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非武装の強襲揚陸艦には目もくれず、戦闘ポッド相手に弾幕を貼り続け時に一撃必殺の攻撃を加える地球人の人型兵器。
頭蓋を左右に開いて中の格納庫から両手で隔壁を掴み見下ろす戦隊長。
「いいねぇ・・・。久しぶりの生の戦場だ・・・」
異様に狙いの鋭い三機を見つけて舌舐めずりすると、そのうちの一機が戦隊長のロトン・ロトンに気付いて砲口を向けてきたのを感知して歓喜に震えた。
「いたなぁ。見つけたなあよくも俺を! そして俺も見つけたぜえ!!」
隔壁から手を離して自然落下する。
すぐにスラスターを吹かしてトンボのように飛び立つと、強襲揚陸艦の隔壁に命中してその右側隔壁が切断されて地上に落ちた。
「ひゃあはははははは!! 楽しいなあオイ!?」
ジグザグな高機動でロトン・ロトンが飛び、斗真たちの即応小隊目掛けて突撃を敢行した。
「レーザーを避けるのか!!」
しっかり狙ったわけじゃない。
だけど、闇雲に撃ったわけでもない。
発信態勢が整っているように見えなかったから、出てきたばかりだからと先手必勝と撃ったのに、まるでずっとこっちを見ていたかのように反応して回避しやがった!?
敵の人型の動きが早すぎて、誰も反応していない。
大きく迂回しているように見えるけど、まるでトンボみたいな素早い動き。
明らかにこっちを見てる・・・!
狙われた!!
「斗真機、離脱!!」
『な、なに!? 何を考えているトーマ!!』
レイラ先生の怒る声が聞こえた。
だけど、初戦でザーシュゲインを圧倒するかも知れない格闘性能を持ったロトン・ロトンが隊のど真ん中に降りてきたら、一網打尽にされてしまう!
なんとかしないと・・・!
時間稼がないと!!
「ごめんなさい、レイラ中尉。あとで軍法会議にでもなんでもかけてください!」
『トーマ待て! 何を見つけた!? トーマ!!』
スラスターを吹かして、校庭から低くジャンプして市街へと隠れる。
どういう技術か、敵と思われる通信が入ってきた!
【いよう。テメー、俺に気付いたなあ?】
音割れしたような聞き取りづらい、太い声。
俺は返事をしないで建物に挟まれた一本道の通りに出て動きを待った。
【それじゃあつまらねえんだよなあ。お前一人で死なせちゃあ、流石に可哀想だもんなあ?】
こっちを狙ったくせに、部隊を襲うつもりなのか!?
ブラフか・・・?
どっちが背中を見せることになる?
戻るべきか・・・いや・・・戻るべきか格好悪いけど!!
一瞬の思考の間に、ロトン・ロトンが俺に背を向けるようにグラウンドに降り立つのが見えた。
一気にジャンプする。
ロトン・ロトンが志津香の二五式にシックルを振り下ろして左腕が肩から切断されるのが見えた。
重マシンガンを三連射で撃つ。
ロトン・ロトンは背中を見せていたにも関わらず右に斜めに飛翔して躱し、俺の撃った砲弾が志津香機に命中してしまう。
二五式はビーム照射に耐えるほど頑丈だ。フレンドリーファイアだが、重マシンガン程度の数発問題ない。
ビルの屋上を蹴ってさらに一段高くジャンプして、レーザー砲を撃った。
ロトン・ロトンの左脚を焼くが、すぐに回避されてしまい焼き切る事は出来なかった。
【おう、おう、おう! いいね思い切りが。そういうお前みたいのは、スーパーロボットに乗る前に叩いておかんとだよなあ!?】
反転して腰の後ろに下げていたサブマシンガンみたいな武器を両手に持って、躊躇う事なく撃ってきた。
スラスターを吹かして躱す。
民家に左肩から突っ込んで、バラバラに潰してしまった。
俺のせいでプロパンガスが破裂して、何かに引火して爆発する。
それを目眩しに俺は機体を前進させて、再びジャンプした。
俺のすぐ右に、ロトン・ロトンが距離を詰めてきていて、迷わず重マシンガンを斉射するが、直撃を与えたにも関わらず平然としている。
それでも威嚇は出来たようで距離は取れた。
【ほっほぉ。いいねその動き。機体の性能のお陰かあ? しかしそんな豆鉄砲じゃあなあ!?】
ジリ貧だ!
最新鋭機って言っても、既存の技術で作られたオクスタンじゃあ全く勝てる要素がない!
レーザー砲さえ、照射出来るだけの隙さえあれば・・・。