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魔導師ギルド実技試験の悪夢

 筆記試験は、制限時間の2時間掛からずに、殆どの人が退室したけど、約2名スーリヤさんの拳によって、物理的に眠らされたらしい。


 少しの休憩を挟んで、実技試験が行われる。


 実技試験は、受験番号関係無しに、高齢者から行われる。

 アレイシアさんの話によると、この試みは、今回かららしく、理由は、年齢が高ければ、それなりに魔法の研鑽を積んでいるだろうから、若い人は、先輩の魔法を見て、参考にしたり自分に対する課題を発見出来る可能性が有るからと言う事らしい。


 最初は一般受験生の冒険者の人達から行われた。


 冒険者の人達の魔法は、主に発動時間短縮、設置型魔法、二重詠唱と言った実戦の中で鍛えられた物が多く、授業の中で磨き上げた学生の魔法とは明らかに毛色の違いを感じさせる物だった。


 そして、学生の受験生は、と言うと、効果追及型の極大魔法が多く、珍しいところでは、ノーナ先輩の設置型連鎖魔法これは、どう考えても極悪トラップ用の魔法でしかない。

 あとは、サファイア先輩の不思議な追加効果のある魔法、電撃を受けたら凍ってしまう等、オリジナルの魔法を披露する人も何人かいた。

 そして、驚いたのは、ルナさんの、積層型魔方陣を用いた、範囲限定型殲滅魔法と、レイナさんの魔法のバリエーションと発動時間、精霊魔法、竜言語魔法、超古代魔法、全てが発動時間0のタイムラグ無し、スーリヤさんよりも速いし、魔力を練り上げてすらいないと思われる神速の発動に、流石のスーリヤさんも大きく口を開けて驚いていた。


 一通り全員が終って、僕の名前が呼ばれ、実技を審査してる、壮年の男性が、


「レオ君、君のレポートを読ませて頂いたのだが、理論的には、理解出来るものの再現不可能に思える物が在ったので、こちらの指示する魔法を使ってもらいたいのだが、構わないか?」


 この審査員の男性、こんな魔法、出来るわけ無いだろうと、否定的な態度ではなく、興味津々といった感じで、見るからにワクワクしていた。


 先ずリクエストされた魔法、


 爆縮クラスター

発動効果を分かりやすく見せる為に、演武場の外周部に的として丸太を並べてもらった。

 そして、魔法を発動する。

 この魔法は、炎属性のファイアウォールをサークル状に発動し、中央の的に直接重力魔法を発動し、周りに展開したファイアウォールを、重力魔法の中心に集めて収束したファイアウォールの熱で一気に的を溶かし、的が溶けた状態で重力魔法のベクトルを180゜反転させながら、溶けた的の中央に爆裂魔法を掛ける、と言うかなり複雑な魔法制御が必要なんだけど、結果は、アレイシアさん以外の審査員の人達、ほぼ全員が放心状態になっていた。


 審査員の目には、サークル状に発現したファイアウォールの炎が一点に凝縮して、次にそれが、超高熱の散弾として周囲に撃ち出され、外周部に置かれた丸太に当たると、蜂の巣状に穴が開き、穴から炎が吹き出して丸太を燃やし尽くした様に見えたはずだと思う。


「如何でしたか?」


 僕が聞くと、我に返った審査員が集まって相談を始めだした。

 一度この魔法を見ているアレイシアさんは、僕の方を見てサムズアップしている。

 そして、その隣の席では、スーリヤさんが口を開けてこっちを見ている。

 あんなに口を開けてたら、綺麗な顔が台無しだと思って見ていたら、アレイシアさんがスーリヤさんを突っつき始め、いがみ合いが始まった。


「レオ君、少し質問させて貰ってもいいかね?」


 最初に僕に声を掛けてきた、壮年の審査員が、再び声を掛けてきたので、質問に答える事にした。


「先ず、どう言った発想で、この様な魔法を思い付いたのか教えて欲しい。」


「最初は、炎魔法のフレアの拡散する熱量を一点に纏めて射ち出す事を考えて、それを成功させた後、次は、一点に凝縮させようと思ったんです。

 で、直立型のインフェルノを同時に5つ程展開して、凝縮させると、熱量が高過ぎて、的が蒸発しました。

 これは、使用魔力の割に効果範囲が狭いので、温度を下げて、溶けた物や燃え滓を周囲に撃ち出せればと考えて、後は試行錯誤の連続でした。」


「ふむ、成る程では次に、撃ち出された散弾が丸太にしか当たってないのは、どうやったのか?」


「それは、重力魔法のベクトルを反転させる時に、目視で、的にマーキングして向かう方向を操作しただけですが…………。」


「儂、頭が痛くなってきたわい、お主が何気なく言った技術の全てが、現在の魔法の常識を遥かに超えておるわ!

