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絶対無職★シープマン  作者: taro_hanabusa
1.ヒーローなんてしたくねぇ
2/155

1-2


おれの住まいは裏町の、「開発未定」地区にそびえる築50年のおんぼろビルで、

「1」から「4」まである階すべてが死んだ親父の名義のままだ。


立地の悪さもさることながら、かなり特殊な造りのせいで、貸しテナントは埋まらないから当然トーゼンカネも入らない。


見た目は廃墟、中身も廃墟。


年中故障のエレベーターか、ポロポロ崩れる外階段の、地獄の二択で上がった2階がわが家の狭い玄関だった。



「お帰りなさい! 羊一ヨーイチさま!」


ドアを開けると「待ってました!」と、

おれの腰丈くらいの背をしたちっこい幼女が飛びついてきた。


早起き好きのぱっちりおめめ、お料理好きのエプロン姿。

けなげで甘いお子さまボイスは、おれに残ったわずかなばかりの「罪の意識」に訴えかける……。


「洋一さまのお戻りを、ベルはずーっと待ってましたの! 千夜チヨさま! 千夜さま! お戻りですわ!」

 

両手をぐいぐい引っぱられ、リビングに引きずり込まれるおれ。


ベルの騒ぎを聞きつけたのか、部屋の奥からややのっそりと、寝起きの猫のような動きで別の女が姿を見せた。


「……遅かったわね、奈良部ナラベくん。プレゼントでも買ってたのかしら?」


もちろん、これはただのイヤミだ。


長い黒髪、じっとりした目。

濃紺色のローブを着込んだ低身長のちょいぽちゃ女。


こいつの名前は桜千夜サクラチヨ

わが家のふてぶてしき居候イソーロー


「なんだかタバコの臭いがするわ……」


千夜はすんすん鼻を鳴らして、おれの背後にするりとまわり、


「ねぇ、『まさか』と思うけど……」


耳にゾワっとつぶやいてきた。



「月に一度の『支給金』……『手をつけた』ってことはないわね?」


「ああ……うん、それなんだがな……」


言いよどむおれに追い打ちをかけ、


「羊一さまは潔白ケッパクですわ!」


無慈悲なベルの擁護が入る。


「先月、『あれだけ』後悔されて、『あれだけ』土下座されましたもの……きっと反省なさってますわ! ベルは信じておりますわ!」


キラキラした目に耐えかねて、おれは思わず天を仰いだ。


——パチンコで、ほぼスッたとか、

口が裂けても言えそうにねぇ……。



(ああ、ごめん。ごめんな、みんな。来月は勝って『2倍』にするよ……)←


悲しいけれど、これが現実。


わかってるんだ、責めないでくれ……。


世間のまじめな17歳は、みんなしっかり働いている。

色々あっていまだに無職、生活保障を受けているのは、おれみたいなダメ野郎だけだ。


(でもさあ、不公平フコーヘーだよなぁ。もっと『昔』の時代なら、おれぐらいの歳のやつなんて、まだまだ遊んでいられたんだろ……?)




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