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 空襲警報が止んだ。

 住民の避難が完了したと言うことだろうか。

 在校生の避難は完了したようで校内放送も止まっている。

 モニター越しに空を見て、火の玉がデカくなってきていることに恐ろしさを堪えきれない。

 無線封鎖してるから聞こえてこないけど、きっと多くの生徒が逃げ出したいと悲鳴を上げてることだろうな。

 俺だって逃げたい!

 でも、後ろには優がいる。守らなきゃ・・・。

 北と南からミサイルが火の玉目掛けて合計八発飛翔していくが、それらは目標をそれて通り過ぎてしまい、山間部の上空で自爆した。

 原理はわからないが、ロックオンが効かないほどのステルス性能っていうのは本当らしい。

 松本駐屯地側からも対空砲火と対空ミサイルが次々に上がる。

 火の玉が弾けて中から赤黒い、胴体がスケルトンになったムカデのような巨大な影が現れて生物的な動きで対空砲火を掻い潜って真っ直ぐこっちに向かって来る。


 マジかよ、あの対空砲火の雨が一発も当たんないのかよ!


 冷や汗が背中を濡らす。

 ちくしょう、何人生き残れるんだ。

 敵がアイングライツ戦技学校の上空を旋回し出した。

 もうここまで来やがった・・・。

 一機相手だったから前はゲーム感覚で戦えたけど、コレはやばい・・・ヤバすぎて怖すぎてどうにもならん!!

 スケルトンの中に何機も戦闘ポッドが格納されてる。アレが一気に出て来るのか・・・!?


『対空防御! 弾幕を張れー!!』


 レイラ中尉の檄が飛んで一斉に火線を上げるアイングライツ戦技学校即席防衛部隊。

 砲火の中を悠然と躱しながら胴体をローリングさせて黒い物体が、通称タコが四方八方に撒き吐き出されて、それらが水を得た魚のように対空砲火を掻い潜りながら自在に蠢く触手からビームを放ってくる。

 いきなり防御陣形が崩れそうになってきていた。


『トーマ、カキザキ、無線封鎖解除。狼狽えるなと言っても、訓練もままならぬ学生には酷な話だな』


「で、でも、どうするんです。対空防御システムも、松本駐屯軍の対空砲火も効果が無かったのに!」


『トーマ、背中のレーザー砲を使え。地上では放熱が追いつかんからすぐにオーバーヒートするだろうが、一機でも二機でも落とせればいい。カキザキ、貴様も出来るな』


『やるしかねえってか』


「当てる自信なんかないぜ・・・」


『トーマ、カキザキ、貴様らならば出来る』


 根拠のない励ましに、俺はコンソールのレーザー砲のボタンを押して起動すると、メインカメラに出現した大きな四角い照準を睨んで敵が流れて来るのを待ち、そしてトリガーを引きながら機体を敵を追従するように旋回させた。

 出来るだけ振動を抑えるように。

 バックパックの両肩から立ち上がるレーザー砲塔から青白い光線が照射されてタコの側面を赤く焼き、そして白く溶かして炎が上がった。


「やった! 一気撃墜!!」


『俺も落としたぜ! 轟沢、どっちが多く落とせるか勝負だ!』


「こんな状況で勝負・・・かよ!?」


『よくやったぞ二人とも! そのまま敵を狙い撃て! 私が援護する!!』


 一つの戦果が俺たちを高揚させる。

 及び腰だった他の生徒たちも俺たちの戦果に勇気づけられて的確な弾幕を張り始める。

 残り十四機。

 ただし火力でいえばこっちの数倍。

 それでも、戦う意志さえあれば・・・!


(優・・・絶対持ち堪えて見せるからな・・・! 生きて、俺はお前を抱きしめたい・・・!)


 死ぬかもしれない戦況だ。

 多少の不純は、許されるよね・・・!?






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