08
放課後。
レイラ先生に呼ばれて整備の手伝いをするんだっけか。
何の整備だろうレイラ先生の整備(意味深)かなぁ、ぐふふ。
「じー・・・」
・・・。
教室を出たら入口の左脇に笹凪が壁に背中を預けて待ち伏せていた。
「ぐふ?」
「ふぁ!?」
「ねぇ、轟。誰の整備をするって?」
ぐふぁ!?
ひょっとしなくても声に出てた!?
「誰って何だよ訓練用のオクスタンだろうが」
「へー。随分棒読みだね。オクスタンなんだ」
「オクスタンなんだ?」
「へーそう」
「うん・・・」
きゃああ、どうしようめちゃめちゃ疑ってる!
いや、俺はまだコイツが女子だと表立って見抜いてはいない。何の後腐れもないはずだ。
いや自意識過剰か。笹凪が俺に惚れる要素がないもんな。ん? 惚れたのかい? ぐふふ。
「ねえ、轟」
「あ、はい。なんでせう」
「僕も行こうかな」
は?
「なぜに?」
「オクスタンって体育の授業で戦技講習の時しかいじれないでしょ?」
「まぁ・・・。一応軍事兵器だから、学生の俺たちが触れる時間は限られるね」
「けど整備の手伝いなら、いじれるわけだ」
「まぁ・・・うん・・・?」
「轟だけ行くのってずるくない?」
じーっと、純粋無垢な目で見つめてくる。
う、かわいい・・・。
くそっ、この子が女の子って知らなければもっと塩対応できるのに!
「く、来るか? レイラ先生がなんて言うかわからないけど」
「そもそもレイラ先生とお前を二人きりにする方が危ないしな」
「どう言う意味じゃ。俺は無闇矢鱈と女性を襲ったりしないぞ?」
「うんそうだろうねえ、ヘタレっぽいし」
「おいコラ」
「それよりそうと決まれば行こう! オクスタンをじっくりいじれる機会が向こうからやってきたんだからね! 格納庫にはシミュレーターもあるしね!」
ははあ。
さてはそっちが本命だな?
「上手く交渉すれば、オクスタンのシミュレーターで密かに訓練できるって?」
「使える機会はとことん使わなくちゃ。轟だって早く操縦慣れたいでしょ?」
「そりゃ、まあ」
「決まりだね!」
小躍りして胸の前でちんまりガッツポーズする笹凪。
何この可愛い小動物!
しょうがないからお持ち帰ろう。格納庫へ。
はぁ・・・。あわよくば大人な整備タイムと夢見たが、コイツが付いてくるとなると百二十ッパー無いな。
いや、初めから無いのはわかってるけどさ。夢くらい見たかったよ・・・。