二の肩を2、3度叩く。動けるとはいえまだ痛みが残る体に衝撃を受け、痛みを感じるが口には出さなかった。


「では、俺はこの辺で」

「おう、助かったぜ。仕事するなら今日と言わず毎日でも来て欲しいぐらいだからな」

「ファル様、また明日」

「またな」


別れの挨拶を済まし、家へと向かう。途中でリサに会い、柊二は今日の出来事をリサに話しながら帰った。魔石の存在、畑仕事をした事、青年が仕事中に足を滑らせて盛られた腐葉土に突っ込んだ事、たわいも無い話しを柊二がし、その話をクスクスと笑って聞くリサ。


夕焼けに照らされて歩く2人は、知らぬ人から見れば長年連れ添ってきた関係に見える事だろう。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ご馳走様」

「お粗末さまでした」


家に帰った後、リサは晩御飯を作り始めた。柊二は老婆に傷を見てもらい、まだ治ってない傷を治療してもらった。今は晩御飯を済ませた所である。


ふと、老婆が読んでいる本が目に入った。柊二はある事を考えた。


(そう言えば、この世界に来て1度も【文字】を見てない気がするな)


そう、この世界の共通言語は日本語に近いものであるため通じるが、文字を1度見た事が無かった。そこで柊二は老婆に自分が読めそうな本が無いか聞いてみた。


「これなんてどうですか?」

「どれどれ...」


そう言って差し出された1冊の本。その表紙には見たことも無い文字で題名が書かれており、1匹の龍と1人の男が剣を持って挑んでいる絵が描かれていた。


「これは?」

「この本は古くから神話の1つをつづった本でございます。遥か昔、平和な世に1匹の龍が現れ、その龍により世界は滅びの道を進む事になるのです。そんな希望もない世界にある日突然として1人の若者が現れるのです。若者は神から託された力で邪悪なる龍を封印する事に成功、世界はまた平和になる。という内容でございます」


老婆の長い説明ネタバレを聞いて、読む気が失せそうになるも字の勉強には良さそうな内容だったので借りる事にした。


「あれ?お婆ちゃん、その本って...」

「良いんだよ、本は読まれてこそ意味があるのだから」


老婆はニコニコとした笑顔で部屋に戻る柊二の背中を見つめた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

早速、老婆に借りた本を要らない紙に書き写す。この本は各ページの半分上に絵が書いてあるので、それ程長い文章では無かった。2ページ程書き写すとすぐさま解読に取り掛かる。


「......」


無言で文字を眺める柊二。その表情は至って真剣そのもので、周りの事は気にもならない、そんなオーラがあった。


暫く文章を眺めていた柊二は、ある事に気付いた。


「......ハッ!文字読めないのに解読なんて出来る訳ねえじゃん!」


柊二は立ち上がって叫ぶ。文章を睨んで数分は経っただろう、今更になって気付いたのだ。


「あぁー、俺ってたまに抜けてるよなぁ」


再び椅子に座って天井を仰ぐ。そこへリサが部屋にやってきた。


「どうかしましたか!?まさか、何か不備でも...」


慌ててる来たリサはオロオロと慌てふためく。そんな彼女に柊二は事情を説明した。


「成程、そういう事だったんですね」

「自分の抜けてる所がよく分かったよ」


柊二は笑いながらリサに答える。するとリサは何かを考え始め、何を思ったのか一人頷いた。


「それでしたら、私がお教えしましょうか?」

「気持ちは嬉しいですが、これ以上巫女さんの仕事は増やせないですよ」


リサの申し出に嬉しくも思うが、この家にいる以上何か出来る訳でもないので全ての家事がリサに任されるため、これ以上負担も増やしたくない気持ちでいっぱいだった。


「そんな事ないですよ。私、教えるの得意ですから」


リサは胸に手を当てて胸を張る。彼女自身は何気なくとった行動だったが柊二は顔を赤らめ背けた。


「いや、でもですね...」


柊二は何かと理由を付けて断ろうとするが、

「お・し・え・ま・す!良いですよね?」

「...はい」


柊二はリサの迫力に負けた。こうしてリサ先生のもと、柊二は字の勉強が始まる事が決まった。


「あ、それと私の事はリサと呼んでください。いつまでも巫女さんと呼ばれるのは、何だか他人行儀みたいです。堅苦しい話し方も無しで」


(確かに他人では無いのだから名前で呼ばないのもおかしい気がしなくもないけど...。)


