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13 ショックな出来事(ルイーゼ視点)①




 ルイーゼは、ルークに突然冷ややかに対応された事にショックを受けた。


 保健室で取り残されたルイーゼは、女医に声を掛けられたが、

「あ、もう大丈夫です」

 と、それだけ言うとすぐに保健室を立ち去る。


 取り敢えず自身の教室に戻ったルイーゼは、自席に着くと、さっきのルークとのやり取りを思い返す。


 (何がいけなかったと言うの!? ルーク様が何故急に冷たくなったのか、全く分からないわ!

 私たちは運命の出会いを果たしたはずでしょう!?)


 ルイーゼは、何処でルークの不興を買ったのかを必死で考えていた。


 そんな時、クラス内の数人の女子生徒が、自分達の持ち物について、楽しそうに話をしているのが耳に入る。


 (煩いわね、人が考え事をしている時に! 一体何を騒いでいるのかしら!)


 そう思い、耳を澄ますと、女子生徒たちは、ある商会の品物について会話しているのが分かった。


「あら! それは通販雑誌に載っていた最新のショルダーバッグじゃない!?

 すごい機能がついているって聞いたわよ」


「わたくし、知ってましてよ? 何でも次空間というものを利用して、見た目よりも沢山のものが入るのでしょう?」


「いいですわね~! あそこの商会の品物は利便性はもちろん、デザインも素晴らしいものばかりですもの」


「ええ! やはり、あの商会の物を身に付けてこそ、貴族としてのステータスが上がると言えますわ!」


 そんな事を楽しそうに話している令嬢達を見てルイーゼは、入学前に父にやっと買ってもらった、あの商会の髪飾りとショルダーバッグを自慢する時が来たと、徐に令嬢達の話の輪に入っていった。


「あら、皆様。もしかして今お話しているのは、この髪飾りとショルダーバッグを買った商会の品物の事かしら?

 うふふ。雑誌に載っていたのをお父様に言って、すぐに買って頂いたのよ?

 皆様はどのような物をお持ちなのかしら?」


 皆に見せびらかしながら、ルイーゼは鼻高々にそう告げた。


 そんなルイーゼを見て、令嬢達は無言になる。


 (あらあら。羨ましすぎて言葉も出ないのかしら?

 まぁ、この髪飾りとショルダーバッグは希少性のある高価なものだものね。

 お父様が手に入れるのに苦労したとボヤいていたもの)


 そんな事を思っていたルイーゼの耳に小さな笑い声が響く。


「くすっ」


 (ん?)


「く……、ふふっ……う……」

「ちょっと! 我慢しているのに笑わないで下さいませ!」

「や、やだ……もう、無理」


 そんな小声が聞こえてきたと思ったら、そこにいた令嬢達はもちろん、周りで話を聞いていたクラスメイト達が、あちこちでクスクスと忍び笑いをしている。


「な、なに? 」


 ルイーゼは、何故周りからこんな反応をされて笑われているのか分からない。


「何だっていうのよ!? わたし、何かおかしな事、言ったかしら!?」


 ルイーゼの叫びに、輪の中にいた令嬢の一人が気の毒そうに答えた。


「ルードグラセフ伯爵令嬢、その髪飾りとショルダーバッグ、あの商会の模造品ですわよ?」


「は? 何を言っているの? お父様が出入りの商人に頼んで、苦労して手に入れた物だって言っていたわ!

 通販雑誌に載っていた物と一緒の品物だったわよ!?」


 模造品と言われて、腹が立ったルイーゼは、その令嬢に食ってかかる。

 しかし、別の令嬢たちや令息たちが、馬鹿にしたように言ってきた。


「あそこの商会の品物が、何故こんなにも貴族の中で流行っているのか、本当に知らないの?

 デザインだけでなく利便性にも他に類を見ない品物だからよ?」


「ただの鞄ではないの。例えば貴女が持っているショルダーバッグ。あの商会の物なら、それはショルダーバッグから手提げバッグに変更出来るような工夫がされているの。

 でも、貴女のはただのショルダーバッグでしょう?

 あの店の登録商標がついてないし」


「錬金術で施された登録商標だから、他のどの店も真似出来ないから、例えその機能性を模倣されても、偽物だと分かるようになっているのよね」


「しかも、最新のバッグは錬金術が施されていて、バッグの中に物を入れても重さを感じさせないものや、次空間を利用して、見た目の容量よりも多くの物が入るバッグなんかも取り扱っているのよ」


「最新の髪飾りは、使用している宝石も、ただの宝石ではなくて、錬金術で防護魔法が施されているとか、色々な機能も付いているらしいし」


「だから希少であり、貴族といってもなかなか手に入れるのが難しいと言われているのよ。

 もちろん、お手頃価格な品物も取り扱ってるけど、そのどれもが何かしらの工夫がされているし、どんな物にもあの商会の登録商標となるマークが施されている」


「模造品と本物を見分ける目を持つのも、貴族としての嗜みだよな」


 クラスメイトが口々にそう言ってくる。

 ルイーゼは、その商会の登録商標マークなど知らなかったし、どんな工夫がされているかなんて興味も無かった。

 ただ自慢出来る高価なものを持って、田舎者とバカにされないようにする。

 その目的で手に入れた品物がまさか、そんな工夫がされていたなんて。

 雑誌に載っている見た目だけで選び、その商品について書いてある説明など全く無視していたから、今の今まで気付かなかったのだ。


 (なら、入園式の時から、この偽物のバッグと髪飾りを付けていた私に、みんな気づいていたって言うこと!?

 誰も教えてくれなかったじゃない!)


 そう思うが、やはり納得の行かないルイーゼは、負けずに切り返した。


「そんな事聞いてなかったわ! 模倣品が出回っているのに放っておくあの商会も悪いのよ!

 あの商会に抗議しに行くわ!」


 そう言ってルイーゼは、まだ授業が残っているのにも関わらず教室を飛び出し、この事を両親に伝えて何とかしてもらおうと、早々に帰路に着いた。



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