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第弐記 佐平

全身に痛みがあるらしい。日向は、調合した痛み止めを渡した。

「効くかどうかわかりませんが、これを水と一緒に飲ませてください」

幾多の薬草を磨り潰して調合したらしい。奥さんが水と共に飲ませた。

効とのままのようだいてくれれば善いが・・・・。

飲ませてしばらく様子を見ていると、穏やかな顔になった。

効いた。

これが効いたと云うことは・・・・神経系だな。


呼吸は正常。意識もある。日向は佐平の身体を触り始めた。「先生、あかん!うつります」

日向は触りながら、診察した。内臓はもとのままのようだ。しかし、コリコリとした神経に気づいた。「全身の血管が浮いている?いや、太くなっているのか?これは?」

血管の場所がおかしいことに気づいた。たとえば視神経が胸まで届いている。つまり胸にある眼球にまで伸びている。口周りは肌が伸びて首に行き、神経はそのまま。だが新しく生えた手は?なぜだ?


日向は籠から道具を出した。

「先生、それは?」

「私が考案した大鏡器(顕微鏡)と云うものです」

「大鏡器?」

須佐は医療に於いて随分と進んでいた。病原菌は日本は明治になって初めてわかったが、すでにこの時代、須佐は伝染は病原菌によるもの、と結論付けていた。とは云え、時代は戦国である。現代医療からすれば、まだレベルは低い。


「若干の血を採取します」日向は指をメスのような刃で切り、血を取った。それを大鏡器で大写しにして眺めた。「何もない。血は正常だ」


これは・・・・何かに似ている?・・・・何だ?うっすらと浮かんだものはあったが、いやそんなことがあるわけがない。と、自ら否定した。


「先生、おそうなりましたが、暖かいお茶でもお飲みください」

「ありがとうございます」

囲炉裏いろりの前に出て茶をご馳走になった。

「ん?これは?」

「香草茶です」

「香草?」

「いかがですか?嫌いな御仁もおりますが」

「美味しいです。これは須佐部落にも教えたい」

妻は笑って「それは善かった。この邑は香草がよく生えるんです。料理にも使いますが、生草は春まで待たないとね。茶は保存が効くので通年飲めます」

「なるほど」

山からここに来るとき、清々しい香りが漂っていたが、香草だったのか。見れば各軒先、庭に香草が植えてある。


日向は山に原因があるのか?と思い、山に入ることにした。佐平の容体が悪くなったら呼んでくれと伝えた。その前に佐平と共に山に入った仲間はどうか?と聞いた。

「他の連中は何もないだべさ」

佐平だけに症状が出たのか。


山は静かだった。真冬の山だ、昆虫たちは土に潜ったか?罠猟は最近何もかからないそうだ。奥地へと進んだ。妙なものがあった。ヌメっとした枯れた葉が落ちていた。「何だ?これは」

「これは枯葉か?なぜ、液が付いている?」

懐から大鏡器を取り出し調べた。「これは、葉ではない。何か動物のもののようだ」


ヒューイ


何だ?!あの音は?音か?鳴き声か?

パタパタパタ

ん?蟲だ。目みの前まで飛んできて尿を引っ掛けて去っていった。小さなセミのような昆虫だった。真冬に蝉?日向は尿を手拭いで拭いた。

土中も調べた。中々恵まれた山だ。土には栄養があり蟲や幼虫たちも寒い冬を生き延びられるだろう。しかし、土中には昆虫も幼虫もただ1匹もいなかった。

なぜだ?土中には何もなく蝉が飛んでいるのか?待てよ。

先ほどの尿を大鏡器で除いた。

これは尿ではない。蝉の体液だ!なぜ?かけた?


先生ーー!先生ーーーー!!!

あれは奥さんの声だ。「こっちです。どうしました?」

「主人が、主人が」「容態が悪くなったか?」「悪いなんてもんじゃないんです」

何があった?


急いで山を降りた。

「佐平さんがどうかしましたか?」

爺さんは腰を抜かしていた。震える指で佐平の布団を指差した。

何があった?

「佐平さん、どうしました?あ!!!」

佐平は全身緑色に変色して・・・・・「身体が溶け始めている!!!」


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