レダ
今回、レイナ(レダ)の自分語りです。
レイナ《本体》は、レダ《分身体》が帰った後、部屋にルナ《本体》を呼び、心の内を語り始めた。
「ルナよ、少し独り言に付き合ってはくれんか?」
「レオの事?」
「それも有るが、儂の事じゃ。
お主も知っていると思うが、儂には、寿命と言う概念が存在しない。
儂が、天界を飛び出してから、1000年以上の年を人の住む下界で放浪の生活を過ごした頃、天界より追放の知らせを受けた。
その事に対して、儂は悔いは無かった。
むしろ天界と言う古巣の柵から解き放たれて、自由を手に入れたと喜んでいた程じゃ。
そして、人の社会に根を降ろして100年程、人間として暮らして、儂の友となった人間達が、次々に、寿命を迎えて天に召されて行くのを見続けて、寂しさを覚えたのじゃ。
100年の間に、天に召されて行く者も居れば、新たに生まれて来る命とも出会いを重ねたが、儂は、この下界において、親しい友人を常に、天に召される命を見送り続けるだけじゃった。
儂は、それが虚しくて、もう人間の社会の中に根を降ろしはしまいと思っておった。
じゃが、しかし、再び放浪生活を始め再びの1000年を経て、お主と出会い、悠久の寿命を誇る龍種のお主ならば、と放浪の連れ合いにと捕獲したが、依りにもよって、レオを拾ってきおった。
まぁ、一度は、人の子供を育て上げてみたいと言う願望が有ったので、お主と育てる事にしたのだが、儂自身、これ程レオに情が移るとは思わなんだ。
今はレオの成長を見届けていくのが楽しいのじゃが、レオが天寿を全うして、天に召されて行く事を思うと身が裂かれる程辛いのじゃ。
せめて、あの子が阿呆で手の掛かるクソガキならば、心も痛まんじゃったろうに、儂が今まで見た中でも、あれ程素直で優しい人間はおらなんだ。」
いつの間にか、グラスに入った酒をあおりながら、涙を流すレダに、
「いつの間に、お酒飲み始めたのよ!
ところで、レダの奇跡で、レオの寿命を延ばしたり出来ないの?」
「出来ぬ事は無いが、100年の寿命が200年になる程度じゃ、中途半端に延ばしても、更に情が移るだけではないか。
せめて、儂の身体が普通の天使の身体なら………」
と再びレダは、グラスの酒をあおる。
「レダは、上位の天使って言ってたけど、普通の天使と上位の天使って、どこか違うの?」
レダは、空になったグラスに酒を注ぎながら、
「普通の天使であろうが、上位の天使であろうが同じ身体じゃ!
ただ、儂の身体だけが違うのじゃ、儂の身体は、女神の器なのじゃ。
元々、儂は、天界と下界の連絡要員を纏める上位の天使だったのじゃが、天界と下界を隔てる次元の断層は、実体を持った者では通り抜ける事が、出来んのじゃ。
如何に屈強な身体と精神を持つ天使であろうとも、1往復すれば、元の身体に戻すのに100年は、掛かる程ガタがくるのじゃがそれでは余りにも効率が悪いと、最高神が、何度、次元の断層を抜けても損耗する事のない、女神の器を数人の上位天使に賜れたのじゃ。
その1人が儂で、頻繁に下界に足を運ぶうちに、愚かしくも、下界に心を奪われて、人間の生き様を近くで観察したくなって、天界に帰る事を放棄して1000年の後に天界追放を言い渡されたのじゃ。
そして、今なお朽ちる事の無い儂の身体は、その精神を手放す事も出来ず、堕天使と成ってなお、これからも人の生き死にを見守り続けなければならんのじゃ…………………………カルナよ、つまらぬ話しに付き合わせて………すまぬ……」
と言って、いつしか酔いの回ったレダは、テーブルに突っ伏したまま眠りに就いた。
ルナは、
「仕方ないお姉ちゃんだこと。」
そう言ってレイナをベッドへと運び、自分の部屋へと戻って行った。




