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祓い屋霧斗  作者: さち
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人喰い鬼・第4話

 翌日16時、ランチタイムも午後のティータイムも終わり店内が静かになった頃、まずやってきたのは高梨と百瀬だった。

「いらっしゃいませ」

「お邪魔します。今日はすみません」

声をかけた晴樹に高梨が申し訳なさそうに頭を下げる。晴樹はクスクス笑いながら首を振った。

「かまいませんよ。きりちゃんには奥の事務所を使ってもいいからと言ってありますけど、どうします?」

「奥のテーブルをふたつほどお借りしてよろしいでしょうか?周りには話が聞こえないようにしますので」

「いいですよ。きりちゃんは今着替えてますから、すぐにきますよ」

にこりと笑ってうなずいた晴樹が奥のテーブルに案内する。テーブルをふたつくっつけて広くすると高梨は奥の席に、百瀬はその向かいに座った。そこへ私服に着替えた霧斗がお冷やを持ってくる。

「こんにちは」

「こんにちは。無理を言いましてすみません」

「お久しぶりね」

霧斗を見た高梨が立ち上がって一礼する。百瀬はにこりと笑って挨拶をした。

「そんなに気にしなくていいですよ。高藤さんの無茶振りは今に始まったことじゃないし。百瀬さん、お久しぶりです。お元気そうで何よりです」

「こんな素敵なカフェで働いてるなんて知らなかったわ。しかも高藤さまは常連だっていうじゃない?いつのまにか高梨さんも常連になってるし」

仲間外れなんてずるいとわざと拗ねたように言う百瀬に高梨は苦笑いを浮かべた。

「高藤さんと高梨さんにはご贔屓にしていただいています。気に入ってくださったらまたいらしてくださいね?」

あらかじめコーヒーを注文されていたため晴樹がコーヒーを持ってやってくる。にこりと笑う晴樹に百瀬も笑顔を見せた。

「ぜひ今度はプライベートで来させていただきます」

「お待ちしていますね」

晴樹はそう言ってうなずくとメニューを差し出した。

「きりちゃんからコーヒーの注文はもらってましたけど、何か召し上がりますか?」

「あら、美味しそう!じゃあチーズケーキをいただいてもいいですか?」

「わかりました。高梨さんときりちゃんは?」

「私はコーヒーだけで大丈夫です」

「俺も大丈夫です」

高梨と霧斗の返事を聞いた晴樹は「じゃあすぐにお持ちしますね」と百瀬に告げてテーブルを離れた。


 晴樹がショーケースからチーズケーキを出しているとカランと音をたててドアが開く。入ってきたのは高藤と小関だった。

「晴樹くん、久しぶりだね」

「お久しぶりです、高藤さん。お元気そうで安心しました」

にこやかに声をかける高藤に晴樹も笑顔で答える。高藤はショーケースを見ると「私にもチーズケーキをもらえるかな?」と言った。

「コーヒーと一緒にお持ちしますね。お席にご案内します」

にこりと笑った晴樹がケースを持ってテーブルに案内する。高梨と百瀬は立ち上がって高藤を向かえた。

「高藤さま、ご無沙汰しております」

「うん。今日は同席させてもらうよ」

高藤が席につくと高梨と百瀬も座る。小関は霧斗の隣の席に座った。晴樹が高藤と小関のコーヒーとケーキを持ってくると高梨は短く呪を唱えた。周りから見えないわけではないが認識されずらくばり、注意を他にそらす術。これで物騒な会話をしてもその内容を聞かれることはないし、顔を覚えられることもないのだ。

「霧斗は急なことですまなかったね」

「いえ、あなたの急なことはいつものことですから」

遠慮のない物言いに高藤は気にしたふうもなく笑ってコーヒーを飲んだ。

「では高梨くん、説明を」

「はい。ニュースなどでご存知かと思いますが、今回の依頼内容は連続猟奇殺人事件についての調査です。依頼主は警察になります」

「調査?調査だけ?」

高梨が話した依頼内容に百瀬が訝しげな顔をする。それには高梨も微妙な顔をしていた。

「はい。警察としては人間を犯人にしたいようで。というか、人間ではないものがいるなどということは信じていないようです」

「じゃあなんで護星会に依頼したんだ?」

眉間に皺を寄せて霧斗が尋ねると苦笑したのは高藤だった。

「上層部の者は人間でないものが起こした事件もあることを知っている。だが、そういったものを信じないものも残念ながらいる。今回の依頼は上層部から圧力がかけられて仕方なくした、といったところだろう」

「つまり、犯人は自分たちが捕まえるから犯人に繋がる手がかりを探せ、と?」

「私たち、探偵じゃないんですけど?」

高藤の言葉に霧斗と百瀬が呆れたように言う。高梨も同じ思いなのか苦い顔をしていた。

「まあそう言うな。調査の結果、人間の手に負えないわかれば、あちらもこちらに任せるしかなくなるさ」

穏やかに微笑みながら言う高藤に霧斗は肩をすくめた。

「それで、その調査ですが、警察の人間を立ち会わせてほしいと先方から要望があります」

「警察を?それ、大丈夫なの?」

術師の仕事に一般人を同行させることはほとんどない。見える見えないに関わらず、一般人は足手まといになるからだ。

「一応、自称霊感があるという人らしいですが、どうしますか?」

「翔に守らせるからいいよ。翔は今回ほぼ見学だからね」

そう言ったのは高藤だった。

「彼には結界など、守りの術を主に教えているからね。自分と一般人ひとりくらいなら守れるよ」

「高藤さんは小関さんを術師にするつもりですか?」

尋ねたのは霧斗だった。小関は妖を見ることはできない。その状態で術師になるのは危険だ。

「道具を使えば見ることはできる。彼はこのまま一般人として暮らすには力が強すぎるからね。少なくとも自分の身を守れる力はつけさせるつもりだ。今回は今まで見ることがなかった危険をその目にする絶好の機会だと思ってね」

「危険すぎるのでは?」

百瀬が眉間に皺を寄せて言う。高藤は「多少危険なくらいがいいさ」と笑った。

「足手まといにならないとは言えませんが、自分の身と警察の人くらいなら守れます。どうか同行させてください」

そう言って頭を下げる小関に霧斗と百瀬は苦笑しながらうなずいた。

「わかりました」

「ま、ダメだと判断したら応援を呼びましょ」

「ありがとうございます」

「では、警察のほうには了承の旨を伝えておきます」

高梨の言葉にうなずき、早速明日の夜に隣町に行くことに決めた。

 ちなみに、楓に会ってみたいと言っていた高藤だったが、高藤たちがいる時間に楓が店に出てくることはなかった。

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