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魔珠  作者: 千月志保
第1章 魔珠担当官
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舞踏会(4)

 エミリはキリトの妹だ。士官学校に行きたいと言って、スイの父親セイラムの元で学問と剣術を勉強した。女性で士官学校に進学する者は珍しかったが、二人の姉がすでに社交界デビューし、名家に嫁いでいたため、父親には反対されなかった。

「これは一杯食わされたな。エスコートするご婦人ってエミリだったのか」

「私じゃだめなんですか?」

 エミリが食いかかってくる。基本的にキリトの家、クラウス家のの人たちはこういう性格の遺伝子が組み込まれているらしい。アイリだけがこの遺伝子の被害者にならずに済んだに違いない。

「いや。珍しいから。こういう場所で会うのは」

「セイラム先生に言われているんです。こういう社交の場も勉強になることがたくさんあるから、たまには顔出してみるといいって」

 セイラムの私邸は郊外にあるため、弟子は住み込みの者が多い。エミリも住み込みだった。さらに、今年になってからは士官学校に合格して王都に戻ったが、寮生活だ。もともと社交界でやっていく気などないはずなので、おそらく一度か二度しかこのような場所で会ったことはない。クラウス家やセイラムの私邸でなら何度も会ったことがあるが。

「どうせならお兄様じゃなくてスイ様にエスコートしていただけば良かった」

 エミリが何食わぬ顔で言うと、アリサが真顔で返す。

「冗談じゃないわ。あなたはたまにしか顔出さないからいいけど、独身の妹が貴婦人たちが気になる独身男性ナンバーワンのスイ様にエスコートされてごらんなさい。一ヶ月くらいはご婦人方の冷たい視線に耐えて生きていかないといけなくなるわ。今、こうやってお話しさせていただいているだけでも視線が痛いのに」

 スイは幼い頃から、常に周囲に気を配るように訓練されている。剣術の稽古のとき、セイラムは四方八方から攻撃をしかけてきた。その攻撃に対応しようと努力した結果、視野も他の人と比べて格段に広くなった。正面を向いたままでも、かなり真後ろに近い位置の人の動きを把握できる。士官学校時代、剣術実技の授業中にキリトから「お前、目、背中についてるんじゃねえのか」と言われたことも一度や二度ではない。だから、話をしながらも先ほどから会場にいた人たちの注目がいつも以上にこちらに集まっているのが気になってはいた。

「それに贅沢言わないの。キリトだって貴婦人たちが結婚したい独身男性ナンバーワンなんだから」

「気になる」と「結婚したい」の差が何だかよく分からないが、おそらくキリトの外務室長というはっきりした地位と明るく取っつきやすい性格が結婚したくなるポイントなのだろう。

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