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10 オリビアお義姉様……?



 

「あら、おかえりなさいルイーゼ。

 学園はどうでしたか?」


 入園式が終了し、馬車でタウンハウスに帰ってきたルイーゼを迎えたナタリーであったが、ルイーゼが難しい表情になっているのに、首を傾げた。


「どうしたの、ルイーゼ? 学園で何か気になる事でもあったの?」


 母の問いかけにもすぐに反応せず、何やら考え込んでいるルイーゼを見かねて、再度声を掛ける。


「ルイーゼ! どうしたというのです?」


 やや強めの声掛けに、ようやく気付いたルイーゼが顔を上げて母を見た。


「あ……、お母様、ただいま戻りました」


「ええ、おかえりなさいルイーゼ。

 あなた、どうしたの? 学園で何かあった?」


 母の問いかけに、ルイーゼはまたしても考え込む。


「お母様……。お義姉様は死んだのでしょう?」


 ルイーゼの突然の発言に、ナタリーは驚いて目を丸くする。


「一体どうしたというのです、ルイーゼ。

 今更、そんな話をするなんて、どうかしてますよ?

 あれはもう家とは関係ない者です。

 あの娘があの後どうなったかなんて、知っているわけないでしょう」


「そう……ですよね……」


 そう言ったきり、また黙り込んでしまうルイーゼに、ナタリーは一抹の不安を覚える。


「ルイーゼ、取り敢えず着替えていらっしゃい。

 お父様もいらっしゃる夕食の時に、今日何があったのか、聞かせてちょうだい」


「……はい、お母様」


 ナタリーの言葉を受けて、そのままルイーゼは自室に戻った。


 (入園式で見かけた聖女様と呼ばれていた女性。

 あの人の掛けていた瓶底メガネや、声はお義姉様を彷彿させる。


 でも、お義姉様の髪の色は焦げ茶色だった。

 それに、あれから人に聞いたけど、あの人は今は誰も使えない治癒魔法が使えるそうだ。

 お義姉様にはそんな力、なかった。

 あったら自分の火傷をすぐに治しているはずだもの。

 それに家を出た日は、顔面も強打して眼鏡の破片で顔中傷だらけだったもの。

 治癒魔法が使えたなら、あんな状態のままでいるはずない。

 それに何より、家名があった。

 お義姉様は、家の家名を使えなくなり、平民となったはず)


 自室に着いて、部屋着に着替えた後もルイーゼは、頭の中でグルグルと繰り返し自問自答していた。


「そうね。お父様やお母様に話せばスッキリするかも!

 きっと、そんなはずないって、お父様なら笑ってくれるわ!」


 ようやくルイーゼは、頭を無理やり切り替えてそう結論付け、夕食の時間をソワソワとしながら待ち続けた。


 

 ****


 

 夕食の席となり、さっそくルイーゼは両親に今日の出来事を話し始めた。


「今日はね、入園式で学園の生徒会長を務める方が祝辞をされていたの!

 お父様はご存知なのかしら? ルーク・スノーメル公爵のご子息なのですって! 小公爵様って呼んでいた方もいらっしゃったわ。

 お父様、それってどういう事なのかしら?」


 ルイーゼは、そう聞いた。

 ルイーゼが話し始めた内容が、二年前に追い出したオリビアの話ではなかった事に、ナタリーは安堵する。



「ほぅ。スノーメル公爵家の子息か。小公爵と言うことは、その彼が公爵家の跡取りだと決定しているという事だ。

 確か現スノーメル公爵は、宰相閣下でもあらせられる。

 ルイーゼ、粗相のないように気を付けなさい」


「はぁい」


 間延びした返事をした後、ルイーゼはまだ何があるようだが、なかなか口に出せずにいた。

 そして、両親の顔色を窺いながら、そっと話し始める。


「ねぇ、お父様とお母様は、王都で話題の聖女様の話って、聞いたことがある?」


 ルイーゼの問いに、母のナタリーが大きく頷いた。


「ええ、お父様と一緒に、王都のお知り合いのパーティに先日参加したでしょ?

 その時に教えて頂いたわ。とっても素晴らしい力を持っていらっしゃる方のようね」


「あぁ、なんでもその力で王太子殿下の命を救ったそうで、その縁で王妃様のご実家であるモーリスト侯爵家に養女として引き取られたそうだな。

 元は平民という噂もあるが、立ち居振る舞いからみて貴族の出であるとも言われている。しかし詳細は秘匿されているそうだ」


 先日、両親は王都の貴族の仲間入りをするために、知り合いのツテを使ってパーティに参加してきた。

 きっと、そこで王都の情報を色々と仕入れてきたのだろう。

 ほとんど領地から出てこなかった両親だが、娘の入園を機に、王都への移住を考えている。

 ゆくゆくは、領地はたまに様子を見に行くだけにして、あとは人に任せるつもりらしい。


「その聖女様がどうしたの?」


 母が不思議そうにルイーゼにそう尋ねると、ルイーゼは言いにくそうにしながらも話し始めた。


「その聖女様って呼ばれている人がね、同じ学園の新入生で入ってきていて、新入生代表で挨拶したの。

 その人はね、白銀色のとても綺麗な長い髪をしていてね……」


「まぁ! ルイーゼと同じ新入生だなんて! お近づきになれるチャンスじゃないの!」


 ルイーゼの言葉を遮るようにナタリーは歓喜しながら言うも、そのあとのルイーゼの言葉に絶句する。



「そうね……。そしてその人はね、瓶底眼鏡をかけてたの。それにね、声もよく似ていて……。

 お名前もね、オリビアっていうんだって。オリビア・モーリスト。

 モーリスト侯爵令嬢だものね。……違うよね?」

 


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