 レポートの中で最も難解だった魔法を再現できたのだから、他の魔法も滞りなく再現出来るものとして、錬金術師ですら、出来ん様な物質変換が出来るそうだが、見せてくれるか?」


「じゃあ、丸太の燃え滓から、ダイヤモンドでも作りますか。」


「ダイヤモンドとは、金剛石の事か?」


「はい、そうですよ、木の燃え滓や炭から作ると簡単なんですよ。」


 そう言いながら外周部の、丸太の燃え滓を加工する、炭素以外の不純物を排除して取り出した炭素の結合をイメージして、全ての炭素原子を掌の上で重力魔法で加圧すると、掌の上に拳大の真ん丸の透き通った水晶玉の様なダイヤモンドが現れた。


 出来上がったダイヤモンドをアレイシアさんに渡すと、鑑定魔法を使って見たらしく、


「凄い!本物じゃ!ダーリン妾にくれると言うのか?婚約指輪の代わりに、妾にくれるのじゃろ!」


 と信じられない程に大はしゃぎしている。

 ただ鑑定して貰いたかっただけなのに、取り戻して炭に戻すつもりだったのに、取り戻し辛くなった。

 よく見ると、アレイシアさんの隣に座っているスーリヤさんが物欲しそうに、アレイシアさんを見ている、てか、あと5人の審査員、全員が物欲しそうに見ていた。

 仕方ないので、心を鬼にして、


「アレイシアさん、ちょっと良いですか?」


 とアレイシアさんの手中のダイヤモンドに軽く触れると、ダイヤモンドが空中に霧散した。

 すると、アレイシアさんの目から大粒の涙がポロポロと流れはじめ、


「ダーリンは、妾の事が嫌いなのか?」


 と言った後は声にならず、本格的に泣きはじめると、レイナさんが、


「あれは、無いよ、糠喜びさせて、理事長が、可哀想だわ。」


「そうね、レオ君理事長先生を慰めてあげなさい!」


 とルナさんが続けて言った。

 僕は、泣きじゃくるアレイシアさんの両脇に腕をとおし持ち上げて、審査員席から、演武場に降ろすと抱き締めて、


「この場で、アレイシアさんだけに渡すのは問題があるので、後でちゃんと渡すから、泣き止んでもらえませんか?」


 そう言うと、アレイシアさんは、


「約束じゃぞ!」


「はい!」


「ならば、キスして欲しい。」


「……頬っぺたで良いですか?」


「ダメじゃ唇しか許さん!」


「分かりました。」


 と軽く唇にチュッてした瞬間、アレイシアさんに頭を掴まえられ、逃げられなくなった。

 逃げようにも、スゴい力で頭をホールドされている、エルフってこんな力強い種族なのか?

 頭が動かせないまま、止めて下さいと言おうとしたら、唇の中にアレイシアさんの舌がネジ込まれ、身体から力が抜けてしまった。

 後の方では、レイナさんが、


「ありゃぁ~!理事長、上手いことやったわね(笑)」


「レオ君わ墜ちちゃうかしら?」


「墜ち無いんじゃない?あの子、自制心強いから(笑)」


 レイナさんとルナさんの会話が聞こえる。


 どの位経ったのだろうか?アレイシアさんが唇を離して、


「ダーリンの唇、堪能させてもらったわい(喜)」


 と言いながら、アレイシアさんは、機嫌良く審査員席に戻って行った、入れ替わりに、スーリヤさんが寄って来て、


「私もキスしたら貰えたりする?」


「貴女にも後で渡しますから、今はほっといて下さい。」


「ん、分かった。」


 と審査員席に戻って行った。


 このギルドの試験、これで良いのか?かなり問題のある組織じゃないのか?

 もう突っ込み処が多すぎて、何も言う気にならなかった。

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