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 午前の座学が終わり、午後の教練に向かって廊下を移動している中で、ようやく優の誤解も解けて不服そうではあるが俺を許してくれた優。

 男子生徒姿の優に右腕に抱きつかれながら下駄箱に向かっていると、当然のようにビルギも左にくっつくほど近くを歩いてついてきていた。


「もう、それならそうと、早く言ってよとうま」


 彼女が敵性体の亡命者で、今はアイングライツ戦技学校内での保護観察中だと説明するのにお昼休みをまるっと使ってしまったので、肉体的にも精神的にも疲労が増えた。

 自称女王様のビルギがククッと喉を鳴らして笑うと優の顔を覗き込む。


「全く、お前は早とちりなのナ。とうまはレイラが妾が不自由せんよう妾に与えてくれた使用人なのナ」


「使用人じゃなくて監視員な。お前がどこにでも好き勝手行かないよう監視するのが俺の仕事なの」


「つまりナ。とうまが行っちゃダメという所には行っちゃダメな理由があるということなのナ! とうまと一緒なら行っちゃダメな場所にも行けるのナ?」


 そんなわけ無いだろう。スパイかも知れない奴を連れて行ける場所が限られると言うだけだ。


「行っちゃダメな場所は俺と一緒でも行っちゃダメだからな」


「ななナ!? 何故ダメなのナ!?」


「昨日来たばかりの異星人さんがいきなり信用されるわけないでしょう」


「ナー・・・、そうだったのナ・・・」


 すごくショック受けてらっしゃるが、自分の立場を解っているのだろうか?

 優(也)は自称女王様のビルギ様がどういう立場で俺と一緒なのか解って安心した様子で俺にしがみついていた。

 矯正ブラで胸の膨らみ隠してても柔らかさが伝わってくるから、あまり抱きつかないで欲しいのだが・・・。

 いや、やっぱり離れて欲しくないのだが?


「でもでもそっかあ、とうまもこんな化け物娘と一緒だと大変だね」


「大変ですよ寝食まで共にするとか。一応、視聴覚室のパーティションを部屋に持ち込んでいい許可もらったから、教練後にリフォームですよ」


「大変だね! じゃあぼくも手伝うね」


「ありがとう優・・・! 優は優しいなぁ・・・好きです」


「も、もう! 学校だと誤解されるからそういう事言わないの!」


「はーい〜」


 ああ、幸せ。

 家庭科室を通りかかったとき、引戸がガラリと開け放たれてトンガリ髪の男子生徒が乱暴に出てきて優にぶつかりそうになる。

 咄嗟に優を抱き寄せて躱すと、男子生徒は鋭い視線を俺たちに向けて口角を上げて笑いやがった。


「ケッ、ザコメカのパイロットかよ。せいぜい新型とやらで頑張ってくれよな。足手まといになるんじゃねえぞ」


 捨て台詞!

 俺たちとは逆方向、廊下の階段を上がって教室に向かって行った。

 優がちょっと萎縮してしまって、俺は不機嫌になって奴の後ろ姿を睨みつける。


「屑主人公が。いい気になりやがって」


「屑主人公?」


 俺の腕の中で優が上目遣いに見上げてくる。ああ、やばいその目線の破壊力!

 いたたまれなくなって優(也)肩から手を離して言った。


「なんでもない!」


 そうそう、奴が主人公だろうとモブな俺には関係のない事だからな。

 そして奴、恭太郎の優(也)フラグは俺がへし折ってやったから優が奴の毒牙にかかることもない。

 完全に奴と俺の接点は無くなったのだ!

 ザーシュゲインでせいぜい俺たちの盾になってくれよ。


「あ、あぶないのナ」


「へう?」


 廊下で立ち止まっていた俺たちに、家庭科室にもう一人いたらしく慌ただしく駆け出して来たのに俺の肩がぶつかってしまう。


「あいてっ、あ、ごめん大丈夫?」


「!?」


 じゃなさそうなんですが・・・。ワイシャツのボタン止めきれてないから青いブラ見え隠れしてますよあと裾をちゃんとスカートに入れてねはしたないよ・・・。

 てか・・・。ヒロインの久瀬志津香?

 マジか。昼休みにここでイチャイチャしてたのか。

 久瀬志津香は俺の顔を見て驚くと、ものすごく気まずそうに顔を逸らして駆け去って行った。

 うーむ。まぁ。恥ずかしいよね。だが俺は見なかったことにするから安心して屑主人公と関係を深めてくれたまへ。

 ど、


「うっ!?」


 と、優(也)の肘鉄が俺の鳩尾に突き刺さった。


「なに見惚れてるのさ! とうまにはぼくがいるでしょ!」


「ご、誤解だよ優っ。随分な格好だったから大丈夫か?って思っただけだよ・・・」


「ふむ、そうなの? じゃあ許してあげる」


 ご機嫌斜めだけど、優(也)は俺の手を引いて早足になるのだった。


「早くいこ! 格納庫! 今日からみんなで格納庫教練だからね!」


「そういえば何故にみんなで受けるようになったのかな」


「与一が人数分配備されたみたいだよ! その話もレイラ先生からあると思うんだ!」


「よいち? よいちってなんなのナ?」


「転入生は知らなくて良いの!」


「ゆーやは意地悪なのナ! いいもんとうまに教えてもらうもんナ!」


「独り占めはダメ! というかとうまはぼくのなんだからね!」


「妾の監視員ということは妾の物なのナー!」


 待って二人とも・・・俺は物ではないのですぞ。

 ああでも優のやぁらかい手で引っ張られる幸せっ。

 俺氏の青春、詰んでなくてよかったよかった。






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