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 馬車が学園に到着し、私たちは馬車から降りた。

 降りた途端、周囲の人たちの視線が一斉に私に向く。

 その視線には、好奇の眼差しが多分に含まれていると感じたが、私はその視線を気にしないようにしながら、しっかり前を向いて教室に向かった。

 

 もちろん、そんな私にルーク様は、そっと寄り添ってくれていた。


 


 教室につくと、クラスメイトたちが一斉に私を振り返る。


「「「「 オリビア様! 」」」」


 そして、いつも仲良くしてくれている数名の令嬢達が私の元に駆け寄って来てくれた。

 

「オリビア様! 治癒魔法を一気に使って、身体に負担がかかられたとか!

 もう大丈夫ですの!?」


「オリビア様もお怪我なさったのに、すぐに他の方々を治癒なさるなんて、ご立派ですわ!」


 そのような事を口々に言って、私の心配をしてくれた。


「ありがとうございます、皆様。

 私は何ともありません。この通り、ピンピンしておりますよ」


 にっこりと笑ってそう言った私を見て、周囲の人達は感嘆のため息を漏らした。


「本当にお美しい。この髪色も以前から素晴らしいと思っておりましたが、さらにお隠しになられていた瞳の色が顕になった事で、より一層の美しさが増していらっしゃいますわよ」


「本当ですわね。これではスノーメル小公爵様が必死でお隠しになられるのも頷けますわ。

 これぞ、独占欲の塊というものですわね」


 などと、クラスメイトの皆は口々にそう話しながら、私を気遣ってくれる。

 (ちょっと何言ってるか分からない発言もあったけど、今はスルーよね)


 私はその友人達を見て、覚悟を決める。

 今から私の話す内容を聞いて、この優しい人達はどう思うだろう?

 出自を隠していた事、皆を騙していたのかと怒るだろうか?

 親から蔑ろにされていたのは、私が不出来だったからではないのかと、厳しく問われるだろうか?

 実の家族に黙って他家の養子になっている私を、皆はどう受け止めるのだろう……。


 不安な気持ちを抱えながら、それでも私は皆に話さなければと、口を開きかけた。

 

 

「それにしても、オリビア様こそが、魔鉱山を管理するルードグラセフ領の、正統な後継者だったんですってね?」


「ええ、聞きましてよ! オリビア様の代理で伯爵についたお父上と、後妻である代理伯爵夫人とその連れ子である、あのルイーゼさんに酷い仕打ちを受けて追い出されたとか!」


「命の危険もあるくらいの怪我を負わされて、その時に聖女様の力が発現なさったなんて、オリビア様は、本当に女神様に愛されてますのね。

 皆様、そう仰ってましてよ」

 

「本当、そうですわよね! しかも王太子殿下のお命も救われたのですもの!

 そのような素晴らしい方を、虐げていただなんて、有り得ませんわ!」


「ええ! ええ! わたくしのお父様もオリビア様に病気を治して頂きましたの! ですから、この件はお父様もとても憤慨なさっていますのよ!

 聖女様に救われた方々は沢山いらっしゃいますもの。

 皆様、今の代理伯爵親子にとても怒りを感じておりますわよ!」


「それに、国の宝である、魔鉱山から採れる魔鉱石で、あこぎな商売をなさっているとも聞きましてよ?

 あの一家から離れて正解ですわよ、オリビア様」



 私が話そうとすると、遮るように口々とクラスメイト達がそう話している。


 (あれ? なんで皆知ってるの?)


「まさか……」

 

 私は、私を心配して付いてきてくれていたルーク様を振り返る。


 ルーク様は教室のドアの所で、もたれるように立ちながら、私を見て微笑んでいた。


 (そうか……ルーク様が先に皆に伝えてくれていたのね)


 どうやら、ルーク様に先手を取られたようだ。

 いつもそうだ。

 私の不安な気持ちに気付き、いつの間にかその不安を丸ごと解消してくれている。


 (いつもありがとう、ルーク様)


 私は感謝の気持ちと、心の奥に秘めたルーク様への思いを込めて、ルーク様に向かってカーテシーをした。



 

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