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第四話 寮へ

 ミミは主と出会えて安心したのか眠ってしまった。マオはミミを胸元に入れて歩き出す。暫く森の中を歩いていくと外灯に照らされた建物が見えてきた。


 マオの世界では見慣れない眩い光で、照らされて建物の中からも光が溢れていた。マオの世界では薄暗く照らす魔法の明かりが、一般的で他にはランプなど火をともす物があるぐらいだから。

「なんじゃこの光は、どれだけ無尽蔵に魔力を注ぎ込んでおるのじゃ? 王族か何かの屋敷なのか?」

 こう言ってしまうのも無理はない

「魔法じゃないですし、普通の工場と寮と家です。電力と科学なんだけど異世界の人には、魔法以上に感じられるかもしれないですね」

 とユウが答える。


「じゃが儂がいた世界の人間で、これだけの建物を手にしているものは滅多にいなかったぞ」

「たしかに普通よりは恵まれてますけど、親が工場をやってるだけですから」

 工場は中小企業としては規模が大きい方であるが、今は使われていないので明かりもついていない。都市近郊に大規模工場を建てそちらに移転したからだ。研修目的で数人が利用することがあるが極稀で今はユウの遊び場になっている。


 寮は三階建てで工場が稼働していたころは、二十人ほどが寮生活を送っていたが、今はたまにある研修利用者の為に維持管理されているだけだ。家はユウの実家だ。


「外で話していても仕方ないでしょ、中に入りましょ」

 とミオが寮のエントランスに入る。

「あ初代様、手紙に合った異世界の協力者を連れて参りました」

「ミオちゃんお疲れ様、どんな人かな?」

 初代様と言われた老人が待ちきれない感じで覗き込む。


「儂じゃ名はマオという、魔法使いじゃ」

 とマオが胸を張って身を乗り出す。マオをみた初代様は一瞬驚き

「エミリア……」

 と呟いた。

「はて? エミリアとは?」

 言われたマオが尋ねる。

「私も元は貴女がいた世界の住人でね、その時の知り合いに似ていたから驚いたよ。ようこそマオさん歓迎するよ」


「ほう、其方も此方の世界に転移した口か、それからあちらには戻っておらぬのか?」

「ああ、若い頃に剣士と術士と三人で、塔の地下まで魔王を追い詰めたんだが、魔王共々私達三人もこの世界に連れてこられた口でね、魔王を倒したので帰り方すらわからんよ」

 初代様はお手上げという感じで手をあげた。


「あの転移装置そんな昔から有ったのかの儂もそれで転送されたんじゃが」

 とマオが答えると

「魔法使いのマオさんなら帰り方わかるのかね?」

 と初代様が聞く

「わかるが帰るのは無理じゃな、転移前に帰還用の水晶を魔法的に体内に埋め込み、転移時に帰還用の呪文を詠唱していれば、一定時間後に帰還できるが、それが無いなら帰還はできないな。儂も逃げてきた身なので水晶を壊したから帰れないし、まああの転移装置と同じものを、造れれば帰れなくもないがな。其方、帰りたいのか?」

 との問いに初代様は

「若いうちなら帰りたかったが、この世界で家族を得、老いぼれてしまっては帰る意味もないな」


 と話していたら

「なんや玄関先でうるさー話しとると思ったら新入りさん来たんか、俺はケンといいまヨロシュウ」

「私はシノ、話すなら部屋で話せばいいのに……」

 茶色の短髪を逆立てた荒っぽい雰囲気の少年と、長い黒髪の物静かな少女が現れた。二人をみたミオは

「丁度よかった、この娘はマオちゃん。手紙の通り向こうの世界の魔法使いだって、マオちゃんユウそしてケン君とシノちゃんの四人で、明日から私に代わって森の管理を頼むわよ。手紙の通りなら次の転送は三日後らしいけどね」


 と言い終わるないなや、誰も気付かぬうちにケンとシノの後ろに回り込み、二人を抱きしめていた

「まーたオバはんくっ付くなと言うとるやろが」

 と本気で嫌がるケンに対し

「辞めて……」

 ケンの方を見ながら満更でもなさそうに見えるシノであった。


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