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 単機で抵抗を続けていた地球製戦闘ポッドをシックルで貫いて、戦隊長は口が裂けるほど笑みを浮かべて動かなくなった敵機を見下ろす。


「ひゃははっ! まぁ・・・下等な現地星人にしちゃあ頑張った方じゃねえの?」


 ククと笑って対地攻撃を続ける戦闘ポッド群を見る。

 いい加減に手こずりすぎだがザコを自ら狩るのも面白いと、斗真のオクスタンを貫いたままロトン・ロトンを地球人の防御陣地に向けた。





 縦坑を上昇する。

 凄い。飛べるだろうとは思ってたけど、想像以上に安定してる!

 もしかして、四一式よいちって飛行戦闘も考慮して設計されてるのかな。

 ゆくゆくは空を飛べるユニットが開発されたりして。

 ともかく、これなら問題なくみんなと合流できる!

 まってて、とうま。今行くからね!

 開閉扉の無い縦坑の最上部に出た。

 四角い出口から飛び出てグラウンドに着地する。


「レイラ先生! 遅れてごめんなさい!!」


『ササナか! トーマの援護に向かえ!!』


 どこに?

 え、戦況はどうなって・・・。





 ホーネリアン強襲揚陸艦、ブリッジ。

 働き人が操艦しながら自動で戦闘を行う戦闘ポッドユニットをコンソールの中のモニターで指で選択しては攻撃目標を指示していく。

 それほど優秀とは言えない地球人の戦力が予想以上の抵抗を見せている事に興味が湧いて来ていた。


「地球人は、面白い。徹底抗戦して。どうして?」


 不意にレーダーに地球軍の増援が四機映り、それらが市街地を低空で飛んでレーダー派から隠れて近付いてきたのだと理解した時には、近距離側面を取られていた。


「アレは・・・敵?」


 一斉に火線が飛び、揚陸艦のブリッジに命中する。

 無数のロケット弾をブリッジの左側面に浴びて、揚陸艦は炎に包まれ破られた装甲から爆炎が襲いかかり、働き人は操縦席に座ったまま炎に包まれた。





 松本駐屯軍攻撃ヘリ小隊が市街地スレスレを飛翔してアイングライツ戦技学校を目指していた。

 目まぐるしい速さで飛びすぎていく民家や雑居ビル。

 アイングライツ戦技学校上空を緩やかに旋回する魚のような動きのムカデ状の艦艇。

 十分に接近して、一気に上昇をかけて敵艦のマウントを取ると、レーザー照準器を照射してトリガーを引いた。

 ロケットランチャーからガトリング砲のように射出される。

 高度なステルスを持つホーネリアン艦だったが、レーザー照準を照射すればロケット弾の誘導は可能となり、次々に艦首側面に砲弾の雨が吸い込まれていく。

 轟音と共に炎に包まれた敵艦は、制御を失って市街地に墜落して行き、墜落した先のガスボンベを大爆発させながら建物を蹴散らして、やがて沈黙した。

 揚陸艦からのコントロールを失った無人兵器の戦闘ポッドもまた、動きに繊細さを欠いてアイングライツ防衛部隊の火線の直撃を浴びるようになり、次々と撃墜されていくのだった。





 戦いに夢中になっていた戦隊長が気付いた時には、母艦が炎に包まれて墜落して行くところだった。


「なにい・・・? 現地星人どもが・・・、小癪な!」


 制御を離れた無人の戦闘ポッドは、地上からの対空砲火と増援らしい航空兵器のロケット弾を浴びせられて次々に撃墜されてしまう。


「チッ・・・遊びすぎたか」


 戦隊長はロトン・ロトンを右に回転させると、シックルで貫いたオクスタンを遠心力でアイングライツ戦技学校グラウンドに向かって放り投げた。





「援軍だ!」

「増援がやっと来てくれた!!」


 敵艦が墜落して、わっと歓声を上げるアイングライツ戦技学校防衛隊の学徒兵たち。

 魚のように空を回遊していた敵戦闘ポッドも直線的な動きに変化して攻撃を当てるのが容易になった。

 意気揚々と防衛隊の二五式が対空砲を浴びせて、また、増援に来た戦闘ヘリ群もレーザー照準近接信管ロケット弾を斉射して、敵戦闘ポッドは程なくして全滅した。

 勝利に湧く防衛隊の学生たち。

 だが、勝利の余韻に浸る暇も無くすぐにレイラの叱責が飛んだ。


『浮かれるなバカものども! まだ敵の指揮官機が残っているんだぞ!! 機体性能が圧倒的に優っている、火線を集中させろ! 絶対に近付けさせるな!!』





 レイラ先生、何をあんなに緊張してるんだろう。

 増援が来て敵艦を落としてくれたから、敵の戦闘ポッドもすぐに撃墜できたし。それに、指揮官機って?

