ハウルの解放(2)
「それを結晶化したものがこれだ」
レヴィリンは手を開いて見せた。手のひらには魔珠と同じくらいの大きさのくっきりと澄んだ美しい結晶が四個載っていた。レヴィリンはそのうちの一つをスイに手渡した。スイは疲労ですっかり力の抜けていた指にありったけの力を込めて結晶を受け取った。近くで見ようと目の前に結晶を近づけて角度を変えながらじっくり見つめた。
「美しい結晶だな。こんなに純度の高い結晶を見たのは私も初めてだ。しかも四個も」
人間を〈器〉とする方法で抽出できるエネルギーは今までの二、三倍程度と先ほどレヴィリンが言っていた。結晶が四個できているということは、四倍のエネルギーが抽出できたということになる。
「研究所の魔術師でも三個が限界だったのだから、君は相当優秀な〈器〉だということだ」
レヴィリンがにやりと笑う。
「惜しいことだ。君が魔術師の道を選んでいれば、もっと魔術は進歩していただろうに」
そんな選択はあり得なかった。一度も魔珠担当官以外の道など考えたことはなかった。
「さて。君は求めていた情報を得た。これをどうするつもりかね」
「ゆっくり考えますよ。ここで」
「そうだな。それがいい。君が里に情報を渡さないならそれに越したことはない。情報を渡すなら里とは手を切って魔結晶の製造を本格化するだけだ。多くの魔術師たちが犠牲になるのは心苦しいが、やむを得まい。ゆっくり考えたまえ」
スイは真っ白な天井を見て深く息をついた。そういえば、目覚めた今、やっておくべきことがあった。
「博士、手紙は届けていただけたでしょうか?」
「心配ない。もう届いているだろう」
「ありがとうございます。それと」
スイはいつもの不敵な笑いを浮かべた。
「ハウルさんを解放していただきたいのです」
「やはり気づいていたか」
まだそんな笑い方ができるのかと苦笑しながらレヴィリンは返した。
「アリサさんをずっと魔術師が尾行していました。ですから、ハウルさんがいなくなったと聞いたとき、もしかしてと思って」
「尾行したのだな」
スイは頷いた。手紙のことはさらさら話す気はない。
限りなく黒ではあるが、完全な証拠がつかめているわけではない。しらをきることもできただろう。だが、そもそもハウルを捕らえたのは、スイに兵器の存在を伝えさせないためだ。スイに全て打ち明けるという選択をした以上、拘束していても負担になるだけだ。
「いいだろう」
レヴィリンはスイの額に手を置いた。ひんやりとした光がスイの全身に浸透していく。