「そうだ、試しに呼んでくださいよ」

「え、えっと...リサ、さん?」

「違いますぅ、リサって呼んでください」

「...リサ」


恥ずかしい気持ちを抑え込んで柊二は彼女の名前を呼ぶ。女の子を下の名前で呼んだ事の無い柊二には、相当勇気がいるものだった。


「......」


言わせた肝心の彼女はポーッと柊二を眺めているが無言の反応で、それがかえって柊二を焦らせた。


「おーい、リサー?」

「...はっ!すみませんふけっていました。何だか嬉しい様な恥ずかしい様な」エヘヘ


両手で頬を押さえてニヤけ顔を正そうとするも、なかなか戻らない。彼女としては運良くその顔は柊二には見られなかった。


「そうだ、私もファル様の名前が知りたいです」

「言ってなかったな、俺は天斬 柊二」

「アマ...ギリ、トージですか?不思議なお名前ですね」

「うーん、間違ってはないんだけど...、ーーそれでいいよ」


外国人には日本人の母音と重なる名前は難しいと聞いたことがあった。別の例としたら爺ちゃんは善十郎だから善十郎ぜんじゅーろーとなる訳だ。


「はい、これからよろしくお願いしますね。トージ様」

「...どうして様を付けるの?」

「?トージ様はトージ様ですよ?」


変な事を言うのですね、と言わんばかりの首傾げに柊二も言い返すを辞めた。


こうして初めての自己紹介は成功(?)として終わった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

その後、傷が完治するまでこの村に留まることに決め、運動や仕事後、夜はリサに勉強を教えてもらう事2日。3日目の今日の夜、明日あたり傷が治ると言われた柊二は、久しぶりの素振りをしに行った。


素振り後、いつもの様に勉強を教えて貰っている。まだまだ先は長いが簡単な名詞位は読める様になった。


「ココもココもあってます。こんなにが早いなんて凄いですトージ様」

「リサの教え方が上手いからだと思うよ」

「エヘヘ〜、そうですか〜?」


褒められて喜ぶリサ。いつもはしっかり者だが、最近は柊二と二人になると子供のようになる事が多い。


「この調子ならこの本もスラスラ読める様になるかもしれないですね」

「ならもっと頑張らないとな」

「はい、頑張りましょう」


気合いを入れ直して再びペンを取る。袖をたくし上げて文章と向き合う。柊二が書き始めようとペン先を紙に乗せる。と同時に、リサの目にあるものが飛び込んで来た。


「あぁーー!!」


いきなりの大声に驚き、柊二のペン先は紙に大きくを描いた。


「そんな大声出してどうしたんだ...」

「どうしたもこうしたもありません!何であるんですか!?」

「あるって何が?」

「コレですよコレ!」


そう言ってリサは肌が晒された右腕を指差していた。どうやら【これ】に驚いていたらしい。


「何だこれ?」


今の今まで気が付かなかった右腕の引っ掻き傷のような3本線を擦る柊二。その3本線をみて慌てたリサは老婆の元へ駆けて行った。


暫くすると、老婆を支えてリサが戻ってくる。老婆は柊二の3本線を見るや否や「うん」と答えた。


「こりゃ、間違いなく龍脈だね」

「やっぱり!」


(そういえば前にお婆さんが龍脈について言っていたがこいつの事か...、ーー何で俺にあるんだ?)


柊二は線を擦りながら原因を考えてみたが、何一つとして記憶にない。


「しかし、こんな色は見たことないよ。5属の中のどの色にも属してないなんて」

「私のは青色だけど...、ーートージ様は赤黒い...」


リサも自分の龍脈を確認する為に自分の袖を捲ってみた。そこにはあるはずの龍脈が綺麗な肌に変わっていた。


「ない!お婆ちゃん、私の龍脈が無いよ!」


彼女は自分の腕を老婆に見せた。老婆は目を見開くようにその腕を見たが、目の悪い老婆にも3本線がない事が見えた。


そこで老婆はある仮定を立てた。

「私が思うに、リサの龍脈がファル様に乗り移ったんじゃないのかねぇ」


冷静な話し方で老婆は説明するが、リサは落ち着かない。柊二も不思議そうに腕の線を眺めている。


「私にも、よう分からん。こんな事、龍巫女の一族初の事だからねぇ」

「俺は一体どうなるんですかね?」

「さぁ、ただ皇国の王宮には龍脈の研究者がいるって話だから、その人に聞けば何か分かるかもしれないよ」


この村を治めており、ここからそう遠くない場所にある【聖メルセリア皇国】に研究者がいるという。


「この龍脈は本来、俺が持つ物じゃ無い。なら元の持ち主に返す事が正しい事なんだと思う」


柊二は老婆とリサに向けて言う。


「俺は皇国に行きます」


右腕に突然現れた龍脈をどうにかするためには皇国へ行って研究者に合うしかない。もしかすれば、俺がこの世界に来た理由も分かるかもしれない。



自分が来た理由と龍脈について知る為に、剣士は皇国へと向かう決意をした。

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