出会い
「ところでさあ。」
「何なの。」
「やっぱりなにかおかしくない?」
「朝も聞いたけど何いってるかわからん。」
「ほら何か静かだし暇だし空気が違うというか。」
「ごめん何いってるかわからない。」
「あーもういい早く暴れたい。」
「調整だからな壊すなよ。」
わかってるよと言いたそうにふくれる。
実際なんとなくわかる気はする。
今日は明らかに軍人が少ない。
気にする人は少ないだろうが。
傭兵くずれのゴロツキも少ない気がする。
40年も最前線に近い街のここが平和だったのだ。
気も緩んでいる。
いつどうなるかわからないのに。
何のために歴史の勉強をするのか。
軍人が少なくなるのは何回かいままでにもあった。
しかし何よりこよりが言うのだ。
こよりの勘はかなり当たる。
これが意味するところは…
まあ気のせいだろう警報も出てないし。
「お邪魔しまーす。」
「何か最近忙しいらしいから。早くいくぞ。」
工場内を通らず家へ入る。
リビングの床下に地下へ行く階段がある。
俺だけの実験場だ。
「本当意味わかんないつくりだよねー。」
ほっとけ。
「ほら、これが新作だ。」
「トンファー?」
「マメやん3号。」
「相変わらず名前から想像つかん。」
「これはなあ、持ち手についてるボタンを
強く押すと弾がでる。」
「こういう系は一発しか撃てないんでしょ。」
「なんと今回銃身を真ん中から分けて二つにした。つまり二発撃てる計四発。」
こよりが軽く振り回す。
端から見ても強そうに見える。
そして的を目掛けて二発また二発。
「無理、あたんない。」
「俺より上手いわ。」
弾をつめなおしもう一度試そうとしたその時、
「おい進いるか?」
父さんの声だ。なにやら焦っている。
「こよりもいるよ。」
「前線が突破されたらしい。避難は無理だ
ここに籠るぞ。」
「まあうちは大砲で撃たれても
壊れないだろうが、避難が無理ってどういう事?」
「もう獣人共が街に入ってきてるんだ。」
「避難警報は?」
「わからん。とにかく非常事態だわかったな。」
「OKそっちも仕事道具どうにかしなよ。」
「ねえ、進どうしたの?」
「ああ前線が突破されたらしい。
こよりも避難出来ないらしいから好きなの持て。」
俺は戦闘できる準備をしながらこよりに言う。
「え、何言ってるの?逃げようよ。」
「もう街まで入ってきてるらしい。」
「勝てるわけないよ。相手は…」
「知ってる。戦いに出るわけじゃない。
ここに籠る予定だからな。もしおかしい獣人が
一軒家に突入しようとして、もしも突入された時
身を守る為の装備だ。」
この街はそもそも全ての建物が強い作りに
なっているし、シェルターもある。
最前線の街だし当然だが特に我が家は強いらしい。
「わかった。」
明らかに怯えている。
俺が守ってやると言ってやりたいが言えない。
これは戦争だチャンバラではない。
そして相手は自分達より強い相手。
なのになぜだろう。
不思議な高揚感がわいてくる。
「こよりは取り敢えずこれつけとけ。」
俺はスピーディー99と無線を渡す。
ブーツ型の移動用具だ。
足のサイズ合わせとボタンの調整に苦労した。
「これはこより用だスピード調整は出来てないが
走るよりは速いはずだ。」
「ありがと。」
「取り敢えず上に行こう状況を確認したい。」
「父さんそっちはもういいの?」
「ああ、後は何事もなく通りすぎるのを
祈るだけだな。」
「軍はどうしてる?」
「最強の傭兵団が来てるらしい。」
「何とかしてくれるのを祈るだけか。」
「あのさ、進の部屋にいていいかな。」
「二階に?いいけどあまり顔出すなよ。
見られないと思うが一応な。」
「わかった。」
「父さん俺も上にいるよ。」
「死ぬなよ。」
「その時は一緒だ。」
こよりがベッドの中で丸まっている。
「何してるんだよ。」
「恐くないの?」
声が震えていた。
やっぱり普通の人はそう思うのか。
「恐くないよ。」
「どうして?」
「わからん。」
「…」
会話が途切れてしまった。気まずい。
俺は外を覗きながらボールをこよりに投げる。
「痛いんだけど。」
「死なないよ。」
「どうして?」
「一軒一軒家を潰してるわけじゃないのと、
家が特別なのと、最悪地下がある。」
「…」
「それに俺も父さんもいる。」
普段からこんだけしおらしくしてればと思う。
うん?あれは…
「どこ行くの進?」
「すぐ戻る。」
急いで外にでる。
「父さんごめん。」
見間違いじゃない。
確かに人が倒れていた。
近くに獣人はいなかった。
助けられる。
俺はこそこそと確認しながら進んでいく。
「おい大丈夫か?」
うつ伏せで倒れていて返事はない。
「おい起きろ。」
仰向けにする。
「おいいっ。」
思わず声に出てしまった。
なんとマントのようなものの一枚以外
何も着ていない。
取り敢えず担いで連れていく。
と、思ったがもう家には帰れない。
今来た角を曲がった少し先に獣人がいる。
シェルターに行くしかない。
クソ、動きづらい。
頼むよ神様、俺に何事もなくシェルターに
たどり着ける運をくれ。
獣人共に見つからない運を。




