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42 最終話


 伯爵家に入り、お母様の遺品のあるルイーゼの部屋に入った。

 殆どが捨てられていたり、壊されたりした中で、お母様のお気に入りだったピアスやネックレスを見つける。

 

 良かった。これは綺麗だからルイーゼも取っておいたのね。


 その他にも思い出の品を数点見つけ、お義兄様に持ち帰っていいかを確認した。


「元々オリビアの持ち物だったんだし、僕に許可を取る必要なんてないよ?

 だって、ここは君の領地じゃないか」


 そう言ってくれるお義兄様は、本当に優しい人だと思う。

 そして、来る時も思ったけれど、優しいと同時に、とても有能な人だ。

 次男にて侯爵家の領地を引き継ぐ事は出来なかったが、それでも商才を発揮し、シークレット商会をみるみる大きくさせた手腕を持っているお義兄様。

 私はそんなお義兄様に、あるお願いをしたくて、ここに来た事も理由の一つだった。


「ヘンリーお義兄様、お願いがあります」


 そう切り出した私は、この領地をお義兄様に譲りたいという気持ちを告げた。


「え!? だめだよ! ここはオリビアの大切な場所だろう?

 君のお母様や、代々の御先祖様が守ってきた場所じゃないか!」


 ヘンリーお義兄様ならそう言うと思った私は、それでも食い下がる。


「元々、初代ルードグラセフ伯爵は、目利きがいいからという理由で、国王陛下の代わりにここに領主として任命されたに過ぎません。

 我が一族は、そういった目利きを得意とする血筋だったようですから。

 でも、それでしたらより一層目利きが優れた人がいれば、その方が納めればいいとは思いませんか?

 ヘンリーお義兄様なら、その条件に見事に当てはまるのです。

 それに、ヘンリーお義兄様と私は兄妹ですもの。

 私からヘンリーお義兄様に領主を移行しても、なんら問題はありませんわ」


「いや……でも……」

 

 一気にそう言った私に、お義兄様は考え込んでいる。


 (あと一押しね)


 そう考えた私は、最後の決定的事項を述べた。


「そして、その事はすでに国王陛下にも承諾を頂いております」


 私のその一言に、ヘンリーお義兄様は呆れながらも笑って言う。


「それって、つまりすでに決定事項じゃないか」


「すみません、でも、どうしてもヘンリーお義兄様が嫌だと言うなら、拒否権はありますよ?」


 私のその言葉にヘンリーお義兄様が考え込む。

 そして、決心したように私を見た。


「うん、分かった。領地経営が楽しくなってきたところだったんだ。

 この領地を豊かにしてからオリビアに返そうかと思っていたけれど、だったらこれからは自分の為にも、もっと頑張ってみるよ。

 ありがとう、オリビア」


 そう言って、ヘンリーお義兄様は私の手を取り、手の甲に口付けをした。


「は!? 何やってんだ! 離せ!」


 すぐにルークが割って入って来たけれど。


 ヘンリーお義兄様なら、その先も安心してこの領地を任せられる。

 きっとお義兄様の持つ才覚を存分に発揮してくれるだろう。


「あ、ヘンリーお義兄様にも後で私の発明した車をプレゼントしますね。

 そうすれば、王都への行き来がとても楽になりますよ」


「あぁ、君達が乗ってきた乗り物だね。以前からオリビアが言っていたもの、ようやく実現出来たんだね。

 送られてくるのを楽しみに待ってるよ」


 ヘンリーお義兄様は、とても優しい笑顔でそう言ってくれた。



 数日の間、思い出のルードグラセフ伯爵家で過ごした私達は、そこを出てからも、時間が許す限り色んな場所を訪れた。

 車ならではの旅行にて、思った以上に距離が進む。


「この乗り物が普及して、いつしか馬車が車に代わる日常が訪れる日が楽しみだね」


 ルークはそう言って、車を運転している。

 伯爵家にいる間に、必死で運転をマスターしたルークは、今では素晴らしいハンドルさばきが出来ていた。

 さすがは何でもこなせる多才な持ち主だ。


「そういう日が、少しでも早く訪れればいいですね」


 そう言った私の手を、ルークは片方の手で握ってくる。


「片手運転!」


「大丈夫。オリビアを危険に晒すことはしないよ?

 あ、でももし僕が怪我をしたら、またこっそりと治してね?」


 ルークはそう言って、にっこりと笑った。

 私がまだ治癒魔法が使えるという事を、あの日からルークは黙っていてくれている。


「ルーク、ありがとう」


「なんの事?」


 とぼけた返事をしながらもルークは、運転を続ける。


 私達は、そのまま楽しく新婚旅行を続けた。


 これから先、何があってもルークが居れば私は大丈夫。


 そんな幸せを感じながら、これから先の未来に思いを馳せた。



 終わり

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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