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召喚士は今日も喚ぶ ―僕だけが読める謎の本―  作者: 黒六
2章 駆け出し冒険者編
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13.召喚せし者

バーゼル視点→アルト視点へと変わりますのでご注意ください。

 私としたことが迂闊でした。まさかここまで戦力差があるのならば、早々にアルト殿を逃がしておくべきでした。

 あの屑な冒険者はおそらく低位の闇の者と契約していたのでしょうが、今思えばこういう場面になることを想定してあのヘドンとかいう魔将に利用されていたと考えるのが妥当でしょう。


 隣を見れば支部長のダウニングが何とか立っているような状態、ほかの冒険者は皆膝をついています。やはり魔将、どこまでも規格外の存在です。私も全盛時であれば互角以上に……いや、これは考えても仕方のないことですな。


「オルディア、『もーどオルトロス』解放」


 アルト殿の声とともに、オルディアと呼ばれていた魔獣が巨大化して魔将ヘドンへと突進しましたが、かなりの衝撃だったにもかかわらず倒すまでに至っておりません。おそらくアルト殿は何らかの方法であの魔獣と契約し、その力で生き延びてきたのでしょう。しかしいかんせん契約してから間もない様子。熟練者であれば臨機応変に戦い方を変えるのでしょうが、アルト殿は好きなように行動させているようです。


 確かにあの魔獣は強いですが、それでも魔将はダメージを受けていません。炎のブレスを放つも、魔法に高い耐性を持つ一つ目巨人には有効打になっていません。このままではやがて倒されてしまうでしょう。そしてこの街も消えてなくなるのでしょうか。ニック様にまだ恩を返せていないというのに。


 ふとアルト殿を見れば、逃げるような素振りは見えません。すでに魔将にはその存在を知られています。まさか戦うつもりなのでしょうか?あの魔獣のほかに有効な手段を持っているのでしょうか。

 ですが、どこか逡巡しているようにも見受けられます。もしかすると、ご自分の力を理解していて、それを使うことへの抵抗感があるのでしょうか。


「アルト殿、力そのものに善悪はありません。その力を使う者の資質が決めるのです。ただ、迷いは心の隙を生みます。絶対に迷わないでください」


 アルト殿ならこの言葉で理解してくれるでしょう。その力を使うことに迷いがあるのなら、正しい方向に向かうことも十分期待できます。もしその力に酔っているのであれば、進んで力を行使するはず。とはいえ全ては憶測の域を出ませんが。




**********




 先生、ありがとう。おかげで僕は最後の勇気を振り絞ることができる。こんな大勢の人たちの前でアオイの力を使うのは初めてだ。この力が特異な力ということくらいは僕にも理解できる。そんな力を行使する僕が今後どうなってしまうのかが不安だった。


 だが、今後どうなるかは僕次第だ。僕の生き方は僕が決めればいい。迷わずに自分の思いを貫けばいい。そして今、僕はあの魔将を倒したいと思っている。

 僕が生き延びたいのもあるが、先生たちを見殺しにしたくないという理由も大きい。そのためにも目の前の敵を倒さなくてはならない。今この場において、それができるのはきっと僕だけだ。

 物語の勇者なら颯爽と現れて剣の一振りで倒してしまうんだろうが、僕にはそんな力は欠片もない。アオイの力を借りなきゃ何もできない僕だが、この困難を打開するための力でもあり、僕にしか使えない力だ。なら何を躊躇う必要がある。


「アオイ、あいつを倒す有効手段はある?」

【敵の情報取得中……取得しました。種族はサイクロプス、怪力と高い生命力を前面に押し出した戦い方をするようです。魔法には高い耐性を持つようで、該当個体に関しては敏捷性も高いレベルのようです。物理攻撃を中心とした方法、もしくは広範囲殲滅攻撃を選択できます】

「広範囲はまずいでしょ! となると物理攻撃しかないか」


 アオイの言葉に正直肝を冷やした。広範囲殲滅ということは、先生たちも巻き添えになるということ。今この場において最も不必要な選択肢だ。


【物理攻撃中心の戦法にて方法を検索……使用可能なものを表示します】


 空間魔法でしまっておいたアオイが目の前に現れ、勝手に開いてページが表示される。その言葉の意味はよくわからないが、今回は絶対に負けることが許されない。ならば絶対に負けないようなものをイメージする言葉を急いで探す。

 そして見つけた。この場においてこれが最適かどうかは分からない。だが、この言葉ほど『負けない』ことをイメージさせる言葉は見つからなかった。


「アオイ、これをお願い」

【了解いたしました。使用者魔力パターンをスキャン……所有者アルトと同一を確認。使用魔力供給の経路を確認……魔力減衰値ほぼ減衰なしを確認。使用準備が整いました、使用するものを詠唱してください】

「わかった」


 これから使うのは戦う力。だがそれは自分を誇示するものではない。大事な人たちを救うため、理不尽な死を余儀なく強制させられそうな人たちを守るため、そして何より自分の心が望むままに進むための力だ。

 先生やダウニングさんが僕のことを不安そうな目で見ているが、もうそんなものはどうでもよくなった。今は魔将を倒すことだけに集中する。そして僕が選択したものを詠唱した。


『ぜったいにしずまないふね』


【詠唱確認しました。情報再現率……誤差は規定範囲内を確認。縮尺補正……対象を基準に一部情報の補正値変更……了承されました。魔力変換率……減少見られず。解放時間……対象沈黙プラスアルファを設定……承認。情報をもとに再構築を開始します】


 僕の言葉にアオイが反応し、僕を中心に巨大な魔力が収束されていくのがわかる。その中心は僕の目の前、魔将と僕とのほぼ中間地点だ。収束された魔力は再び闇のようなゲートらしきものを作り出した。そして遠くから聞こえてくる地響きのようなもの。

 やがてそれは顕現した。僕のまったく想像していなかった姿で。

さていったいどんなものが召喚されるのでしょうかw


読んでいただいてありがとうございます。

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新作始めました。現代日本を舞台にしたローファンタジーです。片田舎で細々と農業を営む三十路男の前に現れたのは異界からの女冒険者、でもその姿は……。 よろしければ以下のリンクからどうぞ。 巨人の館へようこそ 小さな小さな来訪者
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