ドラゴン串焼きにつられる。
レダは、それまで何日かドラゴンと2人?で過ごした森を出ると、森のすぐ北に位置する村を眺めると。
この村は、あまり観察が出来なかった、と少し残念に思いながら、今までは、村の外から覗き見るでけじゃったが、最後なので少し村の中を通ってみるか!
そんな事を考え、現在レダは、エルディオス(名無し)を抱き、後ろを付いて来る、幼女と化したドラコンの3人で、村の目抜通りを歩いている。
街へは、少し遠回りになるが、やはり村の中に入った方が、人々の暮らしがよく見て取れる。
そんな事を考えていると、進行方向から、何やら美味しそうな香りが漂ってくる。
すると、後ろを歩いていたはずの幼女がレダを追い抜き、串焼きを焼いている店先の前でピタリと動かなくなった。
ドラコンは、腹を空かしているのか?
そう言えば、儂も少し前に、ドラゴンに食べ物を取って来いと命令していたんだった。
ドラゴンが食い物じゃなく、赤ん坊を持って帰ったので、忘れていたが、そろそろ何か食わねば儂の身体も持たんな。
「店主よ、旨そうな香りじゃな、その串焼きを5本程、包んでくれんか?」
「へい!毎度、ん?お姉さん村の人じゃないね。」
「あぁ、少し所用で立ち寄ったのだが、ついこの旨そうな匂いに誘われてしまったのじゃ。」
「美人のお姉さんに、そう言われると嬉しいねぇ、よし!綺麗なお姉さんには、1本オマケして、6本で大銅貨1枚でいいよ!」
レダは、ポケットの中に数枚のコインを出現させながら、
「それは、ありがたい、銀貨しかないのだが、釣りはあるか?」
「あっちゃ~、お姉さん釣り用の大銅貨が8枚しか無いよ、大銅貨2枚で串焼き15本渡すから、堪えてくれるかい?」
「まぁ、こちらも細かいのを持って無かったから、仕方ない。」
「ヤッパ別嬪さんは気前がいいねぇ!次に又来る事があったら、サービスするからね。」
そんな感じで串焼きを買うと、ドラゴンがドレスの裾を摘まんでこっちを見て、ヨダレを垂らしている。
「これは、串焼きだ、言ってみろ。」
「ぷしやち?」
「惜しいが少し違う、く·し·や·き、ハイもう一度、言ってみろ。」
「く·し·や·き?」
「おう!言えたじゃないか!ヨシ1本やろう(笑)」
ドラゴンに串焼きを1本渡し、自分も1本食べてみた。
噛み締めると、口の中に暴力的に溢れ出る肉汁、甘辛く味付けされたタレとアクセントになるピリ辛の香辛料が実に良くマッチしている。
ハッキリ言って、絶品だった。
そしてドラゴンを見ると、串から肉を一気に引き抜き、両の頬を膨らませてモグモグしながら、蕩ける様な笑顔を見せている。
途端に、街に行くのが惜しくなってしまった。
店に引き返して、店主に、とても旨いと感想を言うと、街の方では、兄貴が屋台で同じ味の串焼きを売っていると教えてくれたので、街への足取りが軽くなった。
そして街への道中は、ドラゴンの目の前に串焼きをぶら下げて、言葉を教えながらの道中となったが、まるで目の前に人参をぶら下げられた馬の様な勢いで、言葉を覚えていった。