1話:目覚め
...酷い頭痛がする。眼は開かないし全身が石のように重く動かない。
「・・・!」
誰かが何か叫んでいる。
「・・・うじ!」
声が少しずつ聞こえてくる。多分俺の知らない少女が近くで叫んでいるのだろう。
叫んでいる少女の声がやけに近くで聞こえる。少しずつだが、視界が広がってきた。
少しずつ少しずつと戻ってくる視界で見る景色の中で目の前には少女がいる。
泣いて......いるのか? 少女の瞳から大粒の涙が零れ出ている。
―――泣かないで。
俺はそっと彼女の涙を拭おうと手を伸ばす。それと同時に視界が完全に戻る。
「柊二!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
突然、大音量のベル音が部屋に木霊した。忙しなくなり続ける目覚まし時計に男の手が伸びる。
『なんだ夢か...』
男は欠伸をしながら重い体に活を入れて起こす。
男の名は、天斬柊二。地元の高校に通う2年生。部活には入っていないが家の横には代々続く武道場があり、そこで日々武道に打ち込んでいる普通の高校生である。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「そろそろ行くか」
柊二はジャージに着替え、タオルと水の入った水筒を持ち家を出る。
家から出ると外はまだ薄暗い。人の気配は無く、まるで自分だけしかいないような気がした。
「さて、準備運動しますか...」
柊二の日常は、毎朝5時に起きてトレーニングのマラソンをする所から始まる。決まったコースを走り、体を鍛えることは
持ってきたタオルで汗を拭き、水を飲みながらタイマーにセットした腕時計を見る。
町内5周を約20分。速いのか遅いのか分からないが余り気にもしない。
小休憩を挟んで柊二はそのまま道場に向かう。
ランニングの後は道場で竹刀を使い素振りをして早朝トレーニングは終わる。
道場の縁側には柊二の祖父がいた。
「おはよう、柊二」
「おはよう、爺ちゃん」
柊二の祖父、天斬善十郎はこの道場の持ち主であり天斬流剣術の創始者である。
体格はガッチリとした体で歳相応の体格に見えない。
性格は武術をやる者にしては珍しく陽気な感じだと見れる。
ちなみに、御年で98歳になる。
「今日も朝から稽古か」
「そうだよ、爺ちゃんは何しにここへ?」
「ちと、散歩にな」
爺ちゃんの返事を聞いた後、俺は竹刀を手に持ち、気を落ち着かせる。
「ところで柊二」
「なんだい?」
瞑想の途中で善十朗が柊二に声をかける。
「久々に儂と剣を交えんか?」
何の予告もなく善十郎は、模擬戦を挑んだ。
天斬流は、剣だけでなく槍や弓、体術等も含めた総合武術を行っている。
善十郎は、数多くの武術を極めた男として竹刀や木刀でやる試合は半端なものだと考えている為、竹刀や木刀を嫌っている。
その為、真剣(本物の刀)で勝負をする事が彼にとって当たり前なのだ。
【剣を交える】その言葉を聞いて柊二は、身を強ばらせた。
「...いや、やめておくよ」
柊二は祖父を置いてその場から立ち去った。
孫の立ち去る姿を黙って見ている祖父の姿が容易に想像出来た。
彼は天斬流武術の中では剣術を1番としており腕は祖父には劣るが全国大会個人優勝した事がある為、自信はある。
その実力をもってしても祖父と剣を交える事は出来ない。心の中で柊二は自問自答を繰り返した。
『・・・負けるのが怖いから?』
『いや、違う』
『・・・真剣でやる事に恐怖を感じるから?』
『そうじゃない』
『俺は...』
「――剣が抜けないんだ」
どうも初めまして皆様、作者の太古と申します。今作品が初の小説となり、少しの羞恥心がある中勇気を出して投稿させて頂きましたw
今後はもっと経験を積んでいき文章力を鍛えていこうと考えております。また、今作品の題名にある【2nd Life】は後々にシリーズ化をして、続作や新作を作っていこうと思います。
これからも自分と自分の作品を宜しくお願い致します。