 レイラ先生のローグキャットを見つけた。

 グラウンド敷地外の一点にロングライフルの砲口を向けている。

 なんだろう・・・。

 言いようの無い不安が、音を立てて迫って来てるみたいに感じる・・・。

 周囲を見る。

 四一式よいちの一号機が見えない。

 とうまは?

 どこ?


『ササナ! レーザー砲照準!』


「え、あの、」


『敵の指揮官機に・・・トーマがやられた・・・』


 え・・・?


『あの指揮官を狙え。動きが素早い。レーザー砲でなければ落とせん!』


 なんて言ったの・・・?


 とうまが、やられた・・・?


 息苦しい。

 空気で喉が詰まる。

 何が起きてるの?

 ぼくが来るのが遅かったから?

 機体を回頭させると、昆虫じみた人型が肩から生やしたシックルに、四一式が胴体を貫かれてて・・・。


「と、うま?」


【ハァァ・・・。まぁ、良いかぁ。空に帰れなくなっちまったが、代わりにテメェら狩り尽くして暴れるだけ暴れてやるぜ。まあコイツは? 割と楽しませてくれたぜぇ】


 昆虫みたいな敵機が、ぐるって回って四一式を放り投げて来た。

 グラウンドに飛んでくる。

 そんなの嘘だ。

 だってとうまは、海に連れてってくれるって約束したんだ。

 とうまが・・・。

 放り投げられた四一式よいちが、ぼくの機体の正面に背中から落ちた。

 轟音を立てて、土煙を上げて滑って止まる。

 機体の胸に、鎌を突き立てられた穴が穿たれてる・・・。

 あれ?

 コクピット?

 無事なの?

 とうま・・・?

 無意識だった。

 ぼくは夢遊病にかかったみたいに四一式を降りる。


『ササナ! 何をしている!! オクスタンに戻れ命令だ!?』


 だって・・・。

 とうまだよ・・・?

 とうまがいるんだ・・・

 そこに・・・


『ササナそれ以上その残骸に近付くんじゃない! 機体に戻れ! それはただの残骸だ機体に戻れ!!』


 うっすらと煙を上げて横たわる四一式によじ登った。

 胸におっきな傷・・・。痛々しい・・・。


『聞こえないのか! ササナ!!』


 ハッチを強制解放するレバーを引いた。

 火薬が炸裂してハッチが強制解放される。

 とうまが・・・いた・・・。

 右のお腹から、いっぱい血を流してる・・・。

 こっちを見てる?

 まだ生きてる!


「とうま!」


 コクピットに飛び込んで、シートベルトを外して抱き上げた。

 少し、笑ってくれた・・・。


「やぁ・・・優・・・」


「とうま? だいじょぶだよ? すぐ保健室に、」


「ごめんな・・・優・・・。俺・・・」


「大丈夫。とうま。大丈夫だよ。とうまは強い人じゃないか」


「へへ・・・優・・・。愛してた・・・」


 首が後ろに落ちた。

 ぼくの胸を掴んでくれた右手が落ちた。

 目が開いたままで、光がなくて・・・。

 とうま・・・?

 とうま・・・・・・。


「と、とうま・・・。とうま?」


 返事をしてくれない。

 息をしてくれない。

 抱きしめてくれない。

 ・・・もう動かない・・・。


「嘘だ・・・、嘘・・・。こんなの・・・・・・。うそだよ・・・うそ・・・・・・。嘘だああああああああ!?」


 ゆるさない、ゆるさない、絶対に許さない!!

 とうまをこんな目に合わせたのは!?

 とうまをシートに休ませて、ぼくはコクピットを飛び出した。

 敵のロボットがグラウンドの外に浮いてる。

 アイツだ。

 アイツがとうまを・・・!


「ゆるさない!!」


 頭の中に声が聞こえる。

 声の無い声。

 そうだ。あのヒトの力だ。

 ぼくには、その資格がある・・・!


「一緒に戦ってよ・・・。とうまが・・・、とうま・・・! 一緒に・・・・・・! 一緒に戦え!! ザーシュゲインーーーーー!!」


《承認します》


 緊急エレベーターの天井が下から突き破られて、身の丈15メートルにもなるスマートな人型ロボットが飛び出して、ぼくの前に降りたった。

 跪いて、左手を差し伸べてくる。


《私はザーシュゲイン・ツヴァイ。搭乗者登録を照合。搭乗者、笹凪優と確認。私と共に戦いますか?》


「戦う・・・! 力を貸せ! ザーシュゲイン!!」


《承認しました。共に戦いましょう、笹凪優》


 ザーシュゲインの手に乗って、首の下のコクピットに乗り込む。

 倒すんだ。

 とうまに酷いことをしたアイツを!!


 ぼくが倒す!!






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