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祓い屋霧斗  作者: さち
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行方不明者と目撃者・第3話

 晴樹と桐原がカフェに戻ると、霧斗がまだ事務所にいた。

「きりちゃん、もしかして待っててくれたの?」

「晴樹さん、おかえり」

戻ってきた晴樹を見て霧斗がホッと息を吐く。晴樹は苦笑すると霧斗の頭をくしゃっと撫でた。

「ただいま。心配かけてごめんなさいね?」

「いえ。桐原さんもありがとうございました」

「いや、どうってことないよ」

桐原はにこりと笑うとソファに座った。晴樹もさすがに疲れたようにソファに座る。霧斗はそれを見るとふたりにコーヒーをいれた。

「どうぞ。お店のだけど」

そう言ってケーキとコーヒーをふたりに出す。警察署に行ったのは開店して1時間ほどしてからだったが、もう夕方になろうとしていた。

「ありがと。さすがにお腹空いたわ」

「昼休憩とかないの?」

さすがに驚いたように霧斗が尋ねると晴樹は無言で肩をすくめた。

「というか、晴樹さん、殴られました?頬が腫れてますけど」

「まあ、これは、事故というか、なんというか…」

歯切れの悪い晴樹の言葉に霧斗が首をかしげた。

「どんな理由であれ殴られたことは事実です。このことはきちんと抗議しますから」

桐原が厳しい表情で言うと、晴樹は「そのへんはお任せします」と苦笑した。

「きりちゃん、あれからお店どうだった?」

「とりあえず看板はcloseにして、いた人たちで情報共有して解散しました。高梨さんが高藤さんに連絡しておいてくれるそうです」

霧斗の言葉に晴樹は「大事になっちゃったわねえ」とため息をついた。

「今回のことは仕方がないかと。晴樹さんや霧斗くんに普通に見えるものが私たちには見えない。見える人がいるということを理解できない人は、行方不明者がすでに亡くなっているということを知っている晴樹さんを疑うのはしょうがありません。誤解をとくのは大変そうですが」

「そうなのよねえ。若いほうの刑事は話がわかりそうだったけど、見えないんじゃどうかしらねえ」

「行方不明だっていうあの女の人について何か聞きましたか?」

ため息をつく晴樹に霧斗が尋ねる。晴樹はコーヒーを飲みながら首を振った。

「隣の県の人ってことしか聞いてないわ。というか、知ってることを吐け!って感じでもうあたしが犯人って感じだったわ」

「うわあ…」

晴樹の言葉に霧斗は顔をひきつらせた。仕事柄、霧斗も厄介事に巻き込まれることはあるが、警察関係と関わりたくないと心底思っていた。

「きりちゃん、前にここに来る死者はこの辺りで亡くなった人って言ったわよね?」

「ええ、言いました。だから、あの女性は少なくともこの近くで亡くなってるはずです」

「ということは、まだ発見されてない死体が近くにある?」

桐原の言葉に霧斗がうなずく。さすがの晴樹もそれには青ざめた。

「この近所で死体がありそうなところって…」

「というか、それを見つけて通報したらまた晴樹さんが疑われそう」

霧斗の言葉に桐原がうなずく。だが、晴樹は小さく首を振った。

「死体をそのままになんてしておけないわ。早く見つけて弔ってあげないと可哀想よ」

「でもなあ」

晴樹の言うことはわかるが厄介事に自ら首を突っ込むのも避けたい。霧斗がそう思って考え込んでいると晴樹のスマホが鳴り出した。

「あら、電話だわ。誰かしら」

見覚えのない番号に首をかしげなから晴樹が電話に出る。電話をかけてきたのは刑事の村木だった。


 夜21時。晴樹と霧斗、桐原は近くの公園で村木と待ち合わせた。晴樹への電話で会って話したいことがあると村木が言ってきたのだ。本当は晴樹と霧斗だけで会うつもりだったが、桐原が何かあったとき弁護士の自分がいたほうがいいからと同行を申し出てくれたのだ。

「遅くなってすみません」

公園で待っていると村木が走ってやってきた。

「いいえ。あたしにまだ何かご用かしら?」

「えっと、頬は大丈夫ですか?笹原さんを止められなくてすみませんでした」

村木がそう言って頭を下げる。晴樹は苦笑すると「大丈夫よ」と言った。

「そんなことを言うために呼び出したわけじゃないでしょ?」

晴樹の言葉に村木は気まずそうな顔をしてうなずいた。

「あの、あなたとそっちの人は死んだ人が見えるんですよね?」

そう言って村木が霧斗を見る。霧斗は無言で小さくうなずいた。

「そうね。でも、それがどうしたの?」

晴樹の問いかけに村木は意を決したようにバッと頭を下げた。

「お願いします!力を貸してください!」

「どういうこと?」

「あの行方不明者の女性、犯罪に巻き込まれた可能性があったので捜索していたんです。でも、あなたたちは彼女はすでに亡くなっていると言った。現状、彼女についての情報はあなた方しかないんです。亡くなっているなら遺体も見つけてあげたいし、力を貸してもらえませんか?」

村木の言葉に晴樹と霧斗は顔を見合わせた。

「それは、あなた個人の願いですか?その場合、また晴樹さんが疑われるようなことになりかねませんが、どうでしょう?」

そう言ったのは桐原だった。桐原に霊は見えない。だが、カフェの常連として晴樹や霧斗が霊が見え、それに敬意を払っていることは理解していた。ふたりが見えることを利用され、また疑われて連行されるようなことにならないか、桐原はそれを心配していた。

「それは大丈夫です。というか、上司から協力してもらうようにって指示が出てて。なんか、断れない筋から話があったとか?」

それを聞いた霧斗はため息をついた。高梨が高藤に連絡すると言っていたが、どうやら高藤は警察にも影響力を持っているようだった。

「わかりました。では、俺が協力しましょう」

「え、あなたが?」

驚いたように言う村木に霧斗は名刺を差し出した。

「祓い屋?」

「俺はいわゆる怪奇現象とかの相談を受けて解決する仕事をしてるんです」

霧斗の説明を聞いた村木は「へえ…」となんとも曖昧な返事をしてから霧斗を見た。

「えっと、じゃあよろしくお願いします」

そう言って頭を下げる村木に霧斗は苦笑しながら「こちらこそ」と言った。

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