学園なんて行きたくありません!
「ユリア、今日は制服を仕立てに行くわよ」
朝からルンルンで部屋に入ってきたのはお母様。
「せっかく王家主催のお茶会で王都に来たんだもの今のうちに仕立てるわよ。
貴方達!ユリアをドレスアップして頂戴!」
お母様の掛け声と共にメイド達がすかさず私を外出用のドレスに着せ替える。
嘘でしょ、今日は冒険者として王都を見て回ろうと思ったのに...
「大丈夫よ、ユリアも着いたらきっと来てよかったと思えるわ」
しょぼくれている私にお母様はそう言った。
しばらく馬車に揺られていると貴族が行くお店の立ち並ぶ場所にやってきた。
私には縁のない場所ね、武器屋も無いし、何よりキラキラしていて目が潰れそうだわ。
そんな事を考えていると着いたわよとお母様に声をかけられた。
着いたのは豪華な仕立て屋、ドレスでも仕立てるのかしら?そういえばお母様が何か言っていた気がするけど...覚えてないわ
お店の中に入るとオーナーらしき人物が出迎えてくれた。
「本日は学園の制服を仕立てに来たと伺っております。早速採寸致しましょう」
ちょっと待った。
学園だと?そんな面倒臭いところに行く理由が分からない。第1そんな事をしたら冒険者としての時間が無くなるではないか!
『嫌です!お母様、私学園に行きたくありません!』
私は強く大きな声でそう言った。絶対嫌だ。
誰が行くものか。
お母様は私の言葉が予想外だったのだろう
驚いた顔をしながら慌てて言った。
「ど、どうして? 学園に行けばこの間のお茶会でできたお友達とも会えるし、素敵な婚約者ができるかもしれないのよ?」
それです。お母様と思わずツッコミたくなった。誰が好き好んでフラグの宝庫に足を突っ込まなければ行けないんだ。
私は将来冒険者になりたいんだ。婚約者ができてたまるか。それにせっかくできたパーティーメンバーにも会えなくなるじゃないか、そんなの絶対嫌だ。
『嫌です、お母様。私、絶対学園に行きたくありませんの。私、自分の領地と領民が大好きですの
だから王都の学園にずっといるなんて耐えられませんわ』
「長期休暇には帰ってこられるわよ?」
『それでも嫌です』
私が猛反対した事によりお母様は一旦制服を仕立てるのは無理だと判断し、家に帰った。
それだけならめでたしめでたしで終わるのだが、まぁ予想どうりではあるが家族会議が開かれた。
「ユリア、学園に入学する事を反対したそうだね?」
「ユリアはお兄様と学園に通うのは嫌なの?」
『いや、お兄様はその時には卒業してるでしょ』
思わずツッコミを入れてしまった。
「なぜ嫌なんだい?怒らないから素直に話しなさい」
普通この手の話は怒られるのがもはやデフォルトだがお父様は言ったことは守る人なので遠慮なく私は自分の思いを洗いざらい話した。
長く話したので要約すると
剣が好き、冒険者としての暮らしが無いと生きていけない。強制的に入れるのならこんな家出て言ってやる。である
これには流石にお父様もお兄様も頭を抱えていた。でもそんな事は知ったこっちゃない。
1週間にも及ぶ話し合いの末、
①お父様が転移魔法の使える魔術師を呼んで私が転移魔法を習得できるようにする。
②週に2回は冒険者として生活していい+家に顔を見せなくてもいい、その代わり学園に行く
という事で話がまとまった。