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起きる。
昼寝にしてはめちゃくちゃ疲れてる。
なんだか物凄い夢を見てたな、あのめちゃくちゃな世界観のゲームの世界に行くとは。なんだかんだで興味はあったのかね。
いやいや、夢っていうのは記憶のお掃除と聞いた事もある。夢を見る事で消費しようとしたのかもしれないな!
きっとそうだろう。
パソコンをいじって立ち上がりっぱなしのゲームを閉じると、パソコンをシャットダウンする。
攻略本を手に取って、後ろのページに記載された兵器のカタログに目を通す。
クソゲーでも兵器ユニットは悪くないよな。こういう設定読むのは大好きだ!
俺が搭乗したのは・・・。
ん?
オクスタンって二五式、じゃないのか、ラウアティガー?
そんな機体あったっけ?
ローグキャットは、黒っぽい機体なんだな。青じゃないんだ。
ラウアティガーの主なパイロットは、笹凪優也(笹凪優)か。デレた後はザーシュゲインに付き従って戦ってくれる心強い味方になるんだなあ。
女の子バージョンやばいな。可愛いw
敵のユニットはどことなく昆虫を思わせるデザインなんだな。
ライバルロボットは四本腕の、カマキリみたいな格闘用の腕を持つロトン・ロトンっていう機体だな。
二年生の中盤から出てくるのか。
それまではクラゲみたいのとか、トビウオみたいの、あとカナブンみたいなのが主力か。
ちょいとエロシーンも覗いてみる。
お、友達のやつ、エロシーンをまとめた福袋、随分と綺麗に開封してるなあ。
おや、ザーシュゲインって全部で三機あるのか。
主人公の接近特化型がザーシュゲインアイン。
ヒロインの乗る長距離型ザーシュゲインドライ。
汎用型のツヴァイは、どうやらライバルが乗るみたいだな。好感度が低ければ笹凪優也。ある程度高ければ、男ライバルの天空ヒロか。
なになに、天空ヒロは一人だけ白い制服の金縁制帽を被った坊ちゃんキャラか。主人公の恭太郎とメインヒロインを取り合うライバル、ねえ。
へー、まあ、どうでもいいや。
お、戦艦!
アイングライツ?
うお、学校の地下に学校名と同じ名前のオクスタンの母艦にもなる多目的艦が眠ってるのか!
へー。
あるあるだねー。
おや? ケータイが鳴ってる。
ケータイどこ置いたっけ。
キッチン?
ベッド?
ベッドか。
ベッドだ。
なんかまた眠くなってきたな。ケータイ鳴ってるけど、まあいいか。
眠いし。
ねむ・・・。
あ、ケータイあった。
着信は、優か。
なんだよアイツ、めんどくせえなあ。
眠いんだよ俺は。
『とうま・・・とうま』
とうまじゃねえよ、俺の名前は志郎だろうが。恋人の名前間違えるとかどうなの?
『とうま、起きてよ。ねえ』
とうまじゃねえっての。
全くかわいいやつめ。
俺の名前間違えんなって。
まったく
かわいいやつ
陽本陸軍、松本駐屯地。軍病院。
集中治療室から移されたアイングライツ戦技学校の生徒は治療を無事に終えていたが、意識が戻る気配はまだ無かった。
レイラは戦闘記録を駐屯地司令部に提出してそのまま会議に出る事になり、轟沢斗真一人が眠る個室病棟のベッドにしがみ付くようにして笹凪優は呪文のように斗真の名前を呼び続ける。
「斗真・・・お願いだよ・・・。目を開けてよ・・・」
「ぅ・・・じゃねえよ・・・」
掠れるように漏れ出る声に、優はぱっと顔を上げて斗真の顔を覗き込み、うっすらと目を開けて視線が泳ぐ彼の意識を繋ぎ止めようと、彼の右手を両手で包み込むようにしっかりと握りしめて震える声で名前を呼び続けた。
なんか、身体痛え。
目がしょぼしょぼする。眠い。
あれ知らない天井だ。どこだここ、おれんちじゃねえぞ?。
「あ、当たり前だよ。ここは軍の病院の中だよ」
えー、病院〜?
「とうま・・・良かった。意識戻ったね・・・」
だからとうまじゃねぇって、志郎だよ。橋詰志郎。
名前間違えんなって。
「まだ、意識が朦朧としてるんだね。いいよ、もう少し休んで。ぼくがずっと側にいるからね。安心していいよ」
本当にお前は可愛いやつだよな。
声が泣きそうだぞ?
「もう・・・そんなボロボロで・・・」
あはは、きっとお前ならいいお嫁さんになるな。
うん。そんな気がする。
今のうちに手をつけとこうかな。
「バカ言ってないで寝て・・・。それで、ちゃんと起きるんだよ。そうしたら、ぼくもちゃんと向き合ってあげる」
あはは、何に。
でもまあいいか。眠いし。
「とうま、ぼくが本当に女の子になったら、女の子になっても、ずっと見ててくれる?」
見てる見てる。お嫁さんにしてあげる。
「バカ・・・。ちゃんと休んで・・・とうま・・・」
だから、俺の名前・・・まぁ・・・いいか・・・おやすみ優。
「おやすみ。とうま・・・」




