7 入園式(ルイーゼ視点)
今日は、いよいよマーリゼイン王国学園の入園式。
ルイーゼは意気揚々と出かけ、入園式に望んだ。
入園式は学園内にある講堂で行われ、一学年だけでも、100人程いる。
学年は三学年ある為、その全てが入る講堂の大きさと、煌びやかさに圧倒され、そして、今日からここの一員になる事にルイーゼは鼻が高かった。
入園式が始まり、在校生代表として、生徒会長の祝辞の挨拶が始まる。
その生徒会長を見た時、ルイーゼの心は震え昂り、ドキドキが止まらなくなった。
「なんて素敵な人なの……」
そう思っているルイーゼの耳に、あちらこちらからコソコソと話す声が聞こえる。
「ルーク・スノーメル小公爵様、流石ですわ」
「いつにも増して、光り輝いて見えますわね」
「あの方が生徒会長として学園にいらっしゃるだけで、通う価値がありますもの」
「王太子殿下の覚えも宜しいようで、側近が確定していらっしゃるとか」
「あら? わたくしはお父上宰相様の跡を継がれる為に、学園にいる頃から宰相補佐をされていると耳にしましたわ」
あちらこちらで生徒会長の噂に花を咲かせ、特に女生徒は落ち着きがない。
ルイーゼも聞き耳をたてながら、目を輝かせて壇上で祝辞を述べている生徒会長であるルークを見つめていた。
「では、次に新入生の挨拶に入ります。
新入生代表の方、どうぞこちらへ」
ルークにバトンタッチをされるように呼ばれた新入生代表は、長い白銀色の髪を靡かせながら、堂々と壇上に上がってきた。
そして、その女生徒の顔にはおおきな瓶底メガネが掛けられている。
「凄い瓶底……。あんなメガネする人がお義姉様の他にもいるなんて……なんてダサいのかしら。
きっとガリ勉だから新入生代表になれたのね」
ついそう声に出して言ってしまったルイーゼに、近くに座っていた生徒達が、怪訝な顔をして、コソコソと話している。
「あの方、知らないのかしら?」
「今をときめく聖女様を知らないなんて、どこの田舎者だ?」
ん? 聖女様って何?
ルイーゼは、自分を馬鹿にしたような視線を感じ、不快になる。
壇上では、白銀髪の瓶底メガネの女生徒が堂々と立って、新入生代表の挨拶を行なっていた。
「本日は私たちのために、このような盛大な式を挙行していただき誠にありがとうございます。
伝統あるマーリゼイン王国学園の一員として、責任ある行動を心がけていきたいと思います。学園長先生を初め、諸先生方、先輩方、どうか暖かいご指導をよろしくお願いいたします。
以上をもちまして、新入生代表の挨拶とさせていただきます。
新入生代表、オリビア・モーリスト」
その挨拶に、盛大な拍手が鳴り響く。
そして挨拶が終わると、先程、在校生代表をした生徒会長であるルークが、まるでオリビアを守る騎士のように、壇上から降りるオリビアをエスコートしていた。
「まぁ! なんてお似合いのお二人なのかしら!」
「スノーメル公爵令息様は、オリビア様の傍をいつも守るようにいらっしゃるそうよ」
「あの眼鏡の下には、凄く綺麗な瞳が隠されているらしいぞ」
「力を無闇に使いすぎないように、あの眼鏡をされているとか」
他の生徒達はコソコソと話しながら、情景の眼差しで、壇上から降りる二人を見守っている。
しかしルイーゼは、他の人達のように見る事は出来なかった。
「オリビア? まさか……ね?
いや、でもあの瓶底メガネ……」
ルイーゼは、ブツブツと言いながら、新入生代表を努めたオリビアを見る。
「うん、違うわ! お義姉様とは髪の色も違うし、何より家名が違うもの!
というか、お義姉様が生きているはずもないし、他人の空似だわ!」
ルイーゼは心に一抹の不安を覚えたが、それを無視して、安易な答えに無理やり納得する。
それでも、入園式の間中、ルイーゼはオリビアから目が離せなかった。