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 久瀬志津香が装弾を終えた重マシンガンを右手に、ハンガーベッドからスクトゥムを引っ張り出して左手に装備してエレベーターに向かうと、ようやく降りてきた三機の二五式に道を塞がれる。

 三機が苦情を言った。


『おい、邪魔だよ! 道塞ぐなよ!?』


 カチンと来て志津香が言い返す。


『塞いでるのはそちらでしょう! こちらは出撃態勢が整っています、左に一列に退避し、実弾装填を急いでください!』


『命令するのか!!』


『小さいことをいちいち言わないで!! 実戦なのよ!?』


 実弾の入った重マシンガンを思わず向けてしまう志津香。

 砲口を向けられて怖気付いた生徒たちが慌てて二五式を左に一列に退避させる。


(苛立つのは分かるけど・・・。こんな練度じゃあ戦闘なんて無茶よ・・・!)


 苛立ちながら志津香が二五式をエレベーターの中央に乗せて、ようやく実弾装填を始めている五機と、今入って行った三機をモニター越しに見てキュッと目を閉じる。


(先に動いたはずの恭太郎くんたちは何してるんだろう・・・。来ないなら来ないなりにみんなを誘導してくれてれば良いけど)


 エレベーターの操作パネルの方を見ると、一人の生徒が無線を片手に操作してくれていた。


『あ、あの! エレベーター動かして良いですか!?』


「はい、急いでください。こちらは先に出撃します」


『了解しました!』


「特別クラスの新型はもう出てるんですか?」


『い、いえ・・・。それが、エレベーターは地下一階までしか動かせません。故障してるみたいで・・・』


「そ、そうですか・・・」

(それじゃあ、轟沢くんたちは・・・。彼らの新型無しで戦わなくてはいけないと言うのね・・・)


 エレベーターが上昇を終えて隔壁が開くと、教官の怒鳴り声が格納庫に響いて混乱の収まらない生徒たちが操縦する二五式が格納庫の左右に乱れつつ並ぼうとしていた。

 その中に踏み出す志津香。


『久瀬志津香候補生です! 装填完了しています道を開けて!』


 気付いた教官も怒鳴り散らした。


『道を開けろ、道を開けろ! 装填待ちの機体は左右に並べ、中央は出撃する機体が通るんだぞ!』


 慌てふためく未熟なパイロットたち。

 教官から志津香に通信が入った。


『貴様は一年生だろう。戦えるのか』


「交代の三年生はいるのですか?」


『残念だが、こちらに向かってきてくれたのは僅か五名だ。すでに動いている二五式を見て、多くの三年生は動く必要がないと判断してしまったのだろう。貴様らの誘導を終えたら、俺たちも教官用オクスタン、煌角で出る。安心して出撃しろ』


「了解しました。久瀬機、出ます」


 前に出しながら苦笑することしか出来ない。

 あの恐ろしい火力の敵機を相手にするのに、安心して出撃もないだろうにと思う。


(だけれど、不安な気持ちで出させるわけにはいかないものね・・・)


 渋滞を起こしている隔壁前に機を向かわせると、密集していた生徒たちの二五式がぶつかり合いながらも道を開けてくれる。

 大グラウンドに出ると、どうやって出たのか見たことのない平たい頭部の、戦車然とした群青色のオクスタンが二機、ネイビーブルーに黄色い縁取りの入ったオクスタンが一機普通グラウンドの中央に陣取って重マシンガンやロングライフルを上空に向け対空監視をしているのを見つけて少し嬉しくなった。

 二五式を走らせて背部スラスターを吹かして桜並木を飛び越える。


「戦技科一年、久瀬志津香です! 遅れましたっ、合流します!」


『やっと来たか訓練生。クーゼと言ったか?』


「は? はい、久瀬志津香です!」


『地獄へようこそ、クーゼ訓練生。私はオクスタン戦技教官のレイラ中尉だ。小隊に組み込む、四一式の間に入れスクエアフォーメーションだ』


「了解しました!」


『トーマ! カキザキ! 場所を開けろ!』


『『了解』』


(轟沢くん! そうか・・・きてくれてるんだ・・・! なら、私だって戦える・・・!)


 密かに闘志を燃やす志津香。

 守ってくれた彼のために、肩を並べて戦えることに喜びを感じていた。






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