表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔珠  作者: 千月志保
第1章 魔珠担当官
7/134

舞踏会(3)

 舞踏会会場に到着すると、すでに多くの人がグラスを片手に歓談していた。入ったとたん、視線が一斉に集まってきたのを感じた。スイがいつもと違って一人であると気づくなり、声をかけようと何人かの女性が口を開きかけたが、それを遮るようによく通る声が響いた。

「あら、スイ」

 少し離れた場所からだった。振り返ると、美しい女性が小さなテーブルの横でグラスを持ったまま笑顔で手を振っている。

「アリサさん。アイリさんも」

 スイは見知った顔を見つけてそちらに向かった。

「スイ君。元気にしてたか?」

「ハウルさん、イオさん。お元気そうで」

 アリサとアイリはキリトの姉だ。長女のアリサは明るくて社交的で、キリトとよく性格が似ていると思う。次女のアイリはおとなしい女性だ。いつも姉か夫の横で人の話を聞いている。ハウルはアリサの夫で、宰相の頭脳である政務室に勤めている。イオはアイリの夫で、士官学校の教官をしている。キリトの姉はいずれも生まれた家の名にふさわしい、名家の将来有望な男性に見初められ、結婚した。

「今日はキリトと一緒に来なかったのね。喧嘩でもしたの?」

 アリサのキリトに負けず劣らずの遠慮ない物の言い方にスイは苦笑する。いつものことだが。

「いえ。エスコートするご婦人がいると言って振られまして」

「まあお気の毒」

 容赦ない言葉の応酬に周りの者たちも苦笑する。

 そのとき、会場でざわめきがあった。スイたちも気になって扉の方を見ると、華やかな衣装を身にまとった若い美男美女が立っていた。会場中の注目が集まっている。当然だ。社交界で貴婦人たちの注目の的の一人であるキリトが見たことのない可憐な少女を連れているのだから。

「エミリ」

 驚きのあまりスイが声を上げる。

「お久しぶりです、スイ様」

 気品溢れる笑顔でその少女――エミリが返す。気品は溢れているが、その笑顔はどこかやんちゃだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