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「「「オリビア様!」」」


 周りの友人達が私を心配して駆け寄って来てくれる。


「大丈夫ですか!? オリビア様!

 頬から血が……」


 その言葉に私は顔を上げて、頬を確認する。


「「「「 !!!! 」」」」


 私が顔を上げた途端、友人達や周りの人達が絶句する。


 (え? そんなに血だらけなの?

 確かに痛いわね。早く治そう)


 私はすぐに治癒魔法を使って、頬の傷を治す。

 にも関わらず、無言で私を見つめている友人達に、私は不思議に思って首を傾げた。


「「「「 !!!! 」」」」


 周りが絶句したままなので、どうしようかと思った時、ルーク様の声が聞こえた。


「だから無闇に首を傾げないようにって言っただろ?

 特に今は眼鏡をしていないから……。

 ほら見ろ。皆、オリビアの美しさに見惚れて動けなくなっている」


 そう言うなりルーク様は、私を自分の元に引き寄せる。


「え? ルーク様、今は授業中じゃ?」


「凄い音が園庭でしたすぐ後で、王家の影から君の事が報告されたんだ。

 そりゃ、すっ飛んでくるだろ?」


 こんな状況なのに、相変わらず甘い空気を出してくるルーク様に、私は赤面しっぱなしだ。

 しかし、そんな時、周りの悲鳴や助けを求める声が耳に入ってきた。


「あ! そうだ! 他のみんなは無事!?」


 私は慌てて怪我をしている人達の元に駆け寄り、治癒魔法で治していく。

 怪我が治った事で、一時期混乱を期していた園庭は、ようやく落ち着きを取り戻していた。


 私は最後にルイーゼの元に行く。

 ルイーゼは、咄嗟に身を守ったようで、大した傷も負わず、錬金術を施していた時に傷つけたのか、手に少し擦過傷を負った程度であった。


「ルードグラセフ伯爵令嬢。手を見せて下さい。治療致します」


 私は座り込んでいるルイーゼの手を取り、治癒魔法を施す。

 その様子を見ながら、ルイーゼは低い声で私に言った。


「生きていたのね、お義姉様……」


 ルイーゼのその言葉に、私は無言で手を離した。


「手の怪我は治りましたわ。あとは先生方にお任せ致します」


 ルイーゼの錬金術が原因で思わぬ事故に発展し、周りに大勢の怪我人を出したのだ。

 学園側がしっかりと原因を究明し、二度とこのような事が起こらないようにしてもらわなければならない。


 そんな思いで講師達にルイーゼを託して、その場を離れようとした私を、ルイーゼは大声で叫んで呼び止めた。


「貴女、私のお義姉様でしょ!

 しらばっくれないでよ!

 オリビア・モーリスト!

 いえ、オリビア・ルードグラセフ!

 その白銀色の髪と翠碧色の目は、ルードクラセフ家の特徴を表す色だって、お父様から聞いているのよ!

 いつの間に、治癒魔法を発現していたのよ!

 家に居た時は、そんな力なかったじゃない!

 あんなに酷い火傷を負ったのに、貴女あの時は治してなかったでしょ!?

 それとも私達を騙していたのかしら!?

 答えてよ! お義姉様!」


 そう叫ぶルイーゼから私を守るように、ルーク様が私をルーク様の後ろに隠した。


「ルイーゼ・ルードグラセフ伯爵令嬢。話をすり替えるな。

 今、この場で起こした爆発と、それに伴う怪我人を大勢出した原因は君にある。

 まずは周りに謝罪し、どういう経緯でこのような事が起こったのか釈明すべきだろう?

 その責任も取らず、オリビアに絡むなんて、どんな神経をしている?

 国の宝であるオリビアにまで傷を負わせた責任は重いぞ。

 覚悟しておくんだな」


 ルーク様はルイーゼを睨みながらそう言った後、講師陣に向き直る。


「先生方。オリビアは負傷者の治療で沢山の魔力を使い、疲弊しています。なので少し休ませますね。

 後はよろしくお願いします」

 

 そう言って、ルーク様は私をこの場から連れ出した。



 ****


 

「大丈夫だったかい? オリビア」


 心配そうにそう言ったのは、この王妃様の兄であり、私の新しい父であるモーリスト侯爵だ。


「ホントに、あそこの家の者が絡むとロクな事にならないわ!

 わたくしの大切な娘を傷つけた罪は、しっかりと償ってもらいます!

 オリビア、心配しないでゆっくり休んでね」


 そう言ってくれたのは、私の新しい母であるモーリスト侯爵夫人である。


「ご心配おかけして申し訳ございません。もうすっかり治っておりますので、お気を遣わないで下さいませ」


 そう言った私の顔をじっくりと見て、義母は感嘆の声を上げた。


「あぁ、やっぱり似ているわね、貴女のお母様である前ルードグラセフ女伯に。

 わたくし、学生時代の友人でしたのよ? 女伯の翠碧色の目をまた見れるなんて、本当に嬉しいわ。

 オリビアったら、家でも眼鏡を外してくれなかったんですもの」


 そうむくれた口調で話す義母に、私は申し訳ない気持ちになった。


「すみません、お義母さま。つい癖で……。でも、もう眼鏡は壊れましたし、これを機に、ありのままの姿で過ごそうと思っておりますの。

 亡き母に面影が似ていると言われて、とても嬉しかったです。ありがとうございます」


 私の言葉に、義母は余計にむくれる。


「あら! オリビアは今やわたくしの娘なんですからね!

 わたくしにも似ているような気がするわ!」


 そんな事を言っている義母を、義父が宥めた。


「お前……無茶なことを。

 さぁ、オリビアは今日は沢山の魔力を使って疲れているんだ。もう休ませてあげなさい。

 ルーク殿も、今日は早めにオリビアを連れて帰ってきてくれて感謝する」


 義父にそう言われて、今まで静かに私達親子の会話を見守っていたルーク様が、会話に加わってきた。


「いえ、とんでもない。

 オリビアを守るのは私の役目ですので」


 その言葉に、義両親が反応する。


「あら? オリビアの許可はおりたの?」


「小僧。まだ許さんぞ」


 二人の返答に私は首を傾げる。


「許可とはなんですか?」


 私の言葉に、ルーク様が過剰に反応してきた。


「あー、あ! オリビア! 早く休まないと! 疲れが溜まったら大変だからね!」


 そう言って、私を部屋まで送ろうとしたルーク様を、義父が引き止める。


「ふざけるなよ小僧。誰がオリビアの部屋に行っていいと許可した?」


「オリビアはわたくしが部屋まで送りますわよ。ルーク様、今日はお疲れ様。

 過剰接近はまだ許してませんからね」


 義両親にこぞって警戒されたルーク様は、肩を竦めて

「ちゃんとオリビアの許可を貰った暁には、正式に認めて下さいね」

 と、義両親にそう言っていた。



 

 

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