第八話 工場
寮から出たユウとマオ
「マオさん見て欲しいものがあるんだ」
とユウがマオの手を引いて工場に入る
NC工作機や旋盤やフライス盤やボール盤などの工作機械が十数台並び天井クレーンが2台ある
中小企業の設備としては整っているが首都近郊に新工場を建て移転した為
今はほとんど使われておらず研修で年に数度使われるだけで後はユウの遊び場となっている
その一角のパーテーションで区切られた”事務室”と書かれたドアを開けて中に入る
昔は机や椅子が並んでいただろうが全部運び出されて
今は硝子の筒に機械が繋がった装置が幾つか並んでいる
「マオさん、これなんだ」
とマオを硝子の筒の前まで連れてくるユウ
「昨日もらった転移用の水晶玉ってこれと同じものだよね?」
筒から水晶玉を取り出してマオにみせる
「うむ、よくこれだけのもの作り出せたな
これは魔力というか魔法を閉じ込めておき任意に発動できるものじゃの
小刀が当たっただけで使い魔が消えた理由もこれか
大方、聖なる魔法でも封じ込めてあったのじゃろうな」
とマオ
「うん造り方とか使い方などは初代様に教えて貰ったんだ
初代様は向こうの世界にいた時に高名な魔法使いに色々な魔法とか技術とか教えて貰ったんだって」
とユウ
「これがあれば魔王との闘いにも希望が持てるやもしれぬな
同じものはあとどれくらいあるのじゃ?」
というマオの問いに
ユウは近くに置かれた頑丈に作られた棚の扉をあける
かなりの数の水晶玉が収められていた
「これだけあるんだけど、まだ魔法は込めてないんだ
魔法は初代様と母さんと一応僕も使え、回復系と封印系は巫女様が使えるけど
やっぱり魔力の強さ的にはマオさんが一番強いから少しずつでも魔力を込めていってほしいんだ」
とユウ
「よくもまぁこんなに作れたもんじゃ、魔力込めはまたやっておくとしょう」
とマオ
「よろしくねマオさんコレを使って武器とか防具とか開発中なんだ」
「お主がつくるのか?」
「アイデアとか試作とかは僕がやるけど最終的にはお父さんの工場に頼んでるんだ」
「そうか、にしても工場に入ってからお主、本当に楽しそうだな」
「うんやっぱり物を作るが大好きだし物作りについて話すのもすきだから
あと、お主って言うよりユウって名前で呼んで欲しいな」
「うむ、ではユウよ他に行く場所あるのじゃろ、先を急ごうではないか」
「あ、そうだねじゃ行こうかマオさん」
部屋を出ようとするマオ、部屋の奥に古ぼけた工作機械が飾られているのを見つける
「なんじゃこの機械は?なんでこんなところに・・・」
「あ、その機械は初代様がこの仕事を始めた時に使っていた機械なんだ
その創業時を忘れないようにと飾られているらしいね
昨日聞いたと思うけど初代様もマオさんと同じ世界から来たって言ったよね
この世界で魔王を倒した後、二人の少女が現れてこう言ったそうなんだ
”見知らぬ世界で三人で途方に暮れて生きていくか
私たちが用意した居場所にバラバラで生きていくか選んでください”
とねマオさんならどうする?」
「儂か?まあ元々一人だから居場所を選ぶがな」
「初代様達も居場所を選んで剣士は剣道場の跡取りとして術士は神社の巫女に
初代様はこの旋盤・フライス盤・ボール盤の3つの機械が設置された小さな小屋の工作所
それぞれ仕事を与えられたんだけど、仕事だけでなく結婚相手も決められていたんだ
剣道場と神社では丁度跡継ぎとして結婚相手を探していたらしく、そして工場では世話人として」
「結婚相手・・・結婚とはなんじゃ?」
「ま、結婚は僕たちには早いかな?詳しくは母さんに聞いてもらえたら・・・
とりあえず次行こうか」
とマオの手をとるユウ