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第三話 第一回目の転移実験

「お母さん、そんなにくっついたら歩きにくいよー」

「身内だけの時は、ママって呼んでって言ってるでしょ」

「そんなの恥ずかしいって言ってるでしょ……」

「ママって言わないともっとくっついちゃうんだから」

「ママーやめってって言ってるのに……」


 と賑やかな声が近づいてくる

「こんなのが協力者とは……」先行き不安で頭が痛くなる。

「あ、いたいた」と姿を見せたのは華奢な少年と、後ろから抱きつき胸を少年の頭の上に乗せた女性だった。少年は腰に小さな筒みたいな物を、女性は剣を差していた。女性は会話からすると少年の母親らしいが……


「この世界の親子は、そうやってくっつくものなのか?」

「いえいえ、この母だけです……」

「母さんってママと言って」

「だって二人だけじゃないし」とのユウの答えに

「その内に身内になるんだし……」ミオは小声で答えるが聞こえないらしく

「って会話できるんですね。僕はユウです」とつづけた。

「私はミオよ、よろしく」

「我はマ・オ・」といつもの通り魔王と答えてしまいそうになるが、ミオが

「マオちゃんね、未来からの手紙に書いてあるわ」と被せてきた。手紙に魔王というのを、隠すよう書いてあったのを思い出し慌てて

「そうマオだ」と答えた。


「未来からの手紙?」とマオが聞く

「そうだねマル君こっち来て」とユウが呼ぶと後ろから人の頭より大きめな丸い物体がプカプカと浮かんで近づいてきた。丸い物体は金属質の鈍い光を放っていた。

「このマル君が、未来からの手紙を届けてくれたんだ。異世界から魔王が来るんだって、魔王の侵攻計画を、僕とマオさんとあと二人で防いで欲しいって書いてあった。あと、マル君を造ったのは未来の僕たちらしいんだって、まだマル君とか手紙とか無機物しか転送できないけど、将来的には人間も転送できる様になりたいらしいけどあと……」


 急にユウが饒舌になるがミオが割り込む。

「ところでマオちゃん、貴女は異世界から直接的に今の世界に来たわけじゃないでしょ?」

「なぜそのことを?」

「だって結界に異世界から何者かが来たという反応がまだ無いもの」


「結界?」

「この森はね、昔から異世界と繋がりやすい場所で、人がこの森に迷い込んで行方不明になったり、異世界から見慣れない動物や人が現れたりと厄介な場所なの。その騒動が起こるのを防ぐために、森に無関係な人が入り込まない様にする結界、異世界から来た動物などが森の外に出れないようにする結界と二つの結界がかけられたの。この結界を維持管理する事と、迷い込んだ有害な動物の始末と無害であれば人の保護も行う、これが私たち一族の使命なの」


「で、異世界から何者が来たりとか、無関係な人が入り込んだ時に判る様になってるんだけど、今日はまだその反応が無くて感じられたのは、そのマル君が未来から来たような感じだけ」と一息ついてミオがマオを見る。

「そうなのじゃ、一度この世界に転送してきた後に、未来から今に送られたらしい、魔王の異世界侵攻計画を防いで欲しいと手紙に書いてあった。どうやら魔王に攫われ、魔族に姿を変えられ、記憶を改ざんされ魔族と思い込まされ、魔王の転移実験の手伝いさせられていたが、それらの魔法が解け一番最後に逃げてくるまで、次から次へと転移される者たちを近くで見てきた。その情報を活かせると思われたようじゃ」


 マオが答えた時に、森の中に揺らぎが走り甲高い音が響き森の木々などの風景が揺らぎ色褪せる。結界が、異世界からの侵入者に反応したのだ。

「どうやら手紙にあるように異世界から何か来たようよ、反応は二つ」

 とミオが目を塞ぎ、意識を集中させながら叫ぶ。ミオとユウが警戒する中、マオが叫ぶ。

「ミミ~」

 と、暫くすると丸い毛玉が、跳ねてきてマオの肩に取りついた。


「これが一回目の転移者じゃ、儂が造った魔法生物で無害なペットじゃ。他には監視と情報収集のための使い魔がいる、そいつは消さないとな」

 とマオが言う。

「そう、使い魔は……そこ!」

 ミオがユウを抱きしめたまま苦無を投げる。使い魔に当たると苦無が光だし、使い魔を消し去ってしまう。使い魔が消えた瞬間、再び甲高い音が響き色褪せた森の木々に色が戻り揺らぎも消える。結界が脅威が去ったことを察知しおさまったのだ。


「使い魔は弱いのね……問題はそのミミって子だけど、魔法生物ということなら繁殖能力はないのよね?」

「繁殖能力など無いし、物も食わない。儂の魔力供給が数日途切れると消えてしまう存在じゃ。転移から数日過ぎたのでもう会えないと思ってたが、過去に送られたおかげで会えたわけじゃ」

「そう、なら問題なさそうね」

「いや転移者は、体に埋め込まれたコレを取り出して壊さないと、一定期間後に自動的に元の世界に帰ってしまう」

 と答えながら小さな水晶玉を、ミミから魔法を使って取り出して割って見せた。


「そう、貴女の情報は頼りになるようね、これからも宜しくねマオちゃん」

「ユウ、帰るわよ。マオちゃんをちゃんとエスコートするのよ、そして明日休みなんだから周りを案内してあげて」

 とミオはユウから離れた

「マオさんさっきの水晶玉見せて、分析したいから」

 とユウがいうのでマオが渡す。


 結界に反応が出る前にマオが、語った過去についてはあえて触れなかった二人。ユウは辛い過去を、思い出させてしまったら可哀想だと思い触れなかったが、ミオはどうだろう……


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