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俺と笹凪は分担して訓練機のオクスタン、白を基調として前腕と脚に青いラインの入った頭部が丸みを帯びていながら尖った(悪く言えば耳の無いネズミみたいな顔)のオクスタン、二五式のコクピットに乗り込み、パッドを接続して点検を実行していった。
二五式は日本、ではなかった陽本で最初に実戦投入された二式の改良を重ねた最終的なモデルで、全体的に幅が広くずんぐりしていると言えなくも無い頭部だけがアンバランスに小さく見えるデザインだが、無骨さがかっこいいと言えなくもない。
ちなみに現在実戦配備されている主力は三式改、三三式煌角という少々角張ったデザインの機体だそうだ。
パッドから伸びたコードをコンソールの前のやや下あたりに開いたソケットに差し込む。
有線なのはハッキング対策だとか。どっちにしたって、有線で繋げば余計な操作を省けるから俺としては楽だ。あまり機械は得意じゃないしね。
点検が開始されてマシン語の羅列がずらずらとスクロールし始めたら、コクピットから駆け出てシミュレーターまでまっしぐら!
俺と笹凪は競うようにシミュレーターポッドに駆け込んでスタートキーを回して起動シークエンスをこなしてミッション選択画面をどっちが先に表示出来るか、どっちが先にミッションにログイン出来るかを賭けていた。
「よしミッション入った!」
『残念、また僕の勝ちだね! もう走ってるよーん』
「またかよ!」
小柄だが笹凪はすばしっこく、起動シークエンスもスムーズで一度も勝てていない。
なんだか悔しいが。
『これで今週はジュースの心配なくなったな! とうまに五連勝〜!』
「ちっくしょー! なんだってお前そんなに早く出来るんだよチートか!?」
『まっ、僕の方が入学、一月早かったからねえ。年の功ってやつ?』
「むっかー。だがまだ勝負は決まってない! この走行ミッションは先にゴールに着いた方が勝つ! 今度こそ負けないぞ優!」
『へへーん、やってごら〜んとうま!」
オクスタンの点検とシミュレーターを通じて、俺たちはいつのまにか自然とお互いの苗字ではなく名前で呼び合うようになっていた。




