髪が伸びる雛人形・第6話
電話を終えて事務室から出てきた霧斗は微妙な顔をしていた。
コーヒーを飲みながら仲良くおしゃべりをしていた春樹と毛倡妓は霧斗の顔を見て、思わず顔を見合わせて首をかしげた。
「きりちゃん?どうしたの?」
「何かよくない電話だったのか?」
春樹と毛倡妓が尋ねると、霧斗は首を振って椅子に座った。
「和真さんから電話で、小関さんが神社を出たって教えてくれました」
「あら、もう教えてもらうことがなくなったの?それとも何かトラブルでも?」
驚いたように言う春樹に霧斗は首を振った。
「いえ、そうではなくて、高藤さんの弟子になったって」
「あらまあ」
霧斗の言葉に春樹が驚いたような顔をする。その反応に毛倡妓は不思議そうな顔をした。
「高藤というのは術師なのか?」
「そうだな。今は引退してるけど、元はかなり腕のいい術師で、俺が世話になってる術師の組織を作ったひとりでもあるな。今でもかなり影響力がある。俺も高藤さんには敵わない」
「高藤さんはうちの常連さんでもあるのよ。ここ最近いらっしゃらないなって思ってたけど、弟子をとったからだったのね」
春樹の言葉に霧斗はうなずいた。
「術の基本を学んだ小関さんがもっと詳しく知りたいって言ったみたいで、それなら高藤さんのほうが詳しいからって紹介したみたいです。今は高藤さんの家に住み込んで勉強してるみたいで、高藤さんも久しぶりの弟子だからはりきって色々教えてるみたいです」
「まあ、高藤さんなら安心じゃない?」
「それはそうなんですけどね」
うなずきながらもどこか不満そうな霧斗に春樹は苦笑した。
「絶対あとで面倒な仕事よこされそう」
「それはまあ、仕方ないかもね」
霧斗の言葉を否定することなく春樹は苦笑した。
「でも、万事うまくいってよかったわね?あたしは楓ちゃんと知り合えたし」
そう言ってにこりと笑う春樹に霧斗は苦笑するしかなかった。