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18 ルードグラセフ伯爵の苛立ち



 シークレット商会の商品を購入した帰りの馬車の中で、ルイーゼは考え込んでいた。


「どうしたの? ルイーゼ。あんなに欲しがっていたバッグと髪飾りが買えたのよ? 嬉しくないの?」


 母ナタリーにそう言われて、ルイーゼは購入した品を見る。


「そりゃ嬉しいわよ。

 でもね、それよりも気になるわ。

 あそこにあの元メイドが居たのよ?

 そして、あの商会長はモーリスト侯爵家の人。

 聖女様もモーリスト家の養女でしょ?

 オリビア・モーリストって、やっぱりお義姉様のような気がして仕方がないわ」


 ルイーゼの発言に、ナタリーも同意した。


「あなた。ルイーゼの言う事はもっともだわ。もし、聖女があの娘なら、あなたはどうなさるおつもり?」


 ナタリーとルイーゼが、ルードグラセフ伯爵の顔を真剣にみつめ、発言を待つ。

 ルードグラセフ伯爵は、そんな二人にため息を吐いて言い放った。


「憶測で滅多な事を言うもんじゃない。あの娘にそんな力はなかったはずだと最初に言ったのは、ルイーゼ、お前だぞ」


「そ、それはそうだけど……

 あ! だったら、お義姉様の瞳の色が何色だったのか、教えて!

 あの聖女様の瞳の色と同じじゃないって分かったら、私も納得出来るもの!

 髪の色が違うって私が言っても、お父様やお母様は、しきりに目の色を気にしていたでしょう?」


 父の言葉にルイーゼは納得出来ず、義姉の瞳の色を尋ねた。


「ルイーゼ、お母様も忘れていたけど、あの娘はお父様に言われて髪の色を染めていたの。でもお父様の様子を見て思い出したのよ。

 あの娘の髪の色は白銀色の髪。

 巷で流行っている聖女様と同じ色だわ。

 そうよね? あなた」


 ルイーゼの質問に、上乗せするかのようにナタリーが付け加える。


 ナタリーも思い出したのかと、伯爵は観念した。


「……翠碧色だ」


 父のその言葉に、ルイーゼは大きく頷き、

「分かったわ。学園で何としてでも聖女の瞳の色を確認してくる。

 でないと安心して学園に通えないもの」

 と、満足気にそう言った。

 そして、やっと購入した品をじっくりと見た。


「あ~あ、これが最新のバッグだったらなぁ」


 購入した品を手にしながら、少し不満げな声を出しているルイーゼを見て、ナタリーが呆れた目で窘めた。


「買ってもらった途端に不満を言うなんて、我儘が過ぎますよ、ルイーゼ。

 今回の事で、わたくしの物は敢えて遠慮して購入しなかったのですからね」


 ナタリーにそう言われて、ルイーゼは首をすぼめる。


「ごめんなさい、お母様。

 でもね、最新のバッグには魔道具がはめ込まれていて、小さなバッグでも沢山のものが入るようになっているらしいの。

 流石にそれは貴族でも、ごく一部の人しか購入出来ないらしくて、貴族のステータスが持ってるだけで上がるんですって!」


「まぁ! そんなバッグが売ってあったの!? あの商会長はそんな品、薦めてくれなかったじゃない!」


「だから、通販雑誌からの予約購入らしいわよ。学園のクラスメイトの子が自慢してたもの」


 ナタリーとルイーゼの会話を黙って聞いていたルードグラセフ伯爵は、ふいに顔を上げた。


「魔道具がはめ込まれている?」


 いつも興味無さそうに、母娘の会話には入ってこない父親が、ふいに興味を示した事に気を良くしたルイーゼが、得意げに話す。


「そうよ! 新作の髪飾りには防御魔法が付与された魔鉱石がはめ込まれていたり、バッグには、重さを軽減する魔道具や、容量を広げる魔道具がついているんですって!

 そんな凄いものを持っていたら、学園でみんな私を羨むでしょうね」


 持っている自分を想像しながら、ウットリと話すルイーゼの話を聞き、ルードグラセフ伯爵がふいに笑いだした。


「こりゃあ、いい! あの商会長とスノーメル小公爵に思い知らせる事が出来そうだ!」


 そう言って笑う父に、ルイーゼが問う。


「お父様、何故あの方達を?」


 そのルイーゼの問いに、先程の事を思い出したかのように、ルードグラセフ伯爵は苦々しげな表情をする。


「お前たち、もう忘れたのか!?

 あの青二才どもは、このルードグラセフ伯爵に頭を下げさせたのだぞ!?

 ルイーゼ! お前のせいでもあるのだ! リーネを見つけた途端に大声で責め立てるから、大騒ぎになったんだからな!

 少しは自分の行動を慎みなさい!

 リーネを問い詰めるなんて、いくらでもやり方はあっただろうに」


 伯爵は、先程の店で低姿勢に謝罪した事が、余程気に入らなかったのだろう。

 ルイーゼも、父親がそんな気持ちを引きづっていた事に、今になって気づき、慌てて謝った。


「ご、ごめんなさいお父様! お父様にはとても感謝しているわ!

 私のために、あんな風に謝ってくれたんですもの!

 あの人達は、年上のお父様に敬意を表して当然なのに、失礼よね!

 あ……、でもルーク様はあの店には直接関係ないんじゃないかな?

 だから、目にもの見せるなら、あの商会長にすればいいと思うの!」


 謝りながらも、ルークを庇う娘を見て、呆れたように伯爵は問う。


「ルイーゼ、お前はそんなにあの男が好ましいのか?」


「え? ルーク様? そりゃ、とても素敵な方ですもの!

 ……いつも聖女様の傍にいるって話だけど、婚約しているとも聞いてないし……。みんな、あの方に憧れているのよ」


 ルイーゼの話を聞きながら、伯爵は考える。


「なるほど……。そういえば、確かスノーメル公爵家は代々錬金術の使い手の家系だったな……。

 やはり、あの店に何らかの形で関わっているな……」


 ブツブツと言いながら考え込んでいる父親を見て、ルイーゼはナタリーと顔を見合わせてた。



 

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