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第一話 魔王、人間に

「行くのか?」

 暗がりの中から響く声ここは魔王の居城、この地を遥か高みから見下ろす塔、それは魔力を集め心臓部である地下に蓄えていく。

 その地下にある広い部屋の中央に魔法陣らしきものが描かれ四方には透明な大きな石が備え付けられ不気味に輝いている。


「はい魔王様、この異世界侵攻計画を進言したのは私です。度重なる失敗の原因を自ら確かめに行きたいと思います」

 会話している二人は魔族である、魔王様と呼ばれた方は幾分線が細く華奢に感じ声も女性のようだ


「そうか、なるべく早く帰ってくるんだぞ、我が魔王と呼ばれるまで上り詰められたのも、ワール其方の我に対する忠誠と尽力によるものが大きいからな」

「滅相もありません、魔王様の魔力の強さ無しには実現できないものでした。この侵攻計画の要である転移装置を、作動できるのも魔王様の膨大な魔力があればこそですし」


 と答えながら高い位置にある天窓を見上げると空に赤い月が昇り始めていた。

「魔王様、転移装置を稼働できる時間帯は限られています転移に掛かりたいので装置の起動をよろしくお願いします」

「うむ」

 と答え魔王が装置の起動にかかると暗がりの中で装置が魔力による光により輝きだす。


「ところでその大きな箱はなんだ? 随分重そうだが……」

 長方形の大きな、まるで棺桶のような箱を、光り輝く魔法陣の中央に引きずり歩きながらワールは答える。

「これは武器などの装備です、何があるかわからないので」

「この実験で身近な者が帰ってこなかったことが二度あった、我の身近な者はもう其方だけだ、其方まで失ったら我は……無事に帰ってくるようにな」


 魔王が装置の臨界を確認し転移呪文を詠唱し始める

「ご安心ください必ず帰ってまいります。では行って参ります魔王様」

 応えながらワールは光に包まれ消えていく、光が消えるのを確認し装置を停めていく魔王、ふとよろけてしまう。

「いくら我の魔力が強かろうが転移はきついの~一休みするかの」

 転移室の一つ上の階にある自室に入り寝床に就く


 一日ほど眠りについていた魔王、突然発作を起こし呻きだす、全身が痙攣し震えだし怪しく光り輪郭がぼやけていく。

 長く続いた発作や痙攣が治まり光が消えた後、魔王の姿が変わっていた。

「なんじゃこれは、この姿はまるで人間ではないか」

 姿見に映しながら自分の姿を確認する、金髪が膝裏まで垂れ前髪も顎まで届き色白で目が蒼い少女の姿が映っていた。


「人間……我は魔王? う、頭が~」

 記憶の混乱に打ちのめされながらも現状を把握する

「ここは魔王の居城、この人間の姿のまま他の魔族にみつかれば……それにワールが部下に指示しておったな見慣れる人間が居たら殺せと」

 身体が縮んだためブカブカになった服を引きずりながら右往左往する

「いくら我が魔王だと主張してもこの体では届くまい……」


 しばらくすると扉を叩く音がする

「魔王様、どうされました? 苦しそうなうめき声が聞こえましたが」

 黙っていると扉を叩く音が強くなっていく、不安になった魔族が意を決して施錠していなかったノブを回していく。

 とっさに隠れる魔王、魔族が部屋の奥に向かった機をうかがい部屋を出ていこうとするが、物音をたててしまう。

「何? 人間が何故、魔王様の部屋に?」

 追いかけてくる魔族に捕まらない様にブカブカな服を引きずりながら階段を下りていく、かろうじて転移室にたどり着き扉を施錠するが扉を叩く音が増えていく。

 どうやら増援を呼んだようだ、いくら施錠していようがいずれ扉は破られるだろう、このまま留まっていても捕えられるだろう。


「この転移の先の異世界は人間の世界だという、この姿なら都合がいいのだが幾多の転移実験を繰り返してきたが未だ誰も戻って来ていない、あのワールでさえも……」

 扉を叩く音が道具を使って壊し始める音に代わる

「ここで捕まっても、転移しても無事で済まないなら前に進むしかない」

 転移装置を起動して魔力を込めていく、装置が光はじめ臨界に達していく、魔法陣の中央に立ち呪文を詠唱し始めると光がさらに増していきとたんに消えると魔王の姿が消えていた。


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