1 その能力
初めて書く作品です。文章面でのアドバイス欲しいです。ただし、優しい言葉でお願いします。感想、評価も良ければください。
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「ちょっと! 何するんですか!」
早朝の街灯、俺との距離僅か2mくらいで、制服を着た一人の少女が男二人に絡まれていた。
はぁ、朝から面倒事に巻き込まれそうだな。俺はそんな事を思ってベンチから、立ち上がる。
「ねぇ、嬢ちゃんどこの制服?」
その一言を聞き、俺は少女の制服をチラッと見た。俺が着ている制服と男女だから多少の違いはあるが、同じものだった。
その事実に気付いた俺は直ぐにこの場を去ろうと決意した。だが、時すでに遅し。
「あれ、月城君!待たせちゃった?」
う…最悪だ。捕まってしまった。てか、どうして俺の名前を知ってるんだよ。
よし、こうなった時の対処法は人違い作戦である。
「ヒトチガイデハ。ソレジャ…」
「てっ、おーい!」
さすがに無理があったか、腕を捕まれてしまった。どうやらこの方法で乗り切るのはダメみたいだ。
「そこは助けてくれる所でしょ!」
「いや、自分でどうにかしろよ。人に頼るな」
そう言って捕まれた手を払い、再びそっぽ向いて歩きだした。
「なんだてめえ!」
しかし、それもどうやら無理らしい。今度は絡んでいた男の方に捕まってしまった。
「他人に聞く前に自分から名乗るのが、礼儀って教わらなかったか?」
朝の至福の時を邪魔され、イライラしてつい喧嘩腰みたいな口調になってしまった。
「舐めた口聞くじゃねぇか」
カンカンに起こっている。俺はさっき言った事を早速後悔してしまう。
「兄貴、こんなガキには分からせちゃいましょうしょ」
「言葉にちと気いつけろよ!」
そんな言葉と共に俺の顔面めがけた重い渾身のストレートが放たれる。
「バッ」
だが、俺の顔面には到達しなかった。少女が手で受け止めたのである。
「何のつもり?」
「なっ、こいつ…」
「暴力は聞いてませんよ」
「お前たちまさか、養成学校の生徒か?それなら、ちょうど良い。俺たちはこの街にきたばかりでな」
男はそう言うと、突然手に炎を宿した。
「いくぜ。嬢ちゃん」
男はその炎を少女に向けて放った。
「ふっ、炎の扱いがなってないわ」
今度は少女の方が炎を体全体に纏った。そして、飛んできた炎を消し炭にしてしまった。
「分かった?逃げるなら今のうちよ。これ以上は手加減出来ないから」
確か、俺も聞いた事がある。養成学校の最強の炎使い。獄炎の小宮渚…
よもや、こんな可憐な少女だったとは。もっとゴツゴツした感じかと思っていた。
「はっ、やはりお前が小宮渚か、嬢ちゃん。噂には聞いてるぜ。上からの命令でな、お前を捕らえさせてもらうぜ」
こいつらただのチンピラではないな。
「捕らえる?そんな事できるわけないでしょ」
小宮渚はそう言うと、纏っていた炎で男二人を攻撃する。
男二人はそんなのお構い無しに、小宮渚に向かって爆弾らしきものを投げつけた。
その瞬間、俺の視界は真っ白に染まった。
気付いた時にはどこか違う空間に飛ばされていた。もちろん、巻き込まれる形で。
「う…ここはどこ?」
閃光の輝きにより、まだ視界がおぼつかないのか小宮渚は地面にへこたれている。辺り一帯は薄暗くじめじめしている。だが、電球はあるらしい。電気の明かりは見える。そして、その空間はとても広かった。
安心して一息つくのも、束の間である。俺もようやく視界が見えてきたのは良かった。
「がうぅっううう!」
どうやら、俺たちはこれから目の前にいる悪魔のような怪物と戦わなければならぬらしい。
「がるう!」
再び雄叫びをあげる。そいつはなんとも形容しがたい、とても醜い姿をしていた。まるでおとぎ話に出てくるキメラのような。
「なっ、何あれ!?」
ここで小宮渚もそれに気付いたのか、驚くように口を開いた。
「明らかに自然界の生き物ではない、あれは人工的な生物だろう」
「いや、そんな事はみりゃ分かるわよ」
「なら、聞くな。こっちは朝の至福を邪魔された上に化け物と戦わされるなんてごめんだ。お前が相手してくれ。俺はお前の巻き沿いなんだから」
はたから見れば、女の子に戦わせ自分だけ見物なんて屑である。だが、それを普通と呼ぶべき理由があった。
「言われなくてもやるわよ。あなた無能力者と変わりないんでしょ。派手な白の髪色してるだけで」
そう、そう言う事である。俺は白の髪と両目の色が違う赤と青のオッド・アイの状態で生まれてきた。目の色はコンタクトでごまかせるが髪は染めても1日寝れば元通り。稀に進能力の副作用で体に何らかの異変が生じる事がある。俺は更に稀で異変だけ生じて、能力は授からなかったタイプ、と表向きはなっている。
「月城君、邪魔にならないように私の後ろでじっとしていなさい」
俺は言い付け通り、後ろで見守っている事にした。
「ドンドンドン」
どす黒い足音を立てながら怪物はこちらに近づいてくる。
小宮渚は彼女の能力である炎を纏った。そして、炎の翼で空高く飛び上がった。
「ドカンッ」
炎の玉が放たれる。
「うーん、そう簡単にはいかないか」
あの小宮渚の炎でさえ、怪物の表面は傷ひとつつかない。
「ドカンッ、ドカンッ、ドカンッ、ドカンッ」
更に多くの炎が放たれる。今度は一斉集中、一ヵ所に全てを注ぎ込む。
少し、焦げはしたがそれでも全然攻撃は通らない。
「があああぅ!」
ひとっ飛び、空に高く飛び上がり、小宮渚を手か足か分からない器官でひと降り。
「ドーンッ!」
気がついた時には、小宮渚は地面に叩きつけられていた。
まじか、見た目とは裏腹に硬いし、機敏性もある。
俺はふと、左腕の時計を見た。
「8時10分か…」
学校が始まるまで、20分。
「よし、交代だ」
そう呟いて、俺は小宮渚の前に出た。
「ちょっ…何してるの?」
そんな言葉をよそに怪物に向かって歩いていく。
「おい、デカぶつ。こっちだ」
「がるぅっ!」
「終わりだ。」
そう言った後、俺はカラーコンタクトを外す。これで、オッド・アイが現れた。
準備は整った。
そのまま、両手を天に掲げ。手を広げ優しくそっと手のひらにある何かを握り潰すように閉じた。
「『万物破壊』」
そう唱えた瞬間、全てが壊れた。
怪物、わずかに光ってた照明。そして、この空間さえも崩れ去ろうとしていた。
「行くぞ」
俺は小宮渚の手をとった。
「『空間変転』」
俺が数時間前に座っていたベンチの前に戻ってきていた。
「なんなのあなたは…」
ポケットにしまっていたカラーコンタクトを取り出して俺は自分の両目に着けた。
これで、いつもの黒い目が現れる。
何故戦う時はコンタクトを外すのか。
簡単に言えば、そうすることで俺の能力の威力が上がるのである。
そう、つまり俺は生まれながらの中二病なのである。
「後十分で学校が始まるぞ。それじゃ」
俺は急ぐように言い、その場を去った。