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天国へ贈るコイン  作者: 西松清一郎
16/38

2-8

「気味の悪い事件の多いご時世ですから」館長がそう漏らし、警部が「まったく」と応じる。成沢に深追いする気配はなく、後には、高邁こうまいの美を託された聖所が抱くあの潤沢な静謐が残った。


「まだ鎧塚先生はお帰りになりませんね」警部は腕時計に目をやった。

「ええ」館長が答える。「先生はお昼もここで召し上がるようで」

「少し早いですが、先生たちにはお昼休憩を取っていただくとして。ところで、ここでチケットを購入できますか。大人二人分」


 突然、成沢の財布を見て、館長は少々驚いた様子で言った。「そんな。刑事さんからお代はいただきません」

 それを聞いた知世は浮つく感情が湧かないよう、唇にそっと力を込めた。このときには、知世のレジャー気分の多くが、さきほどの男の存在によって打ち砕かれていた。


 知世は懐から、警部からもらった展覧会のチラシを取り出した。観るものは決まっている。紙面端の「五百円硬貨」を改めて見ると、一瞬、それがどこか未知の次元へ飛んでいくような錯覚に陥った。

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