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 ぼくは最低な人間だ。

 だけど、本物の実戦は、すごく恐ろしかった。

 警報音が怖い。

 警報のアナウンスが怖い。

 雷みたいな戦闘音が怖い・・・。


『優、無理はしなくていいから。危険を感じたら逃げろよ?』


 斗真が心配してくれている。

 きっとぼくが女の子って知らないあの人が、ぼくを案じてくれている。

 けれど、あまりにも恐ろしすぎて、戦場の空気が怖くてもう声が出なくなってしまっていた。


 お願いだよ、とうま、

 戦わないで。

 一緒にここにいて。


 軍人の家系に生まれたぼくは、戦闘機乗りの家系に生まれたぼくは幼少の頃から一流のパイロットになるために英才教育を受けて来た。

 ゲームなんかで遊んでる暇なんて、友達と遊んでいる暇なんてなかった。

 男である方が、パイロットに選ばれやすいという理由で、ぼくは半ば男児として育てられて来た。

 そんなぼくが中学生に上がるくらいに、オクスタンというロボット兵器が開発されて、それを初めて実戦配備したガメリカ合衆国の宇宙外縁調査艦隊が、同盟国として同行した陽本宇宙軍艦隊が外宇宙から飛来した異星人との戦争状態に陥って、半壊した陽本宇宙軍に対してガメリカ軍艦隊は艦艇こそ損害を受けたもののそこまで一方的な損害を被る事は無かった。

 世界がオクスタンという新しい兵器に注目する。

 そして、隣国など比ではない外宇宙からの脅威に注目する。

 すぐに各国でオクスタンの開発研究が、急速なピッチで進められて、ぼくの教育も戦闘機乗りからオクスタンパイロットへと路線変更されて、戦場に立つのは男だという未だ昔からの意識が抜けない陽本に置いてパイロットになるには、男で居続けなければならないと、ぼくはアイングライツ戦技学校に男子生徒として入学することになって。

 そして一月が経つ頃、とうまと、轟沢斗真と出会った。

 優しそうな顔をしていて、常識がズレてて、国の名前すらまともに覚えてないバカだったけど・・・。一緒にいて安心できた。楽しかった。

 そう。

 楽しかったんだ・・・。


『前に出ます!』

『生徒を踏み潰すなよ!?』


 とうまとレイラ先生が戦ってる。

 頭ではわかってる。

 だけど、

 だけど動けないよ・・・。

 ずっと軍人に、パイロットになるために生きてきたけど、実戦の恐ろしさなんて学ばなかった・・・。

 怖い、怖いよとうま・・・。


【ガーン! ガンガン! ガシャア!】


「ああああああああ!?」


 後ろで何かが崩れた!?

 屋根が落ちてる!

 天井に穴が空いてる!?

 とうま・・・とうま・・・!

 目を見開く。

 とうまの機体が、敵を押さえつけてる。


 やったの?


 やったんだよね?


 とうま?


 レイラ先生の機体がいつの間にか格納庫の中から消えてる。

 どこに行ったの?


『上手く避けろよ雑兵一号おおおおお!』

『いかん、トーマ飛べ!!』


 何?


 何が起きてるの?


 とうまの機体が起き上がって後退る。

 おっきい人型の機体が、黒いやつに剣を振り下ろしてる。

 とうまの機体が、後ろに下がる・・・。

 黒いやつの触手が、おどろおどろしい毒花みたいに広がって見えた。


 光。


 眩い光。


 焼かれる・・・とうまの機体が焼かれている・・・やめて・・・やめてよ・・・とうまがしんじゃう・・・。


 とうま・・・、


 とうま・・・!


 腕が、肩が、弾けて燃え落ちた。

 前部装甲が、花開いたみたいに熱で抉られて・・・。


「い、いや、だ・・・」


 とうまの機体が仰向けに倒れそうになって、踏ん張って、うつ伏せに倒れていった。

 黒いやつが禍々しく触手を振り回してる。

 右側面から、一筋の砲弾が黒いやつのど真ん中に吸い込まれて、黒いやつは左右から火を吹いて、力を失って地面に落ちた。


「・・・とうま?」


 返事がない。

 返事して。


「とうま」


 何してるの?

 立ってよ。

 バカみたいに笑ってよ・・・。


『トーマ! 返事しろトーマ!?』


 ああ、燃えてる・・・。


 とうまの機体が・・・。


 どうして燃えてるの?


『トーマ!!』


 震える手で、コクピットのハッチを開けた。

 鉄の焼ける鼻をつく臭い。

 火薬の臭い。

 頭の中に、モヤがかかってる。

 オクスタンを降りて、燃えるとうまの機体に、ふらふらと歩いていく。

 レイラ先生の機体が、両手から白い煙をとうまの機体に噴射してるのが見えた。

 先生、それは何?

 先生は何をしているの?

 とうまはどこ?

 先生が、辛うじて無事だったコクピットからとうまを引っ張り出していた。

 血?

 とうまが血を流しているの?

 それはとうまなの?

 なんで血を流しているの?


「大丈夫だトーマ! 今、海兵隊の空輸機が向かっている、貴様は必ずガメリカが助ける!」


 とうまがたおれてる


 とうまが、ちをながして、たおれてる


 しらないおんながとうまをあやしてる


 とうまが・・・うごかない・・・・・・・・・・・・


「とう、ま・・・?」


 うごかない


 うごかない


 ぼくはとうまをみおろして


 とうま


 とうまが・・・・・・


「い・・・いやあああああああああああああああ!?」


 とうまが


 しんじゃう・・・・・・!?







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