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06

 さて、もうタイトルも覚えてないがあのクソつまらなかったエロゲの世界に俺は迷い込んでしまったわけだが。

 まずい事に寝ても覚めても現実に戻れる気配が無い。

 アンナ校長に寮の件をお願いしようにも、忙しいみたいで会えずじまい。

 内藤先生に相談しようにも、担当外だから相談に乗れないと。

 そんなこんなで杏香ちゃんの家に世話になって一週間が過ぎていた。

 月曜日の早朝。


『お前! 人様にぶつかっておいてその態度はなんだよ!?』


 この黄色い声は・・・笹凪か?

 今は花も散った桜並木の中程で、所々尖った印象の髪型の男子と笹凪優也が睨み合っていた。

 アイツ、確か主人公の恭太郎だな。アイツの方はなんだか面白がっている風に見える。


『だーかーらー。よそ見してたから悪いって謝ってんじゃんか?』

『謝ってる態度じゃないだろ! 良い加減にしろよ!?』

『わーるかったって。それより俺、忙しいんだよね。そろそろ勘弁してくんない?』

『コイツ!!』


 確かイベントにあったなあ。

 最初のフラグだったっけ。この次にもう一つアクシデントが起きて、恭太郎が笹凪に覆いかぶさるように転倒して。

 ふむ。この時点では奴は気付かないはずだが、笹凪の方が性別バレたと意識して突っかかっていくようになるんだっけか。攻略本読んだだけだからうろ覚えだな。

 とはいえ、どうしよう。回り道しようにもおもくそ学校正面だし、突っ立って待ってるわけにも・・・。

 仕方なしに近付いていくが、二人ともこっちに気付いてない。


 わーもー。めんどくせー・・・。


 適当な距離で仲裁に入ろうとしたら、桜の木の向こうから凛とした女性の声をかけられて俺の足は止まってしまった。


「おい、トーマ!!」


 あ、初日の銀髪の君だ。

 なんかちょっと怒ってる?


「あ、レイラ先生」


 ツカツカと歩み寄ってきて小さすぎない程よいバストを強調するように腕組みをして見つめてくる。


「貴様、いつ格納庫を見に来るんだ!?」


 えっ!?


「え、えー・・・」


 あれ、あの約束社交辞令じゃなかったのか。

 言い淀んでいると、主人公の野郎が喧嘩を中断してレイラ先生にダッシュしてきやがった!?


「レイラー! 俺とハグしよー!!」

「貴様は永遠の眠りにつけ!!」


 見事なハイキック。

 恭太郎はおかしな角度に首が曲がるほどぶちかまされて一撃で失神した。

 ざまあみろ。

 とっ、レイラ先生再び俺を睨んでくる。怖い。


「で?」


「あ、ええと、今日の放課後伺います」


「そうか!」


 レイラ先生はパッと明るく笑うと俺の右手を両手で握りしめてぶんぶか振り回して言った。


「では待っているからな! 実は整備の手が足りなくて困ってたんだ」


「え、そういう理由・・・?」


「特別に良い物も見せてやる! ちゃんと来るんだぞ?」


「は、はぁ・・・」


 ご機嫌で立ち去っていくレイラ先生。

 振り向くと、なんだか微妙な顔をして笹凪が睨んできていた。

 いや、喧嘩の勝敗はつかなかったろうけど、その不満を俺にぶつけないで欲しい・・・。






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