1日目 周りのゴミ拾い
はじめてのしょうせつ。はじめてのとうこう。
とにかく何か書いてみて、一歩進もうと思い始めました。
『一日一善、なせば相応の力を与えよう。』
ふと、かすかに音がした。目を開け、周りを確認する。今いる場所は古びた礼拝堂、場所も昨日横たわった毛皮の敷物の上で、周りに音を発するような物はなく、見渡してもボロボロの壁と扉の無い出入り口と窓があるだけだ。しかし、シン、と静まり返っているわけでもない。むしろ、耳を澄ませば木々が風でざわめく音が微かに聞こえてくる。森の中では自然そのままで雨宿りできる場所は限られている。この森では大きな樹の下・樹洞・洞窟・廃屋である。寝るためだけに利用している場所ではあるが、この礼拝堂のしっとりとした雰囲気が気に入り、よく選ばれる場所だ。寝て起きたときの体の調子も、他の場所より良い気がするのも理由である。
「なるほど、一日一膳か。」
声が聞こえたような気がしたのはこれが初めてではない。しかし、しっかり聞き取れたのは初めてだ。初めてここに来た頃は気づかなかったが、毎日朝日が昇る頃に寝ているとかすかに聞こえるこの声は、礼拝堂の中の特定の場所から発せられているようである。毎日ちょっとずつ寝る場所を変え始め、今日寝た場所が丁度よい所だったようだ。
(一日一善ってことは、恩を売る相手が必要ってことだよな。)
身を起こして、伸びをする。勝手を知る場所で飲み食いに困らないとはいえ森の中。時々迷い込む人もいるが、それは年を通して一人いるかどうかの稀さだ。それで一日一膳の達成は難しいだろう。
(・・・例えば道づくりか?でも、この場所はお気に入りだし、他の人を呼ぶ気もない。知られずにそのままにしときたい。)
もう一度周りを見渡す。ボロボロの壁と扉の無い出入り口と窓があるだけだ。
今日の予定は決まった。
腹ごなしして取りかかったのは、掃除である。壁を直すにも扉を付けるにも知識も材料も何もかもが足りない。何かを壊すのは得意だが、作るのは苦手だ。
「この汚れは落とせないな。ゴミ拾いだけするか。」
何度も入り浸った場所ではあるが、よくよく見れば色々と落ちているものである。もちろんめぼしい物はないが葉っぱやら、石やらいろいろな物が落ちている。箒もないため、とてもではないが塵一つない状態にはできない。雑ではあるが、昼になるまで拾い続けた。
「どうせ窓ふさがないと色々入ってくるしな」
ふと、集中が途切れ、そうぼやいて顔を上げる。さっき葉っぱを拾った場所へ葉っぱが風に乗って入ってきていた。
・・・今日はここまでにしてやろう。
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【一日一膳】
行為:掃除(塵拾い)
対象:礼拝堂
獲得スキル
採取能力Lv1
観察能力Lv1
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マイペースな狩人は一日一膳を知る。
今まで見てきたが認識していなかったことに目を向けます。
まずは、手の届く範囲から。